安価 彡(゜)(゜)ワイは転生を決める神や。IDなし
バール 約束しただけは酒をくれ、ミュルク、でなきゃもう歌わないぜ。
ミュルク そんなに飲んじゃ駄目だ。そんなに飲んでたら、そのうちまるで歌えなくなってしまうぞ。
バール 酒を飲めなければ歌う意味はないや。
ミュルク あんたの番組は、ザヴェトカのソプラノと並んで、この『真夜中の雲』の看板なんだ。私はあんたを、自分の手で掘り出した。
あんたみたいなこんなデブの肉の塊の中にこれほど繊細な魂の宿ったことなんてこれまでにあったかね。
あんたが成功したのはその肉の塊のおかげであんたの歌のせいじゃない。あんたにそう飲まれたらわしは破産だよ。
バール ちゃんと契約で貰えることになっている酒まで飲ませてもらえないんで、毎晩そのために喧嘩口論なんて俺はもううんざりだ。おれはずらかるぜ。
ミュルク 俺は警察にコネがあるんだ。また一晩くらいはくらいこませてやるぞ。あんた、這い回るような体たらくじゃないか。
あんたの情夫は外の風にあててやんな! (客席の中で拍手の音)ほら、あんたの番組だよ。
バール もうつくづくいやになった。
(客席の中で喝采の声、非難の声が起こる。バールは歌い続けるが歌はますます露骨になるので騒ぎがだんだん大きくなっていく。ついに客席は凄まじい混乱に陥る)
ピアニスト (感情を全く示さずに)驚いたな、あいつはやってのけたぜ。救急車を呼ばなければならん騒ぎさ。
今ミュルクの野郎が喋っているけど、客は奴を八つ裂きにしてしまうだろう。あの男は客に露骨な描写をしたんだ。
(バール、カーテンから出てくる。ギターを後に引きずっている)
ミュルク (彼の背後で)あんたはけだものだ。いためつけてやるぞ。自分の番組だけ歌ってればいいんだ! 契約通りに! さもないと警察に言いつけてやるぞ。(ホールに戻る)
(バール、自分の首を締めるような真似をして上手にある便所のドアの所へ行く)
もう人目につくようなことはしないで! 私は、あなたに、少なからず奉仕をしてあげたつもりですよ、ねえ!
バール 行こうぜ、エーカルト! お前にお楽しみも見せられなくなったぜ、兄弟!
(エーカルトと共にゆっくりと去る)
神父 さようなら! ご亭主、私があの人たちの酒代を払いますよ!
亭主 (テーブルの向こうで)焼酎十一杯分でさあ、神父さん。
バール 放っておいてくれ、俺は何も知らねえ。
木こり4 また手前の考えにふけっていたわけか、え?
木こり2 こいつには全く信用がおけねえ。覚えているだろう、こいつ、俺たちの靴を、
一晩中濡れる所へぶら下げていたおかげで、俺たちは森へ行けなくなっちまったんだぜ。
それもみんなこいつが例によって怠けていたせいだ。
木こり5 奴は、金のために仕事はしないとよ。
バール それにひきかえ、テディはよく働いたな。気前もよかった。人付き合いもよかった。
そのあいつの残したものは一つだけ、「昔テディって奴がいたっけな」という言葉だけさ。
木こり2 あいつ、今頃、どこにいやがるんだろうな?
バール (死人を指差して)ここにいるさ。
木こり3 俺はいつも思うんだ。憐れな魂ってのは風なんだってね。ことに早春の晩のさ。でも秋の風だってそうだと思う。
バール それから夏の風、太陽、穀物、畑の上を渡る風。
バール その案なら賛成するぜ、焼酎なら真っ当だ。その焼酎はどうする?
木こり4 テディの焼酎よ。
木こり5 テディの? それなら話は分かる---配給の分か? テディの奴はけちけち飲んでいたからな。間抜けにしてはいいとこに気がついたぜ。
木こり4 すごく冴えてるだろう。どうだ! お前ら血の巡りの悪い頭に分けてやりたいぜ。
テディの弔いはテディの焼酎でやろうぜ! 安上がりでしかもこの場に相応しい!
もう誰かテディに弔辞を述べてやったか? それこそやってやらなきゃいけねえことだ。
バール 俺がやった。
数人の木こり いつ?
バール さっきよ。お前たちが、馬鹿げたことを喋りだす前さ。弔辞の始まりはこうだった。
「テディは安らかに眠っている」……お前たちは何でも済んでしまってから始めて気がつくんだな。
木こり5 薄ら馬鹿が何をぬかす---焼酎を取って来よう。
バール 恥ずかしくないのか!
俺たちが憐れなテディの面倒を見てやっていた時、お前はどこにいたんだ、ええ、旦那?
テディが、まだ完全に死んではいなかった時のことよ、旦那? その時、お前はどこにいやがった?
この豚野郎! 死体をあさりやがったな! テディの孤児の保護者だって、ふん?
バール 何も証拠はないぜ、諸君!
だけど筋骨逞しいお前が、なぜまたのらくらしているんだ?
エーカルト 俺の頭の中には、何かこう空みたいなものが広がっている。恐ろしく高い空。
その空のもとで様々な思いが、雲のように鮮やかに、風に流れていく。
どっちへ流れて行くかも決まっていない。だけどそれはみんな俺の中にあるんだ。
バール それは、精神錯乱だぞ。お前はアル中だ。分かっただろう、その報いが来たんだよ。
エーカルト 錯乱に襲われたなら自分の面を見て分かるはずだ。
それもお前を清らかな男にしておきたかったからだ。俺にはその必要がある。
誓って言うが、俺は侵していても快楽なんか感じなかったんだ。
エーカルト (ゾフィーに)この野獣よりもたちの悪い奴を、あんたはまだ愛しているのか?
ゾフィー どうしようもないのよ、エーカルト。私、この人の死体をまだ愛しているの、私を殴る拳骨さえ好きなの。どうしようもないわ、エーカルト。
バール 俺が豚箱に入っていた時、お前らがなにをやっていたか、知る気はないぜ。
ゾフィー 私たちは一緒に白い牢屋の前に並んで、あなたのいる辺りを見上げていたわ。
バール 一緒だったんだな。
ゾフィー いけなかったならぶって。
エーカルト (怒鳴る)お前、この女を俺に押し付けなかったというのか?
バール あの頃はまだ、お前を奪われてもよかったんだ。
エーカルト 俺はお前のような象みたいに厚い皮は持っていないぞ!
バール だからこそ、俺はお前が好きなのさ。
エーカルト それなら少なくともこの女がそばにいる間は、汚らわしい口を閉じていろ!
焼酎か詩にでも酔っぱらってやがるのか? けだものめ、くたばりぞこないめ。
バール 馬鹿め!
(エーカルト、彼に飛び掛る。彼らはつかみ合う)
ゾフィー ああ、どうしよう! 猛獣みたい!
エーカルト (争いながら)彼女が林の中で言ったことがお前には聞こえなかったのか? もう暗くなるって言ったんだぞ! けだものめ、くたばりぞこないめ!
バール (飛び掛って、エーカルトを押さえつける)さあ、俺の胸をおっつけてやるぞ。俺の臭いがするだろう?
お前は俺のものだ。女を側においておくよりももっといいことがあるんだぞ。
(止める)林の上に、もう星が見えてきたぜ、エーカルト。
エーカルト (空を見上げているバールを凝視して)俺はこのけだものを殴ることが出来ない。
バール (彼に腕を回して)暗くなるぞ。今夜のねぐらを見つけなきゃならない。
森の中に風の入ってこない谷間がある。来い、いろんなけだものの話をしてやる。
(彼はエーカルトを引っ張って去る)
ゾフィー (暗闇に一人残されて)バール!
一切のことから手を引く。希望からも手を引く、そこで全く自由になるんだ。
マヤ それでお終いにはどうなるの?
グーグー (にやりと笑う)何もありやしない、虚無よ。お終いなんかない。永遠に何もないんだ。
ボルボル アーメン。
バール (立ち上がり、エーカルトに)エーカルト、立て! 俺たちは人殺しどもの中に迷い込んじまったぜ。
(エーカルトの肩を叩く)うじ虫どもが偉そうな面をしている。もう今にも腐りそうなのにな。
うじ虫どもが歌ったり、自慢し合っていやがるんだ。
エーカルト お前がそんな風になったのはこれで二度目だ。飲んだだけでこんなことになるかな。
バール ここじゃはらわたがさらけ出されている。ここは砂風呂じゃないらしいぜ。
エーカルト 座れ! たっぷり飲め! 温まるんだ!
マヤ 気違い、あんたはキ印だよ。
ボルボル (毒々しげに)ペテンだぞ! 病気でも何でもないくせに。そうよ! これはまさにペテンだ。
乞食 そういうお前は、癌だとでもいうのか?
ボルボル (不気味に落ち着いて)俺が癌だと?
エーカルト 馬鹿らしい。見えるか。バール?
肉付きのよい禿鷹をバールはちらちらと見上げる。
(遠ざかりながら)
バールは時折死んだふり。禿鷹が矢のように舞い降りると
バールは黙々と夕餉に禿鷹を賞味する。
その女給ってやつが奴に残された最後のものだったのさ。だから自分の親友さえ殺しちまったんだ。
もっとも、そいつも奴と同様いかがわしい奴だったがな。
武装警官1 どこかで焼酎か女でも、手に入らないかなあ! 行こうぜ、ここは気味が悪いぜ。あそこで何か動いているぞ。(両人、去る)
バール (小さな包みとギターを持って、茂みから出て来る。歯で口笛を吹いて)
じゃあ、死んだのか? 可哀想な奴! 俺の邪魔をしたからさ! 面白いことになりそうだ。
(両人の後を追う。風)
こいつもこんなざまになろうとは夢にも思わなかったろう。クラブの十だ。口をつぐんでもらいたいな。
そりゃ八百長だぞ。真面目にやらないと勝負にならないじゃないか。(沈黙。罵りの言葉だけが続く)
バール 何時だ?
一人の男 十一時。お前、出て行く気か?
バール そのうちよ、道は悪いか?
一人の男 雨だ。
男たち (立ち上がる)雨が上がったぜ。もう時間だ。またぐしょ濡れになるぜ。この野郎にはもう何もする必要がないんだからいいさ。
(彼らは斧を取り上げる)
俺は雨の音を聞いているんだってな。背筋が寒くなったぜ、雨の音を聞いているんだってあいつは言ったんだ。
>>3 は、はい