【外国人労働者や移民の受け入れの制限を主張する政党が大幅に議席を伸ばした】急浮上する外国人問題 「多文化共生」って簡単に言うな! 「排外主義」に陥らないためにも原因の直視をアーカイブ最終更新 2025/08/26 16:231.影のたけし軍団 ★???出井康博( ジャーナリスト)7月の参院選では「外国人問題」が争点の一つとなった。欧米諸国では国論を二分して久しいテーマだが、これまで日本では選挙で争点となることはなかった。結果は周知の通り、外国人労働者や移民の受け入れの制限を主張する政党が大幅に議席を伸ばした。この選挙結果を見て、筆者には先日取材したばかりのAさん(男性・70代)のことが頭に浮かんだ。無職のAさんは大阪府の公営団地で1人暮らしをしている。団地は50年以上前に建てられた5階建てだが、エレベーターはない。40平米の3K、家賃は月2万円少々という安さだ。Aさんによれば、団地の住民は「生活保護の日本人高齢者、もしくは外国人ばかり」なのだという。Aさんの部屋の上の階にもしばらく前、南アジア出身の若い夫婦が入居した。夫は留学生らしく、アルバイトで帰りが遅い。帰宅後、午前0時を過ぎた頃に料理や掃除をする音がAさんの部屋に響いてくる。天井は部屋を歩くだけで振動が伝わってくるほど薄い。Aさんは音で不眠症に悩まされるようになった。夫婦の部屋を訪れ、午後10時以降は静かにしてくれるよう伝えたが、何度注意してもしばらくすると騒音が再開する。警官を呼び、注意してもらっても効果はない。Aさんが引っ越せば済むことかもしれない。だが、自らが被害者であると考えるとそれはしたくない。夫婦の妻の方は、夫の「配偶者」の資格で日本に滞在しているようだ。専門学校や大学に在籍する留学生は母国から配偶者を呼び寄せられる。留学生本人、配偶者ともに「週28時間以内」でアルバイトが認められるため、夫婦での出稼ぎに利用する外国人も少なくない。その妻がコンビニと飲食店のバイトをかけ持ち、週28時間を大幅に超える違法就労していることをAさんは突き止めた。すぐに入管当局に通報し、不法就労で摘発するよう訴えた。摘発されれば上の階からいなくなると考えたのだが、入管に動く気配はない。ある政党の支部も訪れ相談した。しかし「ウチは外国人を助ける側だから」と相手にしてもらえなかった──。そんな話を滔々と2時間にわたって私に語った後、Aさんは少し恥ずかしそうにこう述べた。「私ね、もともと外国人が嫌いというわけじゃないんです。昔、仕事をしていた頃は外国人とも仲良くやっていた。でも、今は外国人嫌いになりました」「外国人嫌い」は偏狭な「排外主義」に通じる。だからAさんは自らを恥じている。しかし私には、つましい暮らしを壊されたうえ、誰からも助けてもらえないAさんを責める気にはなれない。迷惑な隣人はもちろん日本人にもいる。とはいえ、相手が日本語でのコミュニケーションが取れない外国人の場合、憎しみが増幅しかねない。Aさんのような「外国人嫌い」が全国で増えているとすれば、外国人と日本人双方に不幸なことだ。原因は何なのか。新型コロナ禍以降、在留外国人数は過去最高を更新し続けている。法務省出入国在留管理庁によれば、その数は2024年末時点で約376万人に達し、21年末からの3年間で約100万人増加した。日本人の嫌がる低賃金・重労働の仕事で深刻化している人手不足を緩和するため、政府が外国人労働者の受け入れを増やし続けているからだ。技能実習生は約28万人から約46万人、留学生は約21万人から約40万人、特定技能外国人は約5万人から約28万人に増加した。留学生には勉強そっちのけでアルバイトに明け暮れる者が数多い。それでも日本語学校を修了すれば、学費と引き換えに日本語能力など問われず専門学校や大学に入学できる。そして卒業すれば就職も簡単だ。一方、以前は最長5年までしか就労が認められなかった実習生も、19年の特定技能制度創設によって無期限に日本で働けるようになった。「排外主義」に陥ってはならない。しかし「排外主義」が台頭する原因を直視せず、「多文化共生」というスローガンを唱えるだけでは問題は解決しない。外国人との「共生」の矢面に立つのは、日本人には人気のない団地、若者が去った地域で、経済的に恵まれない暮らしをしているAさんのような人たちなのだ。その声に耳を閉ざしていれば、「外国人嫌い」の日本人を増やすことになりかねない。それを最も恐れているのは、この国で真面目に働き、日本人と「共生」している多くの外国人たちなのである。
7月の参院選では「外国人問題」が争点の一つとなった。欧米諸国では国論を二分して久しいテーマだが、これまで日本では選挙で争点となることはなかった。
結果は周知の通り、外国人労働者や移民の受け入れの制限を主張する政党が大幅に議席を伸ばした。この選挙結果を見て、筆者には先日取材したばかりのAさん(男性・70代)のことが頭に浮かんだ。
無職のAさんは大阪府の公営団地で1人暮らしをしている。団地は50年以上前に建てられた5階建てだが、エレベーターはない。40平米の3K、家賃は月2万円少々という安さだ。Aさんによれば、団地の住民は「生活保護の日本人高齢者、もしくは外国人ばかり」なのだという。
Aさんの部屋の上の階にもしばらく前、南アジア出身の若い夫婦が入居した。夫は留学生らしく、アルバイトで帰りが遅い。帰宅後、午前0時を過ぎた頃に料理や掃除をする音がAさんの部屋に響いてくる。天井は部屋を歩くだけで振動が伝わってくるほど薄い。Aさんは音で不眠症に悩まされるようになった。
夫婦の部屋を訪れ、午後10時以降は静かにしてくれるよう伝えたが、何度注意してもしばらくすると騒音が再開する。
警官を呼び、注意してもらっても効果はない。Aさんが引っ越せば済むことかもしれない。だが、自らが被害者であると考えるとそれはしたくない。
夫婦の妻の方は、夫の「配偶者」の資格で日本に滞在しているようだ。専門学校や大学に在籍する留学生は母国から配偶者を呼び寄せられる。
留学生本人、配偶者ともに「週28時間以内」でアルバイトが認められるため、夫婦での出稼ぎに利用する外国人も少なくない。
その妻がコンビニと飲食店のバイトをかけ持ち、週28時間を大幅に超える違法就労していることをAさんは突き止めた。すぐに入管当局に通報し、不法就労で摘発するよう訴えた。摘発されれば上の階からいなくなると考えたのだが、入管に動く気配はない。
ある政党の支部も訪れ相談した。しかし「ウチは外国人を助ける側だから」と相手にしてもらえなかった──。
そんな話を滔々と2時間にわたって私に語った後、Aさんは少し恥ずかしそうにこう述べた。
「私ね、もともと外国人が嫌いというわけじゃないんです。昔、仕事をしていた頃は外国人とも仲良くやっていた。でも、今は外国人嫌いになりました」
「外国人嫌い」は偏狭な「排外主義」に通じる。だからAさんは自らを恥じている。しかし私には、つましい暮らしを壊されたうえ、誰からも助けてもらえないAさんを責める気にはなれない。
迷惑な隣人はもちろん日本人にもいる。とはいえ、相手が日本語でのコミュニケーションが取れない外国人の場合、憎しみが増幅しかねない。
Aさんのような「外国人嫌い」が全国で増えているとすれば、外国人と日本人双方に不幸なことだ。原因は何なのか。
新型コロナ禍以降、在留外国人数は過去最高を更新し続けている。法務省出入国在留管理庁によれば、その数は2024年末時点で約376万人に達し、21年末からの3年間で約100万人増加した。
日本人の嫌がる低賃金・重労働の仕事で深刻化している人手不足を緩和するため、政府が外国人労働者の受け入れを増やし続けているからだ。
技能実習生は約28万人から約46万人、留学生は約21万人から約40万人、特定技能外国人は約5万人から約28万人に増加した。
留学生には勉強そっちのけでアルバイトに明け暮れる者が数多い。それでも日本語学校を修了すれば、学費と引き換えに日本語能力など問われず専門学校や大学に入学できる。
そして卒業すれば就職も簡単だ。一方、以前は最長5年までしか就労が認められなかった実習生も、19年の特定技能制度創設によって無期限に日本で働けるようになった。
「排外主義」に陥ってはならない。しかし「排外主義」が台頭する原因を直視せず、「多文化共生」というスローガンを唱えるだけでは問題は解決しない。
外国人との「共生」の矢面に立つのは、日本人には人気のない団地、若者が去った地域で、経済的に恵まれない暮らしをしているAさんのような人たちなのだ。
その声に耳を閉ざしていれば、「外国人嫌い」の日本人を増やすことになりかねない。それを最も恐れているのは、この国で真面目に働き、日本人と「共生」している多くの外国人たちなのである。