【L.A.在住映画ジャーナリスト】アメリカではスポーツ中継は有料が普通、日本中が注目する大イベントWBCを広告なしでネットフリックスが配信するなど考えられない、自社作品の宣伝をするまたとない機会でもあるアーカイブ最終更新 2025/09/05 12:461.影のたけし軍団 ★???来年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本における中継をネットフリックスが独占することが発表された。前回大会は国民的なイベントとして大いに盛り上がったため、地上波で見られなくなるということにショックや混乱を覚えている人は少なくないようだ。ただ、アメリカの配信会社の最近の傾向という視点に立てば、これは納得のいく動きといえる。配信各社はどこもスポーツをはじめとするライブ中継に力を入れており、つい先日もParamount+がUFCと77億ドルの契約を結んだばかりだ。NBCユニバーサル傘下のPeacockはオリンピックで会員をがっつりと獲得し、イギリスのサッカーなどほかのスポーツでも会員を引き留め続けている。Apple TV+も、金曜の夜にはアメリカ、カナダ、メキシコなどでMLBの試合を独占中継する。そんな中、ネットフリックスは、共同CEOテッド・サランドスの個人的な好みもあり、コメディショーのライブ配信に力を入れてきたのだが、WBCの価値が飛び抜けて高い日本市場に絞った今回の単発的な買い物は、「意味がある」と考えたのではないか。このように、アメリカではすでにスポーツを配信で見ることが普通になっている。国民的イベントであるスーパーボウルに関しては、今も地上波放映で、ハーフタイムショーで誰が歌うか、視聴率はどうだったかなど、話題に上ったりするせいで、アメリカ人が好きなほとんどのスポーツはタダで見られると日本人は思っていたかもしれないが、実際には違う。今回のWBC騒動について日本で出た記事の中に、「アメリカでは無料でテレビ観戦できるのに、NPBや関係各所を通すことなく(日本での中継権利が)ネットフリックスに売り渡されたところを見ると、野球好きの日本人は900円を払ってでも見るとタカを括ったのか」という記述があった。しかし、上記は勘違いだ。まず、アメリカでWBCが「タダ」では見られるとはかぎらない。2026年のWBCのアメリカにおける中継をどこが担当するかは発表されていないものの、2023年の試合はケーブルに加入していないと見られないFOX Sportsだった。次も同じである可能性は高い。ケーブルの月額価格は、ケーブル会社やパッケージの種類によるので一概に言えないが、FOX Sportsひとつだけを指定して入ることは基本的にできない。近年、アメリカではいわゆる“コード・カッティング”をした、つまりケーブルを解約した人が増えているが、それらの人たちはMLB TVに加入すれば、ケーブルに再加入せずとも配信で見られる。MLB. TVの月会費は30ドル。いずれにしても、アメリカ人はWBCを「タダ」では見ていないのだ。ついでに言うなら、普段のドジャース戦だって、ロサンゼルスのファンは、お金を払って見ている。ドジャースの試合のロサンゼルスでの放映権は、ドジャースの主要スポンサーのひとつで、ケーブル、インターネット、携帯電話事業を展開するSpectrumが持っており、同社のチャンネル「Sportsnet LA」を通じてしか見られない。もうひとつ日本の報道で見かけた誤解についても触れておきたい。「WBCをネットフリックスが中継するとなると、スタンダードプラン以上だと広告が流れない」との記述を見たが、それはないだろう。Apple TV+は、ご存知の通り「広告入り」のプラン自体がそもそも存在しない。しかし、「Friday Night Baseball」では、地上波の野球中継のように広告が入る。この番組だけのために、Appleは営業をかけて広告を取っているのだ。そもそも野球というスポーツは、表と裏の間、回と回の間、投手交代の時間など、広告を入れるチャンスがたくさんあり、それも中継する上で魅力である。日本中が注目する大イベントWBCを、広告なしでネットフリックスが配信するなど、考えられない。自社作品の宣伝をするまたとない機会でもある。すでに日本でも話題になっているネットフリックスドラマの広告を入れることで、WBCだけのために新規加入した人は「ああ、これ、みんなが面白いと言っていたやつか」と、せっかくだから見てみようと思うかもしれない。全世界で膨大な数のコンテンツを制作するネットフリックスには、以前からの会員も見逃している優れた作品も多数あるので、その人たちにも発見のチャンスを山ほど与えられる。ネットフリックスがワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)に具体的にいくら払ったのかは不明ながら、莫大と思われる金額に合意するうえでは、そのあたりも計算に入っていたはずだ。今回の日本のWBC騒動は、そんな大きな流れの中で起きたものにすぎない。日本の野球ファンが好む、好まないにかかわらず、状況は変化していっているのだ。
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ただ、アメリカの配信会社の最近の傾向という視点に立てば、これは納得のいく動きといえる。配信各社はどこもスポーツをはじめとするライブ中継に力を入れており、つい先日もParamount+がUFCと77億ドルの契約を結んだばかりだ。
NBCユニバーサル傘下のPeacockはオリンピックで会員をがっつりと獲得し、イギリスのサッカーなどほかのスポーツでも会員を引き留め続けている。Apple TV+も、金曜の夜にはアメリカ、カナダ、メキシコなどでMLBの試合を独占中継する。
そんな中、ネットフリックスは、共同CEOテッド・サランドスの個人的な好みもあり、コメディショーのライブ配信に力を入れてきたのだが、WBCの価値が飛び抜けて高い日本市場に絞った今回の単発的な買い物は、「意味がある」と考えたのではないか。
このように、アメリカではすでにスポーツを配信で見ることが普通になっている。国民的イベントであるスーパーボウルに関しては、今も地上波放映で、ハーフタイムショーで誰が歌うか、視聴率はどうだったかなど、話題に上ったりするせいで、アメリカ人が好きなほとんどのスポーツはタダで見られると日本人は思っていたかもしれないが、実際には違う。
今回のWBC騒動について日本で出た記事の中に、「アメリカでは無料でテレビ観戦できるのに、NPBや関係各所を通すことなく(日本での中継権利が)ネットフリックスに売り渡されたところを見ると、野球好きの日本人は900円を払ってでも見るとタカを括ったのか」という記述があった。
しかし、上記は勘違いだ。まず、アメリカでWBCが「タダ」では見られるとはかぎらない。2026年のWBCのアメリカにおける中継をどこが担当するかは発表されていないものの、2023年の試合はケーブルに加入していないと見られないFOX Sportsだった。次も同じである可能性は高い。
ケーブルの月額価格は、ケーブル会社やパッケージの種類によるので一概に言えないが、FOX Sportsひとつだけを指定して入ることは基本的にできない。
近年、アメリカではいわゆる“コード・カッティング”をした、つまりケーブルを解約した人が増えているが、それらの人たちはMLB TVに加入すれば、ケーブルに再加入せずとも配信で見られる。
MLB. TVの月会費は30ドル。いずれにしても、アメリカ人はWBCを「タダ」では見ていないのだ。
ついでに言うなら、普段のドジャース戦だって、ロサンゼルスのファンは、お金を払って見ている。
ドジャースの試合のロサンゼルスでの放映権は、ドジャースの主要スポンサーのひとつで、ケーブル、インターネット、携帯電話事業を展開するSpectrumが持っており、同社のチャンネル「Sportsnet LA」を通じてしか見られない。
もうひとつ日本の報道で見かけた誤解についても触れておきたい。「WBCをネットフリックスが中継するとなると、スタンダードプラン以上だと広告が流れない」との記述を見たが、それはないだろう。
Apple TV+は、ご存知の通り「広告入り」のプラン自体がそもそも存在しない。しかし、「Friday Night Baseball」では、地上波の野球中継のように広告が入る。この番組だけのために、Appleは営業をかけて広告を取っているのだ。
そもそも野球というスポーツは、表と裏の間、回と回の間、投手交代の時間など、広告を入れるチャンスがたくさんあり、それも中継する上で魅力である。日本中が注目する大イベントWBCを、広告なしでネットフリックスが配信するなど、考えられない。
自社作品の宣伝をするまたとない機会でもある。すでに日本でも話題になっているネットフリックスドラマの広告を入れることで、WBCだけのために新規加入した人は「ああ、これ、みんなが面白いと言っていたやつか」と、せっかくだから見てみようと思うかもしれない。
全世界で膨大な数のコンテンツを制作するネットフリックスには、以前からの会員も見逃している優れた作品も多数あるので、その人たちにも発見のチャンスを山ほど与えられる。
ネットフリックスがワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)に具体的にいくら払ったのかは不明ながら、莫大と思われる金額に合意するうえでは、そのあたりも計算に入っていたはずだ。
今回の日本のWBC騒動は、そんな大きな流れの中で起きたものにすぎない。日本の野球ファンが好む、好まないにかかわらず、状況は変化していっているのだ。