【朝日新聞】高市首相は食料品の消費税減税公約を断念すべきだ、不人気で支持を得られにくい税を政治はなぜ3度も増税してきたのか、歴史の重さを顧みよ最終更新 2026/06/18 15:071.影のたけし軍団 ★???【社説】消費税と社会保障 高市首相は歴史を背負い、将来に責任を高市早苗首相が、導入から38年目の消費税の歴史で、初めての減税に踏み切ろうとしている。物価高に苦しむ人たちがいる一方、高齢化のピークはこれからで、現役世代の子育て支援の充実も課題だ。本当に最適な政策なのか。歴史をひもとき、考えたい。不人気であっても所得税や社会保険料は、主に働く現役世代が納める。消費税の負担は、高齢者も含め幅広い人に及ぶ。不人気で支持を得られにくい税を、政治はなぜ、あえて創設し、3度も増税してきたのだろう。高度成長が終わり、第2次ベビーブームも過ぎた1979年、「一般消費税」の導入が自民党の大平正芳首相のもとで閣議決定された。しかし、「国民の協力を得られない」などの異論が相次ぎ、衆院選の期間中に撤回に追い込まれ、選挙は惨敗した。その後10年間は検討と廃案が繰り返され、消費税は89年4月に税率3%で始まる。竹下登首相は「豊かな長寿・福祉社会を築くための礎」と位置づけた。在宅介護の態勢強化や介護施設の整備など、この先10年に必要な高齢者福祉サービスを「ゴールドプラン」に定め、新たな税に理解を得ようとした。消費税にかかわった歴代政権は、ことごとく国政選挙でつまずいた。鬼門とも呼ばれただけに、3党合意で「政争の具にしない」不文律がつくられたように見えた。最長政権を率いた安倍晋三首相は10%へ引き上げたが、2度の延期で時期は4年遅れた。延期判断の是非を争点に、国政選挙で続けて勝利。「不文律」はなかったかのように、政権浮揚の手段として政治利用する道を開いた。そして高市首相は、師と仰ぐ安倍氏でさえ言及しなかった消費税減税を「悲願」と語る。今年2月の衆院選では、与党自民党の公約に8%の食料品の消費税2年間ゼロの「検討加速」を書き込み、主要野党の減税主張に並んだ。自民単独で3分の2の議席を得て、ここ30年経験のない物価高も追い風に、自身の威信をかけた政策に位置づける。だが、日本を取り巻く環境はかつてなく厳しい。少子化は想定より早く進み、昨年の出生率は1.14と10年続けて過去最低を更新した。人口に占める高齢者の割合は、消費税導入時の1割超から、いま3割近くに。「高齢者の高齢化」で、医療や介護を必要とする人は増える。社会保障費はもちろん、政権が増額する方針の防衛費、中東情勢の混迷や災害などに備える費用は、働き手の数が減っても縮むことはない。そして先進国でも突出する最悪水準の債務残高はこの間、雪だるま式に膨らんだ。日本の長期金利は5月に一時、2.8%と29年半ぶりの高水準をつけた。為替相場は超円安の1ドル=160円前後で推移する。「悲願」を実行すれば年5兆円ほどの税収が失われるが、首相は財源を示そうとしない。政治家の使命とは欧州各国は戦後、消費税に相当する付加価値税を相次いで導入した。税率を上げて財源を確保し、高負担だが高福祉という社会の礎を築いた。だからこそ、減税する際も社会保障政策への影響を踏まえ、必要最小限にとどめようとしてきた。コロナ禍のドイツは期間を半年にしている。高市首相は「悲願」を断念すべきだ。物価高が続くなか、減税相当分の価格引き下げは見通せない。恩恵は消費額が多い富裕層に大きく、低所得者に絞った給付を急ぐほうが効果的だ。公約を重んじて減税に踏み切るなら、歴史の重さも顧み、2年後に控える「実質増税」への覚悟を同時に語る責任がある。首相は「日本の社会保障は諸外国と比較すると、中福祉低負担」と述べている。負担をさらに削り、給付と負担のバランスを崩すばかりでは、政治家に課された使命を放棄している。予算の使い方を洗い直し、所得税や法人税も含めた一体的な税体系の改革も急がれる。将来まで責任を持った政治判断が、問われる。
高市早苗首相が、導入から38年目の消費税の歴史で、初めての減税に踏み切ろうとしている。物価高に苦しむ人たちがいる一方、高齢化のピークはこれからで、現役世代の子育て支援の充実も課題だ。本当に最適な政策なのか。歴史をひもとき、考えたい。
不人気であっても
所得税や社会保険料は、主に働く現役世代が納める。消費税の負担は、高齢者も含め幅広い人に及ぶ。不人気で支持を得られにくい税を、政治はなぜ、あえて創設し、3度も増税してきたのだろう。
高度成長が終わり、第2次ベビーブームも過ぎた1979年、「一般消費税」の導入が自民党の大平正芳首相のもとで閣議決定された。しかし、「国民の協力を得られない」などの異論が相次ぎ、衆院選の期間中に撤回に追い込まれ、選挙は惨敗した。
その後10年間は検討と廃案が繰り返され、消費税は89年4月に税率3%で始まる。竹下登首相は「豊かな長寿・福祉社会を築くための礎」と位置づけた。在宅介護の態勢強化や介護施設の整備など、この先10年に必要な高齢者福祉サービスを「ゴールドプラン」に定め、新たな税に理解を得ようとした。
消費税にかかわった歴代政権は、ことごとく国政選挙でつまずいた。鬼門とも呼ばれただけに、3党合意で「政争の具にしない」不文律がつくられたように見えた。
最長政権を率いた安倍晋三首相は10%へ引き上げたが、2度の延期で時期は4年遅れた。延期判断の是非を争点に、国政選挙で続けて勝利。「不文律」はなかったかのように、政権浮揚の手段として政治利用する道を開いた。
そして高市首相は、師と仰ぐ安倍氏でさえ言及しなかった消費税減税を「悲願」と語る。今年2月の衆院選では、与党自民党の公約に8%の食料品の消費税2年間ゼロの「検討加速」を書き込み、主要野党の減税主張に並んだ。自民単独で3分の2の議席を得て、ここ30年経験のない物価高も追い風に、自身の威信をかけた政策に位置づける。
だが、日本を取り巻く環境はかつてなく厳しい。
少子化は想定より早く進み、昨年の出生率は1.14と10年続けて過去最低を更新した。人口に占める高齢者の割合は、消費税導入時の1割超から、いま3割近くに。「高齢者の高齢化」で、医療や介護を必要とする人は増える。
社会保障費はもちろん、政権が増額する方針の防衛費、中東情勢の混迷や災害などに備える費用は、働き手の数が減っても縮むことはない。そして先進国でも突出する最悪水準の債務残高はこの間、雪だるま式に膨らんだ。
日本の長期金利は5月に一時、2.8%と29年半ぶりの高水準をつけた。為替相場は超円安の1ドル=160円前後で推移する。「悲願」を実行すれば年5兆円ほどの税収が失われるが、首相は財源を示そうとしない。
政治家の使命とは
欧州各国は戦後、消費税に相当する付加価値税を相次いで導入した。税率を上げて財源を確保し、高負担だが高福祉という社会の礎を築いた。だからこそ、減税する際も社会保障政策への影響を踏まえ、必要最小限にとどめようとしてきた。コロナ禍のドイツは期間を半年にしている。
高市首相は「悲願」を断念すべきだ。物価高が続くなか、減税相当分の価格引き下げは見通せない。恩恵は消費額が多い富裕層に大きく、低所得者に絞った給付を急ぐほうが効果的だ。公約を重んじて減税に踏み切るなら、歴史の重さも顧み、2年後に控える「実質増税」への覚悟を同時に語る責任がある。
首相は「日本の社会保障は諸外国と比較すると、中福祉低負担」と述べている。負担をさらに削り、給付と負担のバランスを崩すばかりでは、政治家に課された使命を放棄している。予算の使い方を洗い直し、所得税や法人税も含めた一体的な税体系の改革も急がれる。将来まで責任を持った政治判断が、問われる。