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そのうち高齢者向けのワクチンの1つは日本でも製造販売が9月に承認され、妊婦に接種する新生児用ワクチンも11月27日に厚生労働省の専門部会が使用を了承し、正式に承認される見込みと報道された。
米国では「計3つのワクチンと薬が承認を受けました。数十年に及ぶ研究の成果です」と話すのは、米ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院先住民保健センターの感染症予防プログラムを率いる医師のローラ・ハミット氏だ。
ほぼすべての子どもは、2歳になるまでにRSウイルスに感染する。多くの場合、症状は普通の風邪と変わりないが、時には重症化して死に至ることもある。
米国立アレルギー感染症研究所（NIAID）によれば、世界では年間約6400万人が感染し、16万人が命を落としているという。
こうしたなか、新しいワクチンと薬に期待がかかるが、米国ではすでに製品が供給不足になっているとの報道もあり、多方面に混乱と懸念を引き起こしている。
そこで、新しいワクチンと薬の効果や、自分や家族にとって何が適切なのか、そして、各家庭でできることなどを専門家に聞いた。
RSウイルスは、11月から3月までの冬の期間に流行することが多い（編注：厚生労働省によれば、日本では近年は夏から増加傾向となり秋にピークがみられていたが、2021年以降は春から初夏に増加して夏にピークがみられている）。
ウイルスを含んだ感染者の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込む（飛沫感染）、あるいは飛沫が物の表面に付着し、そこに触れた手で目や鼻、口に触れることで感染する（接触感染）。
感染が、鼻、喉、口といった上気道にとどまっていれば、咳、鼻詰まり、軽い喉の痛みなどの症状で済む。「しかし問題は、ウイルスが下気道を攻撃した場合です」と、米ユタ州ソルトレイクシティーにあるインターマウンテン・プライマリー小児病院の救急医療小児科医で感染症を専門とするトラハーン・ジョーンズ氏は言う。
そうなった場合、ウイルスは肺の大小の気道、特に細気管支のなかで増殖を始める。すると気道が炎症を起こして腫れ上がり、大量の粘液が出て呼吸がしにくくなる。
「苦しそうに胸とお腹を上下させている小さな赤ちゃんたちを何百人と見てきました」とジョーンズ氏は話す。
そんなとき、医師は無力感を覚えるという。RSウイルス感染症には、従来の意味での有効な治療法がない。つまり、抗生物質や抗菌薬ではウイルスを殺すことができず、せいぜい患者の免疫系がウイルスを排除するまで症状を和らげる方法しかない。
そのため、感染や重症化を予防する薬が強く待ち望まれていた。
新たな3つの製品のうち、2つはワクチンだ。2023年5月、米食品医薬品局（FDA）は、60歳以上を対象に、英グラクソ・スミスクライン（GSK）社製の「アレックスビー」と米ファイザー社製の「アブリスボ」を承認した（編注：アレックスビーは日本でも9月に承認、アブリスボは11月27日に厚労省の専門部会が妊婦向けに使用を了承）。
特に、心臓や肺の慢性疾患や免疫不全を抱える高齢者は重症化のリスクが高い。
両ワクチンとも安全性は非常に高く、接種してから最初の流行期にRSウイルスによる下気道疾患を防ぐ効果が、アレックスビーの場合は83％、アブリスボの場合は89％だったことが臨床試験で示されている。
「どちらも、呼吸器系ウイルスのワクチンとしては非常に優れた有効率です。私は毎年インフルエンザワクチンを欠かさず打っていますが、それよりも高い値です」とジョーンズ氏は言う。
アブリスボは、FDAによって8月に、妊婦にも接種が承認された。妊娠後期に接種すると、胎児にもRSウイルスの抗体が受け継がれ、予防効果が得られる。
米疾病対策センター（CDC）は、流行期において妊娠32～36週の人に接種を推奨している。
臨床試験では、RSウイルスによる重度の下気道疾患を防ぐ効果は生後90日間で82％、180日間で69％だった。
「これを受動免疫といいます。赤ちゃんが、自分の免疫細胞ではなく、生まれる前に母体が作った抗体に依存するためです」と、感染症専門医で米メイヨー・クリニック医科学大学医学部助教のシュウェタ氏は言う。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/112700600/#:~:text=%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3