ここのスレ人多すぎやろみんなやっぱ寂しいんかなIDなし
マエ あたしたちの故郷は草原だったからね。
シュリンク 知っています。
ジョン お前、隅っこで何をごそごそやっているんだ?
マエ 自分のベッドを階段の下に運ぶんだよ。
ジョン 荷物はどこにあるのかい?
シュリンク 私は無一物です。私が階段に寝ますよ、奥さん、私は入り込んだりはしません。私の手には触れないですみますよ、分かっています、私の肌は黄色いですからね。
マエ (冷ややかに)私の手なら出しますよ。
シュリンク 私は握手していただくに値しません。私が今申し上げた意味でね。あなたは肌の色のことを仰ったんじゃないんですか、失礼しました。
我々が苛めるものと言ったら、猫くらいしかいなかった。その猫も泳ぎを習わせようとしたら溺れ死んでしまってね。俺たちを悩ますネズミを取ってくれる猫だったのに。こういう仲間はみんなこの病気にかかってしまってね。
マリー 揚子江で働いていたのはいつ頃?
シュリンク 俺たちは朝早く葦の葉陰で横になっている時、この病気が進んでいくのを感じたのだ。
毛虫 (登場)若造は風をくらって逃げましたぜ、シカゴ中に奴の影も形もありません。
シュリンク 少し眠った方がいい。(外に出る)また消息なしか? (シュリンク、退場する)
(開け放した戸から、目覚めたシカゴの騒音が聞こえる。ミルク売りの叫び声や、肉運搬車のごろごろと通りを通る音)
俺はもう横浜出身のシュリンクさんとは何のかかわりもないぞ!
ヒヒ そうよ、たとえば材木商のシュリンクがそうだぜ。奴は昔はハートのかけらもない男だった。
ところがある日突然情熱の虜になったせいで材木屋はパーになっちまった。今は港で石炭運びをやっている、昔はこの地区を牛耳っていた男だぜ。
毛虫 俺たちは、今あいつを、弱りきった純血種の犬のように、ここで養ってやっているのさ。でもやつが、また姿を現したあの馬の骨と手を切らなければ、こっちの忍耐にも限度があるぜ。
ガルガ (軽く)お前はいつから家へ帰ってないんだ?
(マリー、黙る)
ガルガ お前がここに出入りしているって話は聞いているぜ。
マリー そう。家族の世話は誰がやっているのかしら?
毛虫 俺もあんたに人生経験からいっておくぜ、人間って奴は、どんな非常な奴だって絵空事の夢にころりと参ってしまうものさ、それに現実の人生ってやつほど空々しいものはないんだぜ!
(マリー・ガルガが戻ろうとしてシュリンクにぶつかる)
シュリンク ここにおいででしたか、ミス・ガルガ?
シュリンク 妹さんにしたことを言っているのかね。君が庇っていたものを、私は拷問台にかけたりはしなかったよ。
ガルガ 俺の使えるのはこの二本の手だけだ。俺にとって人間的だったものを、あんたは一山の肉のように、片っ端から飲み込んでしまった。
あんたに俺の生きる糧をすっかり塞がれたおかげで、初めて俺は、これが俺の兵糧だったのかと気付いたわけだ。
あんたは俺の家族まで手段にした。俺の手持ちの兵糧を食い潰していった。俺は日ごとに痩せていった。
ついに俺は形而上的なものになってしまった! その今になって、自分の飲み込んだものを、この俺の面に吐き出す気なのか?
シュリンク 飲みたくない気分です、お許しいただければ。
ガルガ 僕がすすめているのに、あんたは拒むんだ。
シュリンク 拒みはしない、ただ私には脳髄しかないものだから。
ガルガ (しばらく間をおいて)失礼したな、じゃあ半分ずつ飲もうじゃありませんか。あなたも脳髄を減らせばいい。飲んでしまえば愛するようになりますよ。
シュリンク (まるで儀式のように飲む)飲んでしまえば愛するようになるだろう。
ガルガ (寝室から呼ぶ)一杯飲まないか、マー? 嫌か? 何故座らないんだ?
ヒヒ 黙れ! 奴らの喋るのを、今まで我慢して聞いていた。もういい加減に黙ってもらいたい。
ガルガ (マリーに)こいつは黒い穴だ。今、四十年が過ぎた。俺は嫌とは言わない。台地が裂ける、下水が高まってくる。でもその欲望は弱すぎるのだ。
四百年間、俺は海に訪れる朝を夢見てきた。目には汐風を感じた。何という柔らかい風だったのだろう! (彼は飲む)
シュリンク お願いです、マリー・ガルガ、よろしかったら私と一緒になりましょう。あなたを私の妻のように扱い、あなたにかしずきます。
もしあなたを一度でも傷つけたら、人目につかぬように首を吊りますよ。
ガルガ こいつは嘘は吐かない。絶対に嘘は吐かないぜ、お前、こいつと暮らせば、今奴の約束したものだけ果てに入れられるぜ、掛け値なしに。(バーに行く)
マリー あなたに聞きたいわ、パット、私があなたを愛していなくても、あなたは愛してくれるの?
マンキー そうとも、それに君が俺を愛さないなんて、この天と地のどこを探しても書いてないぜ、君。
ガルガ 君かい、ジェーン。君、カクテルをすっかり平らげちまったのか? 君はどうも君とは似ても似つかない姿になっていくな。何もかもすっかり売り渡したのか?
ジェーン この男を片付けてよ、ヒヒ。こいつの顔が嫌なのよ、うるさいったらありゃしない。私がもうミルクと蜂蜜の中で暮らしている女じゃなくなったからって、からかわれるいわれはないわ、パブ。
マリー 私はとても臆病になったわ、純潔と一緒に勇気まで失ってしまったのね。
シュリンク 汚れはまた洗い流せますよ。
マリー (シュリンクと戻って来る)そんなことは神様にも人間にも背いた行為です。あなたと一緒にはなりたくないわ。
ガルガ (彼女の手首をつかんで)素晴らしい手だ。ここは全く素敵な居心地だよ。壁紙が剥がれていたって平気だ。
新調の服を着て、ステーキを食う。ここの石炭だっていい味だ。僕は指先くらいの厚さの漆喰を全身にかぶっていたんだから。
ピアノがあるな。愛する妹のマリー・ガルガの、写真の周りに花環を飾ってくれよ、
二十年前に大平原で生まれた彼女の写真の、ガラスの下に色褪せない押し花を入れておくんだ。
ここは座り心地も寝心地も実にいいじゃないか、黒い風もここまでは吹いてこないさ。
「人生ってのはあなたの考えているようなものじゃないのよ」って。
シュリンク おめでとう、ガルガ、君は復讐の念にとりつかれているようだね。
ガルガ あんたは微笑んでいるけど、酷く恐いんだろう。それはそうさ、そう慌てて食わなくてもいいじゃないか! 時間はたっぷりあるんだぜ、マリーはどこだ? あの娘はちゃんと世話してもらっているだろうね。
きっと満足しきっているだろう。悪いけど今の所、あんたにおすすめできる椅子が空いていないんだ。ちょうど一つ椅子が足りない。これさえあれば家具は新調で完全なんだけどね。
まあこのピアノを見てくださいよ! 全く居心地がいい。僕はこの一家団欒の雰囲気の中で幾晩も送りたい。僕も新しい人生を始めることになったのでね、明日はまたC・メインズの貸本屋に行きますよ。
マエ ああ、ジョージ、そんなにお喋りをしないでおくれ。
ガルガ いいかい、その酷い四年間というのが、それでも一番ましな月日だったんだよ、それももうこれで終わりだ。
もう何も言わないでくれよ。両親であるあんたたちと、女房のジェーンに言っておく。俺は刑務所に行く決心をしたよ。
ご家族があなたを失わないように努力するつもりですよ。
マエ 監獄なんかに行っちゃ駄目だよ、ジョージ!
シュリンク 四十年の歳月は汚らしいものだったと分かった。そして今こそ大いなる自由ってやつが訪れるのさ。
ガルガ そういうわけだ、雪が降りそうだった、だが寒すぎて降らなかったぜ。家族の奴らはまだ残飯を食い、ひもじい腹を抱えながら生き続ける。それをよそに僕は、僕は敵を打ち倒すのだ。
ジョン わしには弱点ばかりしか見えないぞ、弱点だらけだ。生まれてこの方お前を知っているが、お前はまるで駄目だ。さあとっとと出て行け、俺たちを捨ててな。なぜ家具を運び出しに来ないんだ?
ガルガ この手紙を書いて、ポケットにしまっておく。大事な書類だ、三年経ったら、そのくらい豚箱を食らうだろうからな---釈放される一週間前に、この書類を新聞に売り込むことにしよう。
そうすれば俺が町に戻る時には、この男は俺の町から抹殺され、俺の目の前から消えているぜ。俺が釈放される日を、あいつはリンチを求める連中の怒号によって知らされるのだ。
ジェーン 知っているくせに意地悪ね。
ガルガ 叱りやしないよ。ジェーン、俺たちはこれから新しくスタートしようぜ。俺の戦いは終わった。そりゃ当然分かるはずだ、僕は相手をこの町から追い出してしまったんだから。
ジェーン 駄目よ、ジョージ、何もかも悪くなっていくだけよ。よくなるばかりだと言っていても、実は悪くなっていくばかり。
悪くしかならないもの。皆さん、これが気に入りました? もちろんお気に入らなければどこか他へ行ってしまってもいいのよ……
獅子鼻の男 あんたはこういうメニューの品を全部ご存知かね?
救世軍の聖職者 とんでもない! (笑い声)
ガルガ (つれてきた男たちに)分かってください、目茶目茶にされた僕の家族の有様を、皆さんにこうやってお目にかけるのは、必要とはいえ、全く恥ずかしいことです。
しかし、あの黄色い野郎に二度とこの町の土地を踏ませてはならないってこともお分かりでしょう。僕の妹のマリーはご存知のようにかなり長いことシュリンクの所に勤めていました。
今妹とちょっと話してみますがもちろん、出来るだけ気を遣って話さなければなりません。妹はこんなに落ちぶれていても、まだ幾らかの感受性ってものを持ち合わせているでしょうからね。
(マリーの隣に座る)さて君の顔を拝ませてもらっていいかい?
メインズ 酷いもんだ。
別の男 笑い事じゃすまないぜ。
救世軍の聖職者 人間というものはもちこたえすぎるのです。これが根本的な間違いですよ。とてつもないことをやりだす可能性を持っている。そう簡単にはくたばらない。(退場)
メインズと三人の男 よく分かったよ、ガルガ、あんたがどんな酷い目にあったか。
ガルガ 死の予感がするのか?
シュリンク これが君の材木業の元帳だ。いつか、数字にインクをかけた所から後がそうだよ。
ガルガ (だらしなく横に座る)そうさ、シュリンク、そうするつもりですよ。
シュリンク ジョージ・ガルガ、この戦いには、決して結末はないのだろうか? 理解しあうということは、決してありえないのだろうか?
ガルガ ないとも。
シュリンク だが、君は裸一貫の人生だけを元手に出て行こうというのか?
ガルガ 裸一貫の人生でも、他のどんな人生よりもましなんだ。
シュリンク タヒチへ行くのか?
ここから二百メートル離れた先の森には、俺をリンチしようとしている群衆が来ているぜ。
ガルガ そうさ、どうせ俺は爪弾きにされる男だろう差。だが、それが何だってんだ。あんたは自殺するんだろう。まだ何かくれるものがあるのか。俺を雇ったと言ったが支払いはまだ済んでいないぜ。
シュリンク 君みたいな奴が欲しがるものを、君にやったではないか。家具も買ってやったぞ。
若いからといって戦いをおりないでくれ。森は開墾されてしまった。禿鷹はもう食い飽きている。
そこで、貴重な答えは謎のまま大地に葬られてしまう! (振り返る。ミルク色の光がジャングルに立ちのぼる)
十一月十九日! シカゴの南三マイル、西風! 月の出る四分前、魚獲りに出かけたのにあべこべにこっちが溺死ってわけだな。