【作家・雨宮処凛】日本人ファーストという言葉が登場して、わずか3カ月、日本人のタガが外れた、半年後、1年後、5年後はいったいどうなっているのだろう、そう思うと、目の前が暗くなってくるアーカイブ最終更新 2025/10/09 09:561.影のたけし軍団 ★???「日本人ファースト」からの半年後、1年後、5年後を考える~「貧困問題」の解決を諦め、「敵を設定してそれを叩いてスッキリする」方向にシフトした社会の行方これまでのこと、そしてこれから起きることを記録しておかなければ。日々、そんな衝動に強く駆られている。それくらい毎日のように、この国が少しずつ変質しているのを突きつけられることが起きているからだ。まず確認したいのは、2023年、入管法改正案の話が出てくる前まで、この国には「クルド人ヘイト」は存在しなかったことだ。日本に来るようになったのが30年ほど前で、23年時点で3000人ほどと言われたクルド人。しかし、2年前まではSNSで誹謗中傷を受けるどころかその存在さえ知られず、知っていたとしてもさして関心も持たれず日本社会で暮らしていた。もうひとつ、記録しておきたいこと。それは25年5月には、クルド人以外で外国人がことさら敵視されるような空気はそれほどなかったということ。もちろん、在特会などのデモはあった。が、そのようなデモに参加したりヘイトを撒き散らす人々はごくごく一部ということは共有されていたのではないだろうか。そんなこの国で、「外国人問題」というトピックはあまり目にしないもので、ヨーロッパなど「どこか遠い国の話」のものだった。少なくとも半年前、ことさらに「外国人が!」と叫んでも白い目で見られたのではないか。その中でも、例えば技能実習生などに対しては、同情の声が多かった。時給300円でパスポートまで取り上げられて管理されるような劣悪な待遇には、多くの日本人が心を痛めていた。私自身、この問題を取材し発信してきたから肌感覚としてわかる。現状を知った人々は彼ら彼女らの苦境に胸を痛め、構造を知れば知るほど受け入れ団体など「搾取にかかわる日本人」に「日本の恥」「こんなことをしていたら実習生たちは日本が大嫌いになってしまう」と怒りを向けた。外国人観光客に対するネガティブな声も、コロナ前まではほぼ目にしたことがなかった。また、留学生に対して敵視する声など、少なくとも私は聞いたことがなかった。難民については、多くの人がそもそもほとんど関心を持っていなかった。それが今はどうだろう。実習生については「失踪」などが問題視され、それが即「犯罪」と結びつくかのような言説をあちこちで見かける。なぜ失踪するのか、どれほど劣悪な条件なのかといった背景を見る視点はすっぽり抜け落ちているように感じる。観光客を見るこの国の人々の視線も、大きく変わった。コロナ禍以降の増加、また日本人にはとても手の出ないような値段のものを「安い」と消費する姿を日常的に目にするようになったことが原因だろう。それに対しては「日本人だってバブルの頃に同じことしてたじゃないか」と諌める声もある。が、現在50歳の私でさえ、景気のいい時は子どもだったので「いい時代」を経験したという感覚はない。若い世代であればあるほど、「豊かだった日本」は遠い。留学生については、「日本人ファースト」という言葉が出てきた頃、博士課程の学生への生活支援に留学生も含まれることが問題視され、6月末、日本人に限定されることがあった。ごくごく一部のことでも「外国人優遇」「生活が苦しい日本人を差し置いて何をしているのか」という声が大きな力を持つようになり、それによって実際の制度運用が変わった最初のケースだということは覚えておきたい。難民については、これまでの無関心と打って変わって「偽難民!」「国へ帰れ!」といった言葉があちこちに溢れるようになった。特にクルド人がその標的となっているのは周知の通りだ。この夏には「不法滞在者ゼロプラン」に基づく強制送還が急増し(送還された中には日本生まれの子どもも含まれる)、8月21日、アフリカ開発会議で日本の4市が「ホームタウン」に認定され(といっても交流が強化されるという程度の内容)、「日本が特別ビザを新設する」などの誤情報とともに報道された結果、自治体には数千件レベルの抗議が殺到。誤情報と判明したあとも抗議は続いた。この件を受け、8月29日にはJICA本部前で移民反対のデモが行われ(その後も開催)、その翌日には大阪で移民反対デモが行われる。
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これまでのこと、そしてこれから起きることを記録しておかなければ。
日々、そんな衝動に強く駆られている。それくらい毎日のように、この国が少しずつ変質しているのを突きつけられることが起きているからだ。
まず確認したいのは、2023年、入管法改正案の話が出てくる前まで、この国には「クルド人ヘイト」は存在しなかったことだ。日本に来るようになったのが30年ほど前で、23年時点で3000人ほどと言われたクルド人。しかし、2年前まではSNSで誹謗中傷を受けるどころかその存在さえ知られず、知っていたとしてもさして関心も持たれず日本社会で暮らしていた。
もうひとつ、記録しておきたいこと。
それは25年5月には、クルド人以外で外国人がことさら敵視されるような空気はそれほどなかったということ。
もちろん、在特会などのデモはあった。が、そのようなデモに参加したりヘイトを撒き散らす人々はごくごく一部ということは共有されていたのではないだろうか。
そんなこの国で、「外国人問題」というトピックはあまり目にしないもので、ヨーロッパなど「どこか遠い国の話」のものだった。少なくとも半年前、ことさらに「外国人が!」と叫んでも白い目で見られたのではないか。
その中でも、例えば技能実習生などに対しては、同情の声が多かった。
時給300円でパスポートまで取り上げられて管理されるような劣悪な待遇には、多くの日本人が心を痛めていた。私自身、この問題を取材し発信してきたから肌感覚としてわかる。現状を知った人々は彼ら彼女らの苦境に胸を痛め、構造を知れば知るほど受け入れ団体など「搾取にかかわる日本人」に「日本の恥」「こんなことをしていたら実習生たちは日本が大嫌いになってしまう」と怒りを向けた。
外国人観光客に対するネガティブな声も、コロナ前まではほぼ目にしたことがなかった。
また、留学生に対して敵視する声など、少なくとも私は聞いたことがなかった。
難民については、多くの人がそもそもほとんど関心を持っていなかった。
それが今はどうだろう。
実習生については「失踪」などが問題視され、それが即「犯罪」と結びつくかのような言説をあちこちで見かける。なぜ失踪するのか、どれほど劣悪な条件なのかといった背景を見る視点はすっぽり抜け落ちているように感じる。
観光客を見るこの国の人々の視線も、大きく変わった。
コロナ禍以降の増加、また日本人にはとても手の出ないような値段のものを「安い」と消費する姿を日常的に目にするようになったことが原因だろう。
それに対しては「日本人だってバブルの頃に同じことしてたじゃないか」と諌める声もある。が、現在50歳の私でさえ、景気のいい時は子どもだったので「いい時代」を経験したという感覚はない。若い世代であればあるほど、「豊かだった日本」は遠い。
留学生については、「日本人ファースト」という言葉が出てきた頃、博士課程の学生への生活支援に留学生も含まれることが問題視され、6月末、日本人に限定されることがあった。
ごくごく一部のことでも「外国人優遇」「生活が苦しい日本人を差し置いて何をしているのか」という声が大きな力を持つようになり、それによって実際の制度運用が変わった最初のケースだということは覚えておきたい。
難民については、これまでの無関心と打って変わって「偽難民!」「国へ帰れ!」といった言葉があちこちに溢れるようになった。特にクルド人がその標的となっているのは周知の通りだ。
この夏には「不法滞在者ゼロプラン」に基づく強制送還が急増し(送還された中には日本生まれの子どもも含まれる)、8月21日、アフリカ開発会議で日本の4市が「ホームタウン」に認定され(といっても交流が強化されるという程度の内容)、「日本が特別ビザを新設する」などの誤情報とともに報道された結果、自治体には数千件レベルの抗議が殺到。誤情報と判明したあとも抗議は続いた。
この件を受け、8月29日にはJICA本部前で移民反対のデモが行われ(その後も開催)、その翌日には大阪で移民反対デモが行われる。