【医師】HPVワクチンに関する間違った情報を信じてしまったせいで大切な接種の機会を失い、子宮頸がんにかかってから後悔する人がいないようにと心から願っていますアーカイブ最終更新 2024/07/22 23:171.影のたけし軍団 ★???HPVワクチンの接種率が高い国では、子宮頸がん撲滅も遠い未来の話ではない。ところが、日本では不正確な情報が流布された結果、HPVワクチンの接種率は低いままで、子宮頸がんの発症率は高い。小児科医の森戸やすみさんは「HPVワクチンの接種率を上げていく必要がある。1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性は今年度中は無償でのキャッチアップ接種が可能なので、ぜひ検討を」という――。現在、私たち医師が感じているのは、HPVワクチンを受けに来る人には外国籍の人の割合が多いということです。これは日本人の接種数が少ないからでしょう。HPVワクチンは、海外では一般的なワクチンであるにもかかわらず、日本では「副反応が大きく怖いワクチン」という誤解がいまだに残っています。そのため日本ではキャッチアップ接種も通常の定期接種も、あまり接種率が上がっていません。2007年にHPVワクチンの接種を開始したデンマークでも、日本のように副反応が多いという誤解から接種率が下がったことがありました。当初、デンマークではHPVワクチンの接種率は95%だったのに、新聞やテレビといった主要メディアが否定的な報道をしたのです。そのせいで2016年には接種率が半分程度まで下がりました。しかし、デンマークの保健当局の努力によって、わずか1年で接種率は回復。保健当局は、がん患者団体などと協力しながら、迅速にソーシャルメディアを中心としたキャンペーンを行ったのです。その後、デンマークでは男女ともに公費でHPVワクチンを受けられるようになり、2022年の接種率は78%となっています。同様のことがアイルランドでもありました。アイルランドでは、2010年にHPVワクチンの接種が開始されましたが、ワクチンに反対する団体がソーシャルメディアを駆使し、メディアや政治家に働きかけたのです。そのせいで当初は87%だった接種率が、2017年には54%にまで落ち込みました。しかしアイルランド政府が専門機関を設立したり、ソーシャルメディアを使って発信したり、医療従事者に教育を行ったりしたおかげで回復しました。現在はアイルランドでも男女ともに公費でHPVワクチンを接種することができ、2022年の接種率は79%です。一方、日本では厚生労働省が及び腰だったことから、8年近く「HPVワクチンの積極的勧奨の差し控え」がありました。この間、他国のように各種学会、がん患者団体などと協力して接種率回復のためのキャンペーンを行うことも、ソーシャルメディアでの発信を行うこともありませんでした。日本におけるHPVワクチン接種率は2022年には7%でデンマークやアイルランドの回復にはまったく及びませんし、そのうえ日本は男性のHPVワクチンは定期接種になっていません。さて、世界にはHPVワクチンの接種を公費で行っている国は138カ国あり、そのうち61カ国は男性も対象です。■日本の子宮頸がん発生率は高い現在日本の子宮頸がんの発症率は高く、HPVワクチンでがん予防ができていない低所得の国々と同程度。私は最前線の医師に接種率回復のための責任を負わせないでほしいと思っています。本来、感染症予防は国が国民を守るために方策を決めて行う問題です。なぜ日本政府がデンマークやアイルランドのようにできないのかと大変疑問に思っています。最後にHPVワクチンは定期接種のワクチンとはいえ、当然ながら強制されるものではありません。しかし、HPVワクチンに関する間違った情報を信じてしまったせいで大切な接種の機会を失い、子宮頸がんなどの病気にかかってから後悔する人がいないようにと心から願っています。森戸 やすみ(もりと・やすみ) 小児科専門医1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。https://president.jp/articles/-/837972024/07/21 09:47:342すべて|最新の50件2.名無しさん0ZsP1ヤリマンしかかからないんだからほっとけ2024/07/22 23:17:16
小児科医の森戸やすみさんは「HPVワクチンの接種率を上げていく必要がある。1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性は今年度中は無償でのキャッチアップ接種が可能なので、ぜひ検討を」という――。
現在、私たち医師が感じているのは、HPVワクチンを受けに来る人には外国籍の人の割合が多いということです。これは日本人の接種数が少ないからでしょう。HPVワクチンは、海外では一般的なワクチンであるにもかかわらず、日本では「副反応が大きく怖いワクチン」という誤解がいまだに残っています。
そのため日本ではキャッチアップ接種も通常の定期接種も、あまり接種率が上がっていません。
2007年にHPVワクチンの接種を開始したデンマークでも、日本のように副反応が多いという誤解から接種率が下がったことがありました。当初、デンマークではHPVワクチンの接種率は95%だったのに、新聞やテレビといった主要メディアが否定的な報道をしたのです。そのせいで2016年には接種率が半分程度まで下がりました。
しかし、デンマークの保健当局の努力によって、わずか1年で接種率は回復。保健当局は、がん患者団体などと協力しながら、迅速にソーシャルメディアを中心としたキャンペーンを行ったのです。その後、デンマークでは男女ともに公費でHPVワクチンを受けられるようになり、2022年の接種率は78%となっています。
同様のことがアイルランドでもありました。アイルランドでは、2010年にHPVワクチンの接種が開始されましたが、ワクチンに反対する団体がソーシャルメディアを駆使し、メディアや政治家に働きかけたのです。
そのせいで当初は87%だった接種率が、2017年には54%にまで落ち込みました。しかしアイルランド政府が専門機関を設立したり、ソーシャルメディアを使って発信したり、医療従事者に教育を行ったりしたおかげで回復しました。現在はアイルランドでも男女ともに公費でHPVワクチンを接種することができ、2022年の接種率は79%です。
一方、日本では厚生労働省が及び腰だったことから、8年近く「HPVワクチンの積極的勧奨の差し控え」がありました。この間、他国のように各種学会、がん患者団体などと協力して接種率回復のためのキャンペーンを行うことも、ソーシャルメディアでの発信を行うこともありませんでした。
日本におけるHPVワクチン接種率は2022年には7%でデンマークやアイルランドの回復にはまったく及びませんし、そのうえ日本は男性のHPVワクチンは定期接種になっていません。
さて、世界にはHPVワクチンの接種を公費で行っている国は138カ国あり、そのうち61カ国は男性も対象です。
■日本の子宮頸がん発生率は高い
現在日本の子宮頸がんの発症率は高く、HPVワクチンでがん予防ができていない低所得の国々と同程度。
私は最前線の医師に接種率回復のための責任を負わせないでほしいと思っています。本来、感染症予防は国が国民を守るために方策を決めて行う問題です。なぜ日本政府がデンマークやアイルランドのようにできないのかと大変疑問に思っています。
最後にHPVワクチンは定期接種のワクチンとはいえ、当然ながら強制されるものではありません。しかし、HPVワクチンに関する間違った情報を信じてしまったせいで大切な接種の機会を失い、子宮頸がんなどの病気にかかってから後悔する人がいないようにと心から願っています。
森戸 やすみ(もりと・やすみ) 小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。
https://president.jp/articles/-/83797