Wild-Bison 第2部(前編) ~海を渡った武士道~最終更新 2024/06/13 20:491.法介◆T3azX0Hk1U48a8n法介主張のオリジナル小説です。2024/04/23 05:48:07488コメント欄へ移動すべて|最新の50件2.法介◆T3azX0Hk1U48a8n Wild-Bison 第2部(前編)Gunスピリット・オブ・Bison ~海を渡った武士道~2024/04/23 05:57:163.法介◆T3azX0Hk1U48a8n日本史において、およそ200年続いた戦国の世。その乱世に終止符を打った天下人、徳川家康。2024/04/23 05:57:554.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその家康が築いた徳川幕府は260年もの長きにわたって繁栄し、さまざまな文化が開花した。2024/04/23 05:58:095.法介◆T3azX0Hk1U48a8n江戸時代以前の争い事が絶えなかった戦国の世の剣術は、たんなる殺人剣法でしかなかった。しかし、その「殺人剣」を仏法で説かれる「禅」の教えを取り入れ、「剣禅一致」という人間としての高みを目指す、人を活かす「活人剣」に転じ、剣術を武道へと昇華させた剣術家がいた。2024/04/23 05:58:286.法介◆T3azX0Hk1U48a8n徳川将軍家剣術指南役、 柳生但馬守宗矩(やぎゅう たじまのかみ むねのり)その人である。2024/04/23 05:58:547.法介◆T3azX0Hk1U48a8n歴史上、剣豪と称された人物が大名の地位にまで上り詰めたのは、大和柳生藩初代藩主となった柳生宗矩只一人である。2024/04/23 06:00:008.法介◆T3azX0Hk1U48a8n家康、秀忠、家光と三代将軍の剣術指南役を任され、幕府初代惣目付として松平信綱、春日局と共に三代将軍徳川家光を支えた鼎の脚の一人とされた柳生宗矩。2024/04/23 06:00:179.法介◆T3azX0Hk1U48a8n家康が徳川の世を治めるにあたって兵法指南役として選んだその柳生の剣は、「兵法は人をきるとばかりおもふは、 ひがごと(間違い)也。 人をきるにはあらず、悪をころす也」2024/04/23 06:00:5310.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「人に勝つ道は知らず、我に勝つ道を知りたり」2024/04/23 06:01:0911.法介◆T3azX0Hk1U48a8nの宗矩の言葉にいい表されるように、己の人間性を高める武士道であり、その武士が向き合う刀は「武士の魂」とまで言われるようになった。2024/04/23 06:01:4112.法介◆T3azX0Hk1U48a8n <空観寺>福岡の西の外れの山中奥深く入っていった所に、日蓮法華道『空観寺』という寺がある。2024/04/23 06:02:2013.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその庭は、白砂や小石を敷いて水の流れを表現し水面に見立てた「枯山水」。2024/04/23 06:02:3614.法介◆T3azX0Hk1U48a8n室町時代の禅宗寺院で特に用いられ発達したこの独特な庭園様式は、禅問答をする空間でもある。だからこそ抽象的な表現を通して見る者の心に何かしらを問いかけてくる。2024/04/23 06:02:4615.法介◆T3azX0Hk1U48a8n枯山水に限らず日本文化の奥底には、こういった仏教文化が深く染み込んで独創性豊かに発展してきたものが多い。2024/04/23 06:02:5616.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその日本に於いて無数に存在する仏教宗派。2024/04/23 06:03:0817.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗派と言うだけにお寺は普通、〇〇宗といった呼び名でその宗派を名乗る。しかし、ここに紹介する「日蓮法華道」と言うお寺は、、該存の宗派に属した教団としての宗派ではなく、剣道や柔道、書道や華道といった「道」を極めるといった意味で日蓮が説く「法華経」の極意へと通ずる道を学ぶ寺である。2024/04/23 06:03:1918.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその寺の本堂には日蓮が顕した十界曼荼羅が本尊として祭られている。その本尊に手を合わせ法華経を読誦し、お題目を唱えるのがこの寺の修行の有り様である。2024/04/23 06:03:4819.法介◆T3azX0Hk1U48a8n日蓮法華道「空観寺」第75世住職、巌空(がんくう)。2024/04/23 06:04:0620.法介◆T3azX0Hk1U48a8n彼は今年で61歳になる。その巌空のもとで今、一人のアメリカ人が修行を行っている。彼の名をアドバン・J・ルークという。そうあのDestiny(ディステニー)部隊の闘将「アドバン」である。2024/04/23 06:04:2021.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンがなぜ今、日本の空観寺なるお寺で修行をしているのかと言えば、話はWild-Bisonの第1部-第一話にさかのぼります。Bison氏が言った「武士の魂」の意味するところを知りたくてアドバンは、Bisonが紹介した柳生新陰流の「柳生の里」がある福岡にやって来た。2024/04/23 06:07:2722.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそこの道場の師範がBisonの弟、柳生新陰流第17代師範、柳生真兵衛である。2024/04/23 06:08:4523.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「お前さんがアドバンか、 兄貴から話は聞いている。 短い期間ではあるが剣術が何たるかを学んでいくがよい」2024/04/23 06:08:5924.法介◆T3azX0Hk1U48a8nいかにも剣術の達人といった風貌の千葉真一を思わせる真兵衛が、アドバンに「よろしく!」と手を差し出した。握手したその手から伝わるとてつもない存在感が、「この男、只者ではない・・・」とアドバンの興味をMAXにそそり立てた。2024/04/23 06:09:1025.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその真兵衛には二人の息子がいる。2024/04/23 06:09:2126.法介◆T3azX0Hk1U48a8n今年35になる長男、雄一郎と8つ年が離れた次男、陽次郎(27歳)である。雄一朗は一昨年まで警視庁の捜課一課の敏腕刑事として活躍していたが、現在は全国暴力団対策本部の本部長という職に就いている。去年から北九州県警に入って対暴力団対策課の指揮をとっている。2024/04/23 06:09:3727.法介◆T3azX0Hk1U48a8n次男の陽次郎は、実家の家業を継ぐべく剣術家の道に進み、日々剣術の鍛錬と仏道修行に明け暮れている。仏道修行とは、あの日蓮法華道「空観寺」での修行だが、住職の巌空は真兵衛やBisonの兄にあたる。長男が巌空で次男がBison、三男が真兵衛といった三兄弟になります。2024/04/23 06:09:4928.法介◆T3azX0Hk1U48a8n実は、Bisonにもアフロ・Bisonという息子が一人いて、年は真兵衛のとこの次男、陽次郎と同級の27歳。同じ年のいとことあってこの二人はすこぶる仲が良い。2024/04/23 06:10:0229.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロは、Bisonと同じアメリカに住んでいるが、今日本の航空自衛隊で特別勤務を命じられ福岡の築城基地に勤務している。アフロは自衛官ではない。彼はアドバン率いるDestiny部隊の戦闘機パイロットである。今回訳あって日本の自衛隊勤務を命じられ来日している。英語と日本語を話せるアフロの日本行きを知ったアドバンが、アフロを通訳代わりにして自分も来日したという訳である。2024/04/23 06:10:1230.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロの築城基地での勤務は、名目で実際のところアドバンの通訳係のようなもんで、あのケイク・アートが仕組んだ二人の来日である。2024/04/23 06:10:2331.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは剣術のことに興味深々で真兵衛に聞きたいことが次から次へと沸いてくる。それをアフロに伝えようと振り返ってアフロを見ると、竹刀を持って陽次郎とちゃんばらごっこをして遊んでいた。2024/04/23 06:10:3532.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ヘイ アフロ・・・」「何だよアドバン」ちゃんばらしながら受け応えするアフロ。2024/04/23 06:10:4833.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「楽しそうだなお前・・・」「俺にもその竹刀貸してくれ」「おお! やってみますか隊長さん」ってアドバンとアフロの関係ってどういう関係?2024/04/23 06:11:1834.法介◆T3azX0Hk1U48a8n実はこの二人、アドバンが年は一つ上だが、ジャスティスではほぼ同期の入隊。入隊以来数々の戦闘を共にしてきた二人。コンバット・デイジーと共にアフロは、Destiny部隊の中心人物の一人なのだが・・・。いつもふざけているのは、あいつの影響である事は間違いない。2024/04/23 06:11:4635.法介◆T3azX0Hk1U48a8nBison工房でロン・スミスが思いっきりくしゃみした。「誰か俺様のうわさ話でもしてやがるな・・・」アフロを無理やりジャスティスに引き込んだのもこの男であった。2024/04/23 06:12:0336.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「おやじ~、アフロ今日本に行ってるんだって? 何しに行ってんだ?」「えっ? そうなのか?」2024/04/23 06:12:1637.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロは、アメリカではジャスティスの宿舎生活なので、Bisonはアフロの生活状況を殆ど把握していない。というか、Bison家は妻Nikoもそうだが殆ど放任主義で、子供の事にいちいち親が関わらない。2024/04/23 06:12:2738.法介◆T3azX0Hk1U48a8n子供をまるで自分の所有物でもあるかのようにいちいち口を挟んでくる親が多い現代社会。親が子供離れ出来ずに、結果として子供の精神の自立を阻害し、自分では何一つ決めることが出来ない依存型の成人が日本では増えて来ている。2024/04/23 06:12:4139.法介◆T3azX0Hk1U48a8n親が子に依存し、子も親に依存してしまう、その悪しき依存関係の親子関係を育んでいるのが学校教育における部活動のあり方でもあろう。2024/04/23 06:13:0640.法介◆T3azX0Hk1U48a8n特に中学生の時期、子供は親から自立しようと精神が自立していく大事な時期である。そこにズカズカと学校に親が入ってきて、子供と一緒に部活を楽しんでいるのが昨今の学校教育である。2024/04/23 06:13:2041.法介◆T3azX0Hk1U48a8n教育者がこの異常さを「おかしい」と気付かない。気付かないどころか、教育者も一緒になってそのような部活を学校の知名度を上げる為の要因として外部から専門のコーチを招いたりして後押しさえしている。2024/04/23 06:13:3742.法介◆T3azX0Hk1U48a8n教育の一環としてあるべき部活動が、教育とは関係のない専門化の指導のもとで勝つ事に執着した過剰な練習が課せられ、その結果、体を壊して病院でリハビリを受けながら部活を続ける子供や、教育者ではない指導者による行き過ぎた体罰がおこなわれたり、おかしな部活動の学校をあげての推進が問題視されない「歪んだ教育現場」の実態が、精神の自立が出来ていない成人を次々と世に送り出している。2024/04/23 06:13:4943.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「アドバン、君には竹刀じゃなくてこいつを貸してやろう」そう言って真兵衛がアドバンに手渡しはのは、「真剣! 武士の魂・・・」2024/04/23 06:14:0244.法介◆T3azX0Hk1U48a8n真兵衛が鞘から真剣を抜くと、ギラリと光輝くその鏡のように磨かれた金属が放つ光彩は、「な、何なんだ・・・この美しさは・・・」アドバンは、これまでに様々な武器を手にしてきた。だが、それら武器を手に取って「美しい」と感じた瞬間は無かった。2024/04/23 06:14:1545.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「こ、これが、武士の魂・・・」その美が放つ神聖なる光彩には、その言葉を納得せしめるに十分過ぎる説得力を含んでいた。2024/04/23 06:14:3846.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「陽次郎、お前が手本を見せてやれ」窪田正孝似の好青年、陽次郎がその真剣を手に取って試し斬りの藁材の前に立った。2024/04/23 06:15:0547.法介◆T3azX0Hk1U48a8n鞘に収まった真剣を腰に差し、右手で柄(つか)を左手で鞘を握ると一瞬で剣を抜き取ったかと思えば、目の前の藁の上半分が斜めに見事に切断されて、ズズズとずれ落ちて床に転がった。2024/04/23 06:15:3348.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは抜き取った刀を上段から下へ斬りつけるものと予測して見ていただけに、陽次郎の抜き取る動作の流れのまま、藁材を一刀両断にした剣さばきは、目にも止まらぬ早技だった。2024/04/23 06:15:4549.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「アドバン、君も試してみろ。」そういって真兵衛が鞘に納まった真剣をアドバンに手渡した。2024/04/23 06:15:5850.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンはその真剣を腰に差し、目をつぶってイメージした。一度鞘から刀を抜き、確実な動作の中で上段から力を込めて打ち込み藁を斬る!2024/04/23 06:16:2951.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそのイメージが浮かんだ瞬間、イメージ通り動作に転じた。しかし、アドバンが振り下ろした刀は藁に食い込んで止まった。2024/04/23 06:16:4352.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「そうじゃないんだなー アドバン」アドバンに部隊の中で為口を叩ける人間はそうはいない。2024/04/23 06:16:5753.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「アフロ、お前斬れるか?」「貸してみ」今度はアフロが藁の前に立った。2024/04/23 06:17:1054.法介◆T3azX0Hk1U48a8n松本純似のアフロが腰を落として構えに入った。2024/04/23 06:17:2255.法介◆T3azX0Hk1U48a8n陽次郎と同じように抜刀で下から斜め上段に向かって刀が走った。その刀を更に反転させ真横に走らせ一瞬の内に藁を三分割に斬り刻んだ。2024/04/23 06:17:3456.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロは、陽次郎や雄一朗達ほど、剣術に真剣に励んではいないが子供の頃から来日すれば必ず三人で剣術をたしなんだ。彼も柳生の人間、雄一郎、陽次郎同等の剣術のセンスは持ち合わせている。その事を熟知している真兵衛が言った。2024/04/23 06:17:4657.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ほう、いつの間にそんな事が出来るようになった・・・」2024/04/23 06:17:5758.法介◆T3azX0Hk1U48a8n藁を上の部分から斬り刻んでいく三等切りは良く見かける。しかし、アフロがやったのは、下の部分をまず斬って、斬られた部分を更に斬り刻んだ三等切り。普通なら切られた部分は根に刺さっていないので、それを斬りつけても飛んでいくだけで斬り抜くことは用意ではない。2024/04/23 06:18:1259.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ん? 何が?」斬った本人はそんな事は何も考えていなかった・・・。2024/04/23 06:18:2460.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「真剣は力任せに叩き斬ろうとしても斬れないんだよ」真兵衛がアドバンに説明した。2024/04/23 06:18:4061.法介◆T3azX0Hk1U48a8n真剣は手で握り締めても手は切れない。しかし握り締められた剣を引き抜くと、手は切れる。そう真剣は「引きながら斬る」ものである。柳生の剣はその原理に基づいて流れるように剣が舞う華麗な太刀裁きがばえる剣。2024/04/23 06:19:0662.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「なる程そういうことか・・・」関心しながら、再び真剣を手にしたアドバン。2024/04/23 06:19:1863.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「それにしても美しい・・・」ひしひしと真剣を眺め自分なりにそれを振ってみる。一振りふた振り。それをみた真兵衛は思った。2024/04/23 06:19:3464.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(こいつ、前世で剣術をやっていたな・・・ しかも、相当な腕前・・・)2024/04/23 06:19:5465.法介◆T3azX0Hk1U48a8n直感的に真兵衛の脳裏にある剣術家の名が浮かんだ。「宮本武蔵!」2024/04/23 06:20:0966.法介◆T3azX0Hk1U48a8n武蔵が生きていたらこんなオーラを放ったであろうと思わせるオーラが真剣を手にしたアドバンから放たれていた。2024/04/23 06:20:3067.法介◆T3azX0Hk1U48a8n <禅>昨今、アメリカのシリコンバレーでは、ステーブ・ジョブズの影響で日本の「禅」がIT企業でもてはやされている。2024/04/23 06:27:5668.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンも以前から「禅」に興味があったが、瞑想と禅の違いが今一つ理解出来ないでいた。そのことを巌空和尚に問うてみたところ、和尚は説法を始めた。2024/04/23 06:28:2769.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「今、アメリカでも“禅”が注目されているようじゃが、 インド仏教と中国仏教とでその意味するところが全く異なることは、 あまり知られてはいない」2024/04/23 06:29:0070.法介◆T3azX0Hk1U48a8n瞑想はパーリ語経典ではJhāna(ジャーナ)と言い、サンスクリット経典ではDhyāna (ディヤーナ)と言う。2024/04/23 06:29:1571.法介◆T3azX0Hk1U48a8nパーリ語は南伝仏教と呼ばれる上座部が拠りどころとする経典に用いられる言語で、サンスクリット語は北インドの広い領域で使用されていた言葉で、大乗が弘まっていった北伝仏教で使われていた言語です。大乗仏教はシルクロードを経て中国に伝わりインド語の「ジャーナ」、「ディヤーナ」といった瞑想を指す単語が漢訳経典では「禅定」や「禅那」と訳された。2024/04/23 06:29:2672.法介◆T3azX0Hk1U48a8n中国では道教と習合した、独特な「禅宗」が発達し、この禅宗が日本にもたらされ、日本の禅宗が興った。2024/04/23 06:29:4773.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「禅」はZenとして国際語にもなっており、日本仏教の瞑想法であると認知されているが、これに対して異を唱えている人も居る。ブッダの修行法の解釈は宗派に拠り異なりますし、日本仏教のZenが仏教(Buddhism)の修行法だと辞書的に定義されるのは問題があると考える人は少なくない。2024/04/23 06:30:0174.法介◆T3azX0Hk1U48a8n例えば、韓国仏教ではブッダの修行法はチャムソンと言い、日本の禅とは修行方法が異なる。同じように、スリランカやタイやミャンマーの仏教における修行方法も違う。この地域の南伝仏教(テーラワーダ)は欧米に広まっており、Zenと区別するためにMeditation(瞑想)と呼ばれ、日本の仏教徒でもこれにならい、南伝仏教系の修行方法は「瞑想」と呼ぶ。2024/04/23 06:30:1875.法介◆T3azX0Hk1U48a8n日本の「禅」もそうだが道教の影響の強い中国系の禅は「頓悟禅」と言いまして、悟りというのは何かのきっかけでパッと得られるようなものだと考えます。それに対し南伝仏教の瞑想は保守的な仏教のスタイルである二種類の瞑想を行い、段階的に悟りの境地に入っていくというスタイルです。2024/04/23 06:30:3076.法介◆T3azX0Hk1U48a8nいわゆる「サマタ瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」の二種の瞑想がそれにあたります。2024/04/23 06:30:5477.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは、真兵衛から剣術の指南を受けながらこの空観寺で宿泊生活をしている。ここの住職の巌空和尚は、Bisonや真兵衛の兄にあたる。巌空和尚:長男Bison:次男(息子:アフロ)真兵衛:三男(息子:長男 雄一郎、次男 陽次郎)といった関係だ2024/04/23 06:59:2778.法介◆T3azX0Hk1U48a8n巌空和尚から「禅」の説法を聞いた夜、アドバンは不思議な夢をみた。2024/04/23 07:01:2579.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ここはどこだ?」見た事も無い風景、緑の山々が連なり、広がる田園の先に、藁ぶき屋根の子民家が集落として立ち並び、写真で見たことのあるお百姓とおぼしべく人達が農作業にいそしんでいる。2024/04/23 07:01:4580.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそんな風景に溶けこむように自分も着流しの薄汚い着物を羽織って腰には日本刀をさし、頭の毛を縛り上げ、まるで武者修行の浪人のごとき風貌で立っていた。2024/04/23 07:02:0381.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「おーい! たけぞう! そんなとこにすっ立ってるんじゃないよ。 早くこっちに来い!」2024/04/23 07:02:2082.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(あいつ誰だ? 誰に話かけてるんだ?)後ろを振り返っても、周りを見渡しても自分以外に話しけかけてる人物は居ない。どうやらアドバンに向かって話しかけているようだ。(俺がたけぞう?)(たけぞうって誰だ?)話かけてきた見知らぬ男が近寄ってきた。2024/04/23 07:02:3683.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「お前だれだ?」「誰って、お前の幼馴染の又八に決まってんじゃないか! 何おかしな事いってんだ? たけぞう!」「俺がたけぞう? 誰だよたけぞうって?」「宮本村の宮本武蔵(たけぞう)だろ、お前自分の名前わすれちゃったのか?」2024/04/23 07:02:5484.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(宮本たけぞう?)「さあ、たけぞう、あの先がおめーが臨む対戦相手、 柳生が居る柳生の里だ! 行くぞー!」2024/04/23 07:03:1485.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(俺が、柳生と勝負するのか?)(しかも今から?)「ちょっと待て! 俺は剣術の心得など無い! どうしてそんな俺が柳生と勝負するんだ?」2024/04/23 07:03:4286.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「剣術の心得が無い? ついこの間、あの吉岡清十郎を打ち破ったお前さんが何を言ってんだい? ちょいと剣を抜いてみな」2024/04/23 07:03:5887.法介◆T3azX0Hk1U48a8n又八にそう言われて腰の刀を抜いたアドバン、いやたけぞうだったが、握った刀がまるで自分の体の一部分かのような感覚を感じた。2024/04/23 07:04:1088.法介◆T3azX0Hk1U48a8nと、その時又八が落ちていた木切れをたけぞう目掛けて勢いよく投げつけた。2024/04/23 07:04:2689.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれをたけぞうは、見事な太刀筋で一刀両断にした。(解かる・・・刀の扱い方が、振り方が)2024/04/23 07:04:3990.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは、来日して空観寺に寝泊まりする中で、吉川英治の小説「宮本武蔵」の和英版を読んでいた。今自分が置かれているシチュエーションがその宮本武蔵である事を悟るのに時間は掛からなかった。(俺が宮本武蔵?・・・)2024/04/23 07:04:5591.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「じゃあ、行こう! 柳生の里へ!」又八と武蔵は柳生の里へ向かって歩みだした。2024/04/23 07:05:2692.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその道の途中、二人の行く先に一人の武芸者が立ちふさがる。2024/04/23 10:32:0793.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「柳生兵庫!」事前に柳生の情報を下調べしていた又八が、その風貌から柳生きっての剣豪、柳生兵庫だと覚った。2024/04/23 10:32:3294.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「柳生に勝負を挑もうって勇ましい武芸者が居るって聞いたんだが、 お前さん達か?」2024/04/23 10:32:5295.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「お、俺はそんな恐れ多い事は、 これっぽちも思っちゃいねーよ ほ、ほんとだぜ・・ た、ただ、こっちにいる武蔵って奴がね、 どうしても勝負がしたいっていうもんだから、 案内しちゃったりしただけです」2024/04/23 10:33:0996.法介◆T3azX0Hk1U48a8n又八は、そう説明すると隣の武蔵に子声でつぶやた。「た、たけぞう、どうすんだ?」アドバンは、闘将としての自身の血が騒ぐのを感じた。2024/04/23 10:33:2797.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「面白い、お相手願いますか?」自分でも何を言ってるのか分からないが勝手に口から言葉が出てくる。2024/04/23 10:33:5998.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ならばお相手致そう」そういうと兵庫は、腰の刀に手を掛けて抜刀の姿勢を取った。2024/04/23 10:34:2599.法介◆T3azX0Hk1U48a8nたけぞうも刀を抜き構えに入った。2024/04/23 10:34:39100.法介◆T3azX0Hk1U48a8n二人が向き合い、その場の空気が一瞬にして張り詰めた空気に変わった。2024/04/23 10:35:01101.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその場にいた又八は、ゴクリと唾を飲み込んだ。2024/04/23 10:35:24102.法介◆T3azX0Hk1U48a8n1.5メートル程の間を挟んで二人の武芸家がその時を見定めていた。静まり返った田舎の一本道。風が吹き抜ける音だけが妙に大きく感じた。2024/04/23 10:35:44103.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(全くすきが無い・・・)2024/04/23 10:35:59104.法介◆T3azX0Hk1U48a8n安易に切りかかれば、カウンターで一瞬で斬り返される。道場で目にした陽次郎やアフロの柳生の剣さばきの鋭さが脳裏に焼きついているアドバンだっただけに、兵庫のそれが動きに転じた時のイメージが鮮やかに脳裏に浮かぶ。2024/04/23 10:36:16105.法介◆T3azX0Hk1U48a8n斬りつければ、間違いなくこっちが斬られる。2024/04/23 10:36:34106.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそう悟った武蔵は、「やめた! やめた! 勝負なんて馬鹿ばかし。 やめだやめだ! 又八! 温泉にでもつかりにいこうぜ!」そういって刀を鞘に納めて振り返ってその場を去ろうとした。2024/04/23 10:37:24107.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその時、兵庫が言った。2024/04/23 10:37:36108.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「俺も丁度温泉に浸りにいくところだったんだ 良い温泉場がある、ついて来い」2024/04/23 10:37:46109.法介◆T3azX0Hk1U48a8n今、世間を騒がせている武蔵という剣豪が、どれ程の人物なのか興味深々だった兵庫。剣を交える事は無かったが、武蔵の実力は今まで出会った武芸家の中でトップクラスであることは、十分観じ取っていた。というか、自分と同じオーラを武蔵に感じていた。2024/04/23 10:38:01110.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれは間違いでは無かった。辿りついた温泉で子供のように触れ合う武蔵と兵庫の姿に又八は嫉妬を感じる程にあっけにとられていた。2024/04/23 10:38:13111.法介◆T3azX0Hk1U48a8n兵庫の方がいくつか年上にあたるだろう。まるで弟のように愛着を持って「武蔵!」と呼べは「兵庫さん!」と敬意を持って兄を慕うかのような武蔵。ふたりの絆が深く結ばれた一日だった。2024/04/23 10:38:24112.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその後、又八と武蔵は兵庫のはからいで柳生の里にしばらくお世話になることになった。2024/04/23 10:38:36113.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその時期、柳生の里には江戸柳生から丁度、柳生十兵衛が遊びに来ていた。十兵衛は宗矩の息子で兵庫はその宗矩の兄の息子で二人は従兄弟の関係にあたる。2024/04/23 10:38:51114.法介◆T3azX0Hk1U48a8n兵庫や十兵衛、宗矩やその父、石舟斎、皆後世で小説や映画の主役として描かれる程の剣豪達で、それ以外にも柳生宗章や柳生連也斎など、柳生という一門からは、同時期に沢山の剣豪が存在した。これは歴史上他に類を見ることが無い。2024/04/23 10:39:04115.法介◆T3azX0Hk1U48a8nなぜそこまで沢山の剣豪が柳生から生まれたかと言えば、それは柳生の剣術が単なる剣術に止まらず、仏法思想という深い思想によって築かれた優れた剣術だったからである。2024/04/23 10:39:23116.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「十兵衛、面白い奴を連れて来たぞ 竹刀を交えてみろ」2024/04/23 10:39:35117.法介◆T3azX0Hk1U48a8n兵庫がそう言って武蔵を紹介した。兵庫の見立てでは、武蔵の実力は、十兵衛とほぼ互角。十兵衛にとっても良い刺激になるだろうと、道場で二人に一戦交えさせた。2024/04/23 10:40:08118.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「面白い、お前なかなかやるじゃないか」2024/04/23 10:40:43119.法介◆T3azX0Hk1U48a8n十兵衛の剣の腕前は柳生の中でも郡を抜いており、わざわざ江戸から柳生の里まで遊びに来るのも、兵庫との稽古が目的であった。十兵衛の相手が務まるのは、柳生と言えども石舟斎に匹敵する強さと言われた兵庫ぐらいしか居なかった。2024/04/23 10:40:56120.法介◆T3azX0Hk1U48a8n十兵衛と武蔵の稽古試合は、結局勝負がつかないまま終わった。2024/04/23 10:41:15121.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその頃、十兵衛が去った江戸城では、「十兵衛はどこじゃ? 十兵衛を呼べい!」と、退屈そうに窪田正孝似の将軍家光が、十兵衛を探し回っていた。十兵衛は家光の剣術相手として家光とは幼少の時から、兄弟のようにして育った。2024/04/23 10:41:35122.法介◆T3azX0Hk1U48a8n柳生新陰流本家の道場と隣り合わせの敷地に法華道「空観寺」がある。2024/04/23 10:47:06123.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロも来日中は、アドバンと一緒にこの寺に寝泊りしている。仲の良い陽次郎もアフロの来日中は、実家ではなくアフロと一緒に寺に寝泊りしている。2024/04/23 10:47:30124.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「こらぁ! アフロ! お前また居眠りこいておるな!」2024/04/23 10:47:42125.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロと陽次郎は、事あるごとに巌空和尚の説法も聞かされる。2024/04/23 10:47:57126.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「陽次郎、さっき和尚が言ってた当体蓮華と比喩蓮華って何がどう違うのか解ったか?」和尚は「法華経」で説かれる当体蓮華と比喩蓮華の説法をしたようだが、どうもアフロには難しい話だったようだ。2024/04/23 10:48:21127.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「比喩蓮華ってのは喩えを用いることで理解に至る。 要するに因と果の関係だろ。 当体蓮華ってのは喩えではなく因と果が同時に 同体で存在するってことだろ」2024/04/23 10:48:41128.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「どう違うんだ?」2024/04/23 10:48:56129.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「比喩蓮華ってのは因果関係になるから 時間の流れがそこには生じる。 因を元として果を得るってな」2024/04/23 10:49:21130.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「なる程」2024/04/23 10:49:31131.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「当体蓮華ってのはその因と果が 同時に同体で存在するって訳だから、 そこには時間の流れが無いってことになるだろ」2024/04/23 10:49:58132.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ほうほう、それがどうかするのか?」2024/04/23 10:50:23133.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「時間の流れが生じない空間ってどんな空間だと思うよ?」 アフロが首をかしげて返答した。「俺には想像がつかん・・・」2024/04/23 10:50:39134.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「現在と過去と未来が 一瞬の中に同時に存在するって 和尚が言ってただろ」2024/04/23 10:51:06135.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「あー、そんな事いってたな和尚」2024/04/23 10:51:33136.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「比喩蓮華が今世で仏に成ったお釈迦様で、 当体蓮華が無始無終の三身如来って奴だろ」2024/04/23 10:51:50137.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「それは覚えてるんだ 始成正覚っつうんだろ。 今世で仏に成ったお釈迦様のことを。 仏に成ったんだからそれで良くね?」2024/04/23 10:52:15138.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「時間の流れの中の悟りは真実の悟りじゃないんだ」2024/04/23 10:52:30139.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「なぜ? 俺ら時間の流れの中で生きているんだぜ?」2024/04/23 10:52:44140.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「いや、違う。 明日、もし大地震が起きるとして 誰がそれを予知しえる?」2024/04/23 10:53:08141.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「2年後に倒産すると分かてる会社に誰が入社する?」2024/04/23 10:53:21142.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそう言って説明する陽次郎にアフロが聞いた。2024/04/23 10:53:43143.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「それを予知しえるのが当体蓮華ってことなのか? ええー! それってもの凄い事じゃん! 相手の攻撃を事前に予知できちゃう訳だろ?」2024/04/23 10:54:09144.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「まぁー、お前の立場に当てはめて言えば、そういうことだな」2024/04/23 10:54:26145.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロは戦闘機乗りである。瞬時の判断が要求される究極の戦闘空間において、相手の動きを事前に予知出来るということの有利性が即座に頭に浮かんだ。2024/04/23 10:54:39146.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「剣術だって同じだよ。 相手の剣の動きを予知出来る有利性。 それを幾度と無く経験してきたから、 俺にはこの当体蓮華の意味が良く解かる」2024/04/23 10:54:58147.法介◆T3azX0Hk1U48a8n柳生新陰流は、柳生宗矩が仏教の「禅」の教えを剣術に取り入れて生み出した「剣禅一如」というそれまでの剣術には無い、全く新しい剣術スタイルである。剣に対する考え方が全く異る。2024/04/23 10:55:19148.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれまでの剣豪達が目指したのは「天下無敵の剣」である。柳生も「天下無敵の剣」として当時、日本中にその名を轟かせた。しかし柳生の言う「天下無敵」の意味は、それまでの「敵を倒す無敵」ではなく、敵を敵として認識しなければ、そもそも敵など存在し得ないといった意味での「無敵」なのである。2024/04/23 10:55:35149.法介◆T3azX0Hk1U48a8n仏法では、善人も悪人も実際のところいないと説く。自身が勝手に自身の価値観で善人や悪人を造りだしているに過ぎないと説かれている。これは認識論にもとづく真理(無我・無自性)である。2024/04/23 10:55:48150.法介◆T3azX0Hk1U48a8n自身が相手を敵と見なさなければ、剣を抜くまでも無い。それ以前に戦いが起きない。戦国の世までひっきりなしに起きていた戦(いくさ)が、徳川の時代に入ってぴたりと無くなり、平穏な世の中が300年も続いた。それが仏法を剣術に取り入れた柳生の「天下無敵の剣」の功績である。2024/04/23 10:56:02151.法介◆T3azX0Hk1U48a8nただ人を殺(あや)めるだけの為の道具であった刀を、精神鍛錬の道具に変え、観る者を魅惑する芸術の域にまでその美を極めた「真剣」へと道を開いた柳生宗矩の剣に対する想いと、それを極めた「道」である。2024/04/23 10:56:15152.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンはこの「柳生の里」で生活する中でそう言った事を深く理解していった。2024/04/23 10:56:35153.法介◆T3azX0Hk1U48a8n自分が武蔵になった夢を見たあくる日、アドバンは寺の掃除をしていた。2024/04/23 11:00:25154.法介◆T3azX0Hk1U48a8nいつもは閉まっている部屋の扉が少し開いているのに気付き、掃除をしようと何気にその部屋の扉を開けて入ってみて驚いた。2024/04/23 11:00:37155.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「こ、これは・・・」部屋の中央に畳10畳程のジオラマが造られてNゲージの線路がジオラマ内を無数に走っていた。部屋の棚にはNゲージの列車が綺麗に並べられており、その数は数え切れない程の量だった。2024/04/23 11:00:54156.法介◆T3azX0Hk1U48a8nNゲージ(エヌゲージ)とは、レールの間隔(軌間)が9mmで縮尺1/148 - 1/160の鉄道模型規格の総称である。2024/04/23 11:01:06157.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「すごい! これは英国鉄道のClass800じゃないか こっちにはニューヨーク・セントラル鉄道の E7Aもある」2024/04/23 11:01:17158.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそこに巌空和尚が入って来た。2024/04/23 11:01:28159.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「和尚の趣味なんですか?」 アドバンが尋ねた。2024/04/23 11:01:41160.法介◆T3azX0Hk1U48a8n実は、これらは和尚の甥にあたる雄一郎が子供の頃から鉄道模型が大好きで、職業上妻を娶らなかった巌空がいつも可愛がってた雄一郎の為に、造ってあげた雄一朗の趣味の部屋であった。2024/04/23 11:01:55161.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「お前さんも好きそうだな、Nゲージ」2024/04/23 11:02:16162.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンのワクワク感を見れば誰でもそう思ったであろう程に彼は目を輝かせてNゲージを眺めていた。2024/04/23 11:02:29163.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「走らせてみても良いぞ」「いいんですか!」2024/04/23 11:02:45164.法介◆T3azX0Hk1U48a8n嬉しそうにアドバンが好みの列車をレールに配置して、ジオラマのスイッチを入れた。2024/04/23 11:03:00165.法介◆T3azX0Hk1U48a8n腰を落とし、列車の目線で走るゲージを一生懸命眺めているアドバンの姿が、巌空和尚には雄一朗の姿とかぶって見えた。2024/04/23 11:03:44166.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「あいつも帰ってくるとそんな風に飽きもせず何時間も眺めているんだよ」2024/04/23 11:03:54167.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその気持ちがアドバンには良く分かる。そんなアドバンに和尚が言った。2024/04/23 11:04:12168.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「北九州に雄一朗が良くいく鉄道模型の有名な店がある 時間を作って、お前さん見に行ってみるといい」「良いんですか、是非行って見たいです」2024/04/23 11:04:29169.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは早速時間を調整して翌日、その鉄道模型の店に行くために北九州を訪れた。通訳役のアフロは連れずに変わりに補聴器タイプの和英変換機を耳に付け、英和変換はスマホソフトを使う事にした。2024/04/23 11:04:43170.法介◆T3azX0Hk1U48a8n北九州の小倉駅から少し離れたビルの一階の店舗の中にその店はあった。2024/04/23 11:04:55171.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンがその店に入ろうとしたその時、怪しげな黒塗りの二台の外車が狭い路上に勢い良くなだれ込んで無造作に二台同時に止まった。2024/04/23 11:05:07172.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそして車からそれぞれ銃を持った男が飛び出して、アドバンの直ぐそばにいた一人の男に向けて二人同人に銃を構えた!2024/04/23 11:05:20173.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは即座にコートの中から二丁の銃を両手で抜いて、そのそばに居た男をかばい、二人の銃を構える男に両手の銃をそれぞれ向けて仁王立ちで構えた。2024/04/23 11:05:32174.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその緊張が張り詰めた空間を割って、鉄道模型店の店の扉が開いき、中からグレーのロングコート姿の小栗旬似の大柄で、長髪をオールバックに流してレイバンのサングラスをかけた怪しげな風貌の男が出てきた。2024/04/23 11:05:45175.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「お前ら何やってんだ?」2024/04/23 11:05:56176.法介◆T3azX0Hk1U48a8n大声で叫ぶわけでもなく、小声でつぶやくでもなく、中音でしかも遠くまで響く存在感のある声だった。2024/04/23 11:06:28177.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ゆ、雄一郎さん!」ふたりの襲撃主が声をそろえて気まずそうに言った。そして、そばにいたアドバンに、「お前何者だ? そのぶっそうな物をまずはしまおうや」2024/04/23 11:06:49178.法介◆T3azX0Hk1U48a8nと言うと、アドバンは答えた。「俺は国際警察だ」「国際警察?って、銭形警部かよ・・・ ここは日本なんだ。 日本には日本のやり方ってのがあるんだよまずは、 そいつをしまいな」2024/04/23 11:07:09179.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその男が語りかける言葉の一つ一つには説得力があった。2024/04/23 11:07:22180.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは彼の指示に従い銃をしまった。そしてアドバンがかばっていたおびえた男に向かって、雄一郎は言った。「龍二。お前今度は何をしでかした? 鬼頭会さんが銃まで持ち出したんだ ただ事ではすまねーぞ、お前」2024/04/23 11:07:36181.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「ゆ、雄一郎さん・・・助けて・・・」「助けてやりたさ、俺だって 助けてやれるもんならな・・・ しかし、鬼頭会さん凄く怒ってるみたいだし、無理かもね・・・」2024/04/23 11:07:52182.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「そ、そんなー・・・」「健造! 太一! 取り合えずこいつは俺が預かる こいつから詳しい事情を聞いとくから、 この一軒は俺に任せてくれないか?」2024/04/23 11:08:12183.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「雄一朗さんがそう言うのなら・・・仕方ねぇ、お願いしやす」二人は銃をしまい、車に乗り込むとその場をそそくさと去っていった。2024/04/23 11:08:26184.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「龍二、お前この店に来たんだろ まぁ中でゆっくり話そうや」「お前さんももしかしてこの店に?」「あ、ああ」「じゃあ、お前もついて来い」 三人はぞろぞろと店の中に入っていった。2024/04/23 11:08:43185.法介◆T3azX0Hk1U48a8n一旦、CMが入ります。https://youtu.be/1To_7__k6WU2024/04/23 11:09:44186.法介◆T3azX0Hk1U48a8n店内はここのビル一階の総面積を占めているのでかなり広い。店の奥には巨大なジオラマも造られていて模型列車が数台そのジオラマ内を勢い良く駆け巡っている。2024/04/23 11:10:06187.法介◆T3azX0Hk1U48a8n初めてこの店を訪れたアドバンは、商品棚の豊富な品揃えに関心するように見入っている。雄一郎と龍二なる人物は、奥のジオラマを眺めながらコーヒーが楽しめる喫茶コーナーに腰掛けて、「マスター、コーヒー二人分頼む!」と雄一郎がこの店の常連客と分かる親しげな口調でマスターにオーダーを入れた。2024/04/23 11:10:36188.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「で、何をしでかしたんだ 詳しく話してみろ」2024/04/23 11:10:48189.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一郎がそう言うと、龍二は事の成り行きを語りだした。そんな二人には全く無関心に、ひたすらショウケースの中のNゲージをなめまわすような視線でその一つ一つを鑑賞しているアドバン。2024/04/23 11:11:03190.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそんなアドバンの様子もたまに横目で確認しながら龍二の話に聞きいっている雄一郎。2024/04/23 11:11:17191.法介◆T3azX0Hk1U48a8n一通り話を聞き終えて、「そりゃ、鬼頭会さんが怒るのも無理はないな」そういって、龍二が反省に至るように、物事の道理を解かり易く諭すように語る雄一郎。2024/04/23 11:11:33192.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「俺がついていってやるから、一緒に鬼頭会に頭下げに行けるか?」「雄一郎さんが一緒なら・・・」「よし分かった、じゃあこれでこの件はお終いだ」「おーい、そこの赤毛の兄ちゃん!」 商品を眺めていたアドバンが俺のことかと振り向いた。「気に入ったゲージがあったら、持ってきてここで走らせて良いんだぞ!」 え、そういう事なんだと理解したアドバンは、自分のお気に入りのゲージを持ってジオラマコーナーにやってきた。2024/04/23 11:11:55193.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「FEF-3 蒸気機関車じゃないか 通だねー」アドバンが持ってきたゲージは、アメリカのユニオン・パシフィック鉄道の FEF-3 蒸気機関車だった。それをジオラマにセットするとスイッチを入れて走らせた。2024/04/23 11:12:09194.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「お前さんも一緒にコーヒー飲みながら鑑賞に浸ろうぜ」 そういって、席に招かれたアドバンは言われるままに着席し、コーヒーを頼んだ。「で、お前さん名前は何て言うんだ?」 アドバンが自分の名を告げると、「何か聞いた名前だぞ・・・」 雄一朗は、アフロがアメリカの友人を連れて来日すると聞いていた。その時聞いた名前がそうだったことに気付いて、「あー、もしかしてアフロのアメリカの友人の?」 アドバンがうなずいた。アドバンはアドバンで思っていた。(この人物、どっかで出会った気がする・・・) ああー!という顔で記憶が蘇った。(昨日みた夢に出てきた兵庫さんだ・・・)2024/04/23 11:12:41195.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一朗の風貌も雰囲気も放つ独特のオーラも、まさに夢で見た柳生兵庫そのものだった。2024/04/23 11:12:57196.法介◆T3azX0Hk1U48a8n まるで昨日の夢の続きかと思う程、二人は打ち解けて鉄道模型話で盛り上がった。龍二も鉄道模型が大好きで良くこの店に来ていた。雄一朗とはここで知り合って親しくなっていった。 最初、雄一朗が刑事だと知って焦ったが、雄一朗は刑事ではなく一人の人間として龍二と向き合ってくれた。兄弟がいない龍二にとって雄一朗は兄のような暖かさを感じることが出来る心を許せる唯一の存在だった。2024/04/23 11:13:14197.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは、昨日、空観寺の雄一朗のジオラマの部屋をのぞかせてもらった話をした。「あの部屋いいだろ。自由に使ってくれ」そう言ってアドバンとは分かれて、龍二を連れて鬼頭会の事務所がある小倉南区に車を走らせた。2024/04/23 11:13:39198.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一朗は今、北九州の暴力団対策本部長として北九州県警に勤務しているが、本来は警視庁に所属している。そして警視庁の剣術特別指南役という立場にある。2024/04/23 11:14:09199.法介◆T3azX0Hk1U48a8n日本の警察には柔道と剣道の習得が義務ずけられている。そして一般で行われている全国剣道大会にも県警を代表して出場したりもしている。雄一朗は個人の部で十連勝と出場すれば必ず優勝していた。さすがに十連勝もしてしまうと大会側から運営側にまわって欲しいとの要望で大会特別顧問という肩書きを頂いている。2024/04/23 11:14:21200.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそして、全国の県警剣道部から剣道の指導要望が後をたたず、事ある度に各県の県警剣道部を指導して廻っている為、警視庁から剣術特別指南役という今までに無かった新たな肩書きが雄一朗の為に設けられた。2024/04/23 11:14:38201.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそうこうしている間に、車は鬼頭会本部事務所に到着した。2024/04/23 11:14:53202.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一朗は自分の家にでも入っていくかのように当たり前のように事務所に入っていく。鬼頭会の構成員達は組長でも迎えるかのように雄一朗に会釈して彼を迎える。その後から背中を丸めてびびりながら龍二がついて来る。2024/04/23 11:15:07203.法介◆T3azX0Hk1U48a8n 事務所のドアを開けて雄一朗が言った。「健造と太一はいるか?」 事務所の中から、健造と太一が現れた。「雄一朗さんこちらにどうぞ」2024/04/23 11:15:22204.法介◆T3azX0Hk1U48a8n健造と太一、雄一朗と龍二の4人が奥の来客の間に入っていった。健造と太一はここの事務所の中堅幹部で、この二人が若手の構成員を仕切っている。2024/04/23 11:15:35205.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「こいつから事の成り行きは聞いたよ お前らが怒るのも無理は無い 俺からもこっぴどく言って聞かせた 本人も深く反省している なぁ、龍二」2024/04/23 11:15:53206.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一朗がそう言うとソファーに腰掛けていた龍二が、床に正座して土下座して謝罪した。2024/04/23 11:16:12207.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「健造、太一、これでも気が治まらねぇってのなら、 好きなだけこいつを殴り飛ばしな ただな、心から反省してる奴を 殴り飛ばす意味ってあるのかなぁ? って俺は思うぜ」2024/04/23 11:16:28208.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一朗がそういうと、健造と太一も確かにそうだなと納得した顔で、「雄さんの言うとおりです 間違いに気付いて二度とこんななめた真似やらかしてくれなきゃ、それでいい」「じゃ、そういう事で今回の件はこれでお終いってことでいいな」そういって龍二を連れて事務所の客間を出でたところに鬼頭会の会長が幹部連中を引き連れて帰ってきた。2024/04/23 11:16:47209.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「やあぁ、雄ちゃん今日は何事だい?」「いや、対した用事じゃない 会長さんの耳に挟む程の用事じゃない なぁ、健造、太一」「はい!」 そう言うと、「せっかく来たのなら、茶でも飲んでいかんか?」 と会長が雄一朗と別れ惜しそうに誘ってくる。「こいつを送り届けてやらないといけないから、今日はこれで失礼するよ」 そういって雄一朗と龍二の二人は、事務所を後にした。2024/04/23 11:17:39210.法介◆T3azX0Hk1U48a8n暴力団に対して目には目をといった考えで、強気で力で抑え込もうとするのがこれまでの警察のやり方だった。しかし、雄一朗は違った。「敵を敵として認識しない」という柳生新陰流の流儀から雄一朗は、彼らと敵対するのではなく、彼らの理解者となって親身に相談に乗ったり、やっかいなトラブル事の仲介に入ったりして彼らとの距離を縮めていった。そんな雄一朗が口癖のように言う言葉がある。彼が今回、北九州暴力団対策本部の本部長挨拶で言った言葉でもある。2024/04/23 11:17:56211.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「力で力を抑え込んでも、何も解決には至らない 大事なことは、理解しあう事である 彼らには彼らの生き様があるんだ それは一般人とは、少し違った価値観だが、 なぜ世間様と違った価値観になってしまったかを 我々が理解することが大事なんだと私は思う 構成員一人一人の歩んできた人生を理解して始めて ああ、だからこういった価値観の中で生きているんだなと理解に至る この問題は彼らにあるんじゃ無い、我々の問題である 国民が安心して生活が出来る世の中を 我々警察官が如何にして築いていけるか、 我々の人間としての器が試されているんだと私は思う」2024/04/23 11:20:18212.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその言葉を先頭に立って身をもって実践しているのが全国暴力団対策本部長、柳生雄一朗という男である。2024/04/23 11:20:34213.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは、空観寺に帰ると鉄道模型店で買ってきたお気に入りのFEF-3 蒸気機関車をジオラマにセットして走らせた。2024/04/23 11:20:50214.法介◆T3azX0Hk1U48a8nリクライニング・チュアーに腰掛けて、走っているゲージを飽きもせず眺めている。心が落ち着く空間に身をゆだね、次第にアドバンは深い眠りに入っていった。2024/04/23 11:21:03215.法介◆T3azX0Hk1U48a8n気がつけば、アドバンは再び柳生の里に居た。柳生の里と言っても兵庫のいる時代の柳生の里である。2024/04/23 11:21:18216.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「武蔵、また遊びに来たか」兵庫は嬉しそうに武蔵と酒を交わした。2024/04/23 11:21:40217.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「武蔵、剣術は楽しいか?」兵庫に聞かれて、武蔵はしばらく考え、これまでの自分を振り返った。宮本村を出て、己の名を挙げる為に必死で戦ってきた。何人斬り倒して来ただろう。負ければ自分の命は無い。手段も選ばなかった。2024/04/23 11:22:08218.法介◆T3azX0Hk1U48a8n時には砂を相手の顔にあびせ、時には腕に噛み付き、生きるか死ぬかの殺し合いを幾度もなく演じて来た。2024/04/23 11:22:22219.法介◆T3azX0Hk1U48a8n殺した対戦相手の娘から、「お父さんを帰して!」と翌日石を投げつけられた事もあった、いきなり後ろか「兄の仇、覚悟しろ!」と短刀を構えて襲い掛かって来た青年も居た。2024/04/23 11:22:39220.法介◆T3azX0Hk1U48a8n毎晩そういった殺した対戦相手の子供や兄弟、親たちのうらめしそうににらみつける顔にうなされ、心が安堵する日が無かった。2024/04/23 11:22:58221.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしかし、ここ柳生の道場で十兵衛や兵庫と打ち合う剣術は、心の闇が晴れ、清清しい気持ちで心地よい汗を流せた。そして何よりもただ無心に竹刀を振ることで、時間がたつのも忘れた。ただ無心に剣を振り回し気がつけば、へとへとでくたくたで道場の真ん中で大の字になって天井を眺めていた。2024/04/23 11:23:15222.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそんな時、どこからともなく声がしてくる。「我に生きるな 無心に生きろ」2024/04/23 11:23:34223.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしょぼくれた声だが、真理に満ちた声。武蔵はそれが今は亡き柳生石舟斎の声だと思っていつも聞いていた。そして勝手に親しみを込めて「じいさん」と呼んでいた。2024/04/23 11:23:54224.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「じいさん、剣術って何だ?」最初のうちは、その返事は返ってこなかった。しかし、最近その答えが武蔵の頭に微かに聞こえてくる。2024/04/23 11:24:15225.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「心じゃよ。 剣術は心」「武士の魂?」 はっ!と目が覚めた。「また雄一朗さんに会いたいな、、、」 そう思いながら爽快に走るFEF-3 蒸気機関車を「無心」で楽しむアドバンだった。2024/04/23 11:24:48226.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宮本武蔵が二天一流の奥義を記した「五輪の書」が世に残っている。2024/04/23 11:25:10227.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宮本武蔵の二天一流は、「太刀はひろき所にてふり、脇差はせばき所にてふる事、先ず道の本意也。此一流におゐて、長きにても勝ち、短きにても勝つ」とあるように、〝勝つ〟という1点をただ合理的につきつめたところにある。2024/04/23 11:25:27228.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「五輪の書」も勝つことにおいて何が理にかなうものであり、何がかなわないのかを説いている。2024/04/23 11:25:42229.法介◆T3azX0Hk1U48a8n構成は地水火風空の5巻からなり、「地之巻」では兵法や二天一流の概略を、「水之巻」では太刀筋や剣術の極意を、「火之巻」では実戦に勝つための要諦を、「風之巻」では他流派との比較を論じ、最後の「空之巻」では二天一流の到達した境地をまとめている。2024/04/23 11:25:56230.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしかし、その最後の章は未完の章で終わっている。最後の章とは「空之巻」である。2024/04/23 11:26:11231.法介◆T3azX0Hk1U48a8n仏教で説かれる「空」は、空・仮・中の三観といった「仏の観かた」を凡夫が観じ取る心である。それを観じるには、まず凡夫の「我」に覆われた心から、我を取り払い無の心、すなわち「無我の境地」を築かなけれなならない。そして無我の先にある「空」を観じ取っていく。2024/04/23 11:26:42232.法介◆T3azX0Hk1U48a8nでは「仏の観かた」とはどういう見方なのか。アドバンは最近その事を考えていた。そんな時にある事件が起きた。2024/04/23 11:26:59233.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンがその事件を知ったのは、朝食がすんだ休憩のあい間で流れたTVのニュースだった。2024/04/23 11:27:14234.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「昨夜11頃、北九州の繁華街で宝石店に窃盗に入った男が逮捕されました」「男の名前は、山根龍二(27歳)で・・・」2024/04/23 11:27:28235.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(龍二?)振り返ってTV画面を見ると、あの龍二の顔が画面に映し出されていた。2024/04/23 11:27:46236.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの瞬間、龍二は、宝石店に窃盗に入った「犯罪者」として世間の人達に認識された。2024/04/23 11:28:03237.法介◆T3azX0Hk1U48a8n龍二が取り調べを受けている部屋に雄一朗が飛び込んで来た。「龍二! お前なにやってんだ!」2024/04/23 11:28:14238.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一朗の慌てふためいた顔を見て、龍二は雄一朗にすがり子供のように泣き出した。「雄さん! 俺・・・」「こいつは俺が取り調べをする」そういって取り調べを変わった雄一朗に龍二は全てを語りだした。2024/04/23 11:28:28239.法介◆T3azX0Hk1U48a8n龍二の生まれ故郷は佐賀で、兄弟のいない龍二は、母一人、子一人の母子家庭で育った。2024/04/23 11:38:12240.法介◆T3azX0Hk1U48a8n龍二の父親は家業を継いで農業の仕事を夫婦でやっていたが、その仕事に嫌気がさして龍二が生まれて直ぐに、都会にあこがれて家を出て行った。2024/04/23 11:38:33241.法介◆T3azX0Hk1U48a8n残された龍二の母親は毎日、体がクタクタになるまで一人で大変な農家の仕事をこなしながら女で一つで龍二を育てあげた。2024/04/23 11:38:48242.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそんな龍二も、田舎暮らしに嫌気がさし、都会にあこがれて今の人生に至っている。そんな母親から久しぶりに連絡があった。2024/04/23 11:39:09243.法介◆T3azX0Hk1U48a8n最近、体の調子がおかしくて病院で検査を受けたところ、癌が見つかった。さいわい早期発見で手術をすれば助かるという。2024/04/23 11:39:23244.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「手術ってお金かかるんじゃないのか?」「うん、100万くらいかかるのかな・・・」「お金あんのか?」「保険に入ってるから、大丈夫さ お前が心配することじゃないよ」2024/04/23 11:39:40245.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれを聞いて安心した龍二だったが、母親の様子が気になって暇を見て佐賀の実家に帰ってみた。2024/04/23 11:39:55246.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「思ったより元気そうで、安心したよ」「心配することは無いっていっただろ」 そういって夕食を用意してくれる母親の後ろ姿を眺めながら、 (母ちゃんまた年老いたなぁ・・・) と、龍二は思いながら母親が作ってくれる懐かしい料理をしみじみと味わった。2024/04/23 11:40:16247.法介◆T3azX0Hk1U48a8n翌日、母親が農作業に出かけている間、龍二がタバコを買いに出かけて実家の前にさしかかった時、龍二は思わず立ち止まって壁に身を隠した。2024/04/23 11:40:32248.法介◆T3azX0Hk1U48a8n その先で、近所のおばちゃんが二人して龍二の母親の話をしていた。「山根さん、癌だってね 保険にも入ってないっていうじゃない」2024/04/23 11:40:49249.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその会話を聞いた龍二は、母親にそれを問いただす事は出来なかった。自分に心配をかけまいと思う母親の気持ちが痛いほどわかるからだ・・・(母ちゃん、ごめん・・・)母親に何もしてあげれない自分が情けなかった。気がついたら金目になりそうな店舗に押し入っていた。2024/04/23 11:41:09250.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「馬鹿やろう。なんで俺に真っ先に相談しなかった?」「相談したかったよ だけどついこの前、雄さんに迷惑かけて申し訳なくて・・・」2024/04/23 11:41:26251.法介◆T3azX0Hk1U48a8n人は見方によって「悪人」と認識されたり「善人」と認識されたりする。その善人・悪人の善悪の基準はおおむね世間の常識による所が大きい。2024/04/23 11:41:44252.法介◆T3azX0Hk1U48a8n世間の常識を「縁」としてその人の人物像が顕れる。今回の事件で龍二は悪人として認識されている。しかし、母親思いの龍二もまた紛れもない龍二である。母親を縁とすれば優しい龍樹が顕れる。どちらも龍二である。ただ「縁」によってその顕れ方が異なって顕れる。2024/04/23 11:42:04253.法介◆T3azX0Hk1U48a8n取り調べが終わった翌日、雄一郎が龍二に一冊の本を差し出した。「この本を佐賀のおふくろさんに送ってあげな」龍二が手に取った本は、近藤誠著書の「もうがんでは死なない」とい本だった。2024/04/23 11:42:42254.法介◆T3azX0Hk1U48a8n利益主義にそまった現代医学の歪んだ実体がその本には綴られている。早期発見で癌は助かるといって、手術を進めてくる医者。しかし、癌は、本物の癌と放っておいても問題のない「癌もどき」とがあると近藤氏は言う。早期発見で助かったという患者さんは、本来切らなくてもすんだ癌だったから助かったのであって、本物の癌であれば、早期発見で切り取っても助からないので、手術をする意味は無いというのだ。では、医者は何で手術を奨めてくるのか。興味がある方は氏の書籍を読んでみると良いと思います。他にも「医者に殺されない47の心得」など、なるほどと納得させられる書籍を多数出版されています。2024/04/23 11:42:55255.法介◆T3azX0Hk1U48a8n 雄一郎は言った。「龍二、賢くないと大事な人は守れないぞ」2024/04/23 11:43:16256.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれは、頭が良いとか悪いとかの話ではなく、生きる事に賢くあれという雄一郎の人生の助言であった。2024/04/23 11:43:35257.法介◆T3azX0Hk1U48a8n法務省が公表した2020年版の犯罪白書では、よく言われる日本の治安の良さを数値的に裏付ける統計が掲載されている。2024/04/23 12:58:13258.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「諸外国における犯罪動向」によると、2017年に日本で発生した殺人事件は307件。フランス、ドイツ、英国は800件超、米国は日本の56倍の1万7284件と驚くべき数字だ。殺人の発生率(人口10万人当たりの発生件数)は、米国5.3件、フランス1.3件、英国1.2件、ドイツ1.0件に対して、日本はわずか0.2件だった。2024/04/23 12:58:24259.法介◆T3azX0Hk1U48a8n統計は国連薬物・犯罪事務所(UNODC)が実施している「犯罪情勢等に関する調査」に依拠したもので、犯罪情勢を検討する上で重要な犯罪類型である殺人、強盗、窃盗、性暴力について、日本と欧米の計5か国の2013~17年の数値をまとめている。2024/04/23 12:58:35260.法介◆T3azX0Hk1U48a8n主要国の殺人発生率(人口10万人当たり発生件数)https://www.nippon.com/ja/ncommon/contents/japan-data/387777/387777.png2024/04/23 12:58:47261.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「強盗」の直近の発生率をみても、日本の1.8件に対し、フランス154.3件、ドイツ47.0件、英国118.7件、米国98.6件と極端な差がある。(日本のみ16年のデータで、それ以外の国は17年)強盗発生率(人口10万人当たり発生件数)https://www.nippon.com/ja/ncommon/contents/japan-data/387778/387778.png2024/04/23 12:58:59262.法介◆T3azX0Hk1U48a8n【引用サイト】https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00888/#:~:text=%E3%80%8C%E8%AB%B8%E5%A4%96%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E5%8B%95%E5%90%91,%E3%82%8F%E3%81%9A%E3%81%8B0.2%E4%BB%B6%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%822024/04/23 12:59:11263.法介◆T3azX0Hk1U48a8n日蓮法華道『空観寺』その本堂でアドバンが和尚に問うた。2024/04/23 12:59:24264.法介◆T3azX0Hk1U48a8n仏教では、「殺人」をどう考えますかと。2024/04/23 12:59:41265.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「縁起」を真理として説く仏教にあっては、殺人という現象が生じる原因や条件は、単一の個人の責任だけで決まるわけではなく、社会的な要素や環境、個人の行動や心理的な状態など、多くの要因が複雑に絡み合って生じているとされます。2024/04/23 12:59:55266.法介◆T3azX0Hk1U48a8nまた殺人事件が起こる原因として、被害者や加害者の過去の経験や状況、社会的な環境、心理的な状態、行動の影響などが挙げられます。また、殺人事件に関わる人々が、その行動に責任を持つことも強調されます。2024/04/23 13:00:05267.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしかし、仏教の縁起という考え方から見ると、個人が犯した行為に対して、その個人だけが責任を持つという考え方は単純化された見方であり、縁起の連鎖の中で生じた現象として、多くの要因が絡み合って事件は起きたと捉えます。2024/04/23 13:00:18268.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしたがって仏教では、殺人という現象についても、個人の責任があることは否定されないが、それだけにとどまらず、社会的な要素や環境、個人の行動や心理的な状態など、多くの要因が複雑に絡み合っていることを認識する必要があるとする。2024/04/23 13:00:29269.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその話を聞いてアドバンの脳裏に昨日、巌空和尚が説いて聞かせた「縁起なるが故に空」という言葉が浮かんだ。2024/04/23 13:00:43270.法介◆T3azX0Hk1U48a8n仏教の重要概念である「空」は、初期仏教では「無我・無自性」として説かれた。2024/04/23 13:00:55271.法介◆T3azX0Hk1U48a8n初期仏法では自我意識こそが全ての悩み、即ち煩悩の根源であると説く。2024/04/23 13:01:11272.法介◆T3azX0Hk1U48a8nでは自我意識はどうして生じるかと言えば、突き詰めれば肉体がある限り自我意識は必ず生じる。つまり自我意識は肉体から生じるもので、その自我意識の完全なる消滅を目指そうとするならば、肉体の寂滅(死)に至るしかない。2024/04/23 13:01:22273.法介◆T3azX0Hk1U48a8n生前にこの「無我・無自性」の境地に至った者は肉体への執着から離れ、死後に魂は天上界へと向かう。そうでない者達は肉体への執着ゆへに再び肉体を伴って生を受け六道を輪廻転生する。2024/04/23 13:01:33274.法介◆T3azX0Hk1U48a8n天上界とは「初禅天・二禅天・三禅天・四禅天」の四禅天のことである。2024/04/23 13:01:43275.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「禅」は本来、この四禅天へ意識を向かわせる教えである。2024/04/23 13:01:55276.法介◆T3azX0Hk1U48a8n天上界がどういった世界なのかと言えば、解かりやすい言葉で言えば、仏が住む世界と言うことである。死んだ人のことを仏様と呼ぶ日本の文化はあながち間違ってはいない。ただ仏といっても菩薩や如来と様々である。禅定の肉体を伴いながら意識を解脱へと向かわせる修行者の境涯を声聞とも言うし、修行で解脱に至った境涯を縁覚とも言う。2024/04/23 13:02:05277.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその仏の世界観(天上界)を詳しく説き明かしているのが大乗仏教で説く「空」である。2024/04/23 13:02:17278.法介◆T3azX0Hk1U48a8n大乗が説く「空」は、仏道者の境涯を覚りの段階に準じて四っつに分ける。いわゆる、声聞・縁覚・菩薩・仏の四聖である。2024/04/23 13:02:29279.法介◆T3azX0Hk1U48a8n仏道に入っても未だ実体思想から抜け出る事が出来ず「空」を実体思想でしか理解出来ないでいる境涯を声聞と言う。2024/04/23 13:02:39280.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「空」を説明するのに、「車をパーツに分解したら車の姿は無くなります」とか、「テーブルの脚を外したら天板と棒になってテーブルは消滅します」とか言う人がいます。2024/04/23 13:02:50281.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこういう空を「分析する空」と言って〝析空〟と言います。2024/04/23 13:03:01282.法介◆T3azX0Hk1U48a8n空理を習得するにあたって最初に得られる理解(覚り)がこの〝析空〟です。2024/04/23 13:03:13283.法介◆T3azX0Hk1U48a8nここでの理解は、別に仏教でなくても世間一般の知識でも理解出来ます。2024/04/23 13:03:26284.法介◆T3azX0Hk1U48a8n物理や科学といった世俗における真理と同じ次元で説かれた「空」です。ここでの空は状態の「有る無し」を説きます。物理や科学と全く同じ見識で対象を捉えます。2024/04/23 13:03:43285.法介◆T3azX0Hk1U48a8nですからここでの真理(初期仏教で説かれた倶舎論)は、現代科学で説くところの真理と悉く一致します。2024/04/23 13:03:56286.法介◆T3azX0Hk1U48a8n巌空和尚の昨日の説法は、そういった「空」の話でした。今日、アドバンは和尚から更に縁覚が覚るという「体空」の説明を聞いた。2024/04/23 13:04:31287.法介◆T3azX0Hk1U48a8n龍二の件があってアドバンは、見る人が変われば同じ人物であっても悪人とも善人とも成り得る相依性縁起を学んだ。坂道を上から見たら下り坂。下から見たら上り坂の「相依性縁起」である。2024/04/23 13:04:44288.法介◆T3azX0Hk1U48a8n声聞が覚る「析空」を此縁性縁起と言う。こちらは科学における物質の時間経緯で起こる状態の変化を捉えた縁起です。阿含経典で説かれた「此れ有るが故に、彼有り」の此縁性縁起である。2024/04/23 13:05:03289.法介◆T3azX0Hk1U48a8n此縁性縁起によって客観が起き、相依性縁起で主観が起こる。2024/04/23 13:05:15290.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの主観と客観とに依って人間の認識は出来ている。人の認識=主観と客観2024/04/23 13:05:28291.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの二つの空を以て人間の「主観と客観」を空じて仏の空観に入る。2024/04/23 13:05:42292.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの辺でアドバンの脳ミソは既にオーバーヒートしていた。それを察した和尚が「今日はこの辺にしておこう」といって今朝の和尚の説法は終わった。2024/04/23 13:05:57293.法介◆T3azX0Hk1U48a8n <アフロ・Bison>航空自衛隊は、空からの侵略を警戒し防衛するという重要な役割を担っており、即応能力を常時維持しなければならない。2024/04/23 13:06:16294.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそして、任務を効率的にかつ安全に遂行するためには、高い能力を有するパイロットが必要である。2024/04/23 13:06:31295.法介◆T3azX0Hk1U48a8nパイロットのうち、特に高い機動性を有する戦闘機パイロットの場合、地上とは異なる特殊環境(高G、低圧、暑熱、三次元環境等)に曝されるため、これに耐えうるだけの身体的な健康、あるいは緊急時にも冷静に状況の変化に対応することができる情緒的な安定性を有していることが求められる。2024/04/23 13:06:42296.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその上で、パイロットは複雑かつ多数の情報を知覚、認識、予測し何が必要かを瞬時に正しく判断し、判断した行動を正確かつ円滑に航空機の操作として反映させなくてはならない。2024/04/23 13:06:55297.法介◆T3azX0Hk1U48a8n戦闘機パイロットとは、このように過酷な状況下で常に正しい判断が要求される大変な職業である。2024/04/23 13:07:20298.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアフロは今、鹿児島の知覧特攻平和会館に居た。2024/04/23 13:07:30299.法介◆T3azX0Hk1U48a8n去年来日した時、映画館で『永遠の0』を観てどうしても来てみたかった場所だった。2024/04/23 13:07:45300.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそこには、自分よりも更に若い18や19と言った未だ成人すらしていない若者達が、母や父といった愛しき人達へ綴った生々しい手紙が沢山展示されてあった。2024/04/23 13:08:22301.法介◆T3azX0Hk1U48a8nお国の為に天皇陛下万歳と叫び、機体もろとも敵艦に突っ込んでいくというあり得ないミッションを遂行した当時の日本の思想は完全に狂っていた。2024/04/23 13:08:40302.法介◆T3azX0Hk1U48a8n当時の世界状況にあって追い込まれた日本政府が、やむなく下した判断だったとはいえ、あまりにも智慧が足りなかった。2024/04/23 13:08:52303.法介◆T3azX0Hk1U48a8n神道には国民を救うべく仏の智慧が無かった。https://youtu.be/vOL8MnVVMmg2024/04/23 13:09:08304.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは武蔵の夢を良く見るようになった。武蔵となった自分が十兵衛と背中合わせで刀を構えて息を切らしている。2024/04/23 13:09:58305.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「十兵衛・・・」「武蔵・・・」 二人は意識の中で呼び合った2024/04/23 13:10:11306.法介◆T3azX0Hk1U48a8n そして「いくぞっ!」 の掛け声と共に、二人は一斉に刀を振りかざし、 群がる剣客達を次から次へと斬り倒していく。2024/04/23 13:10:31307.法介◆T3azX0Hk1U48a8n斬っても斬っても剣客は餌に群がってくるアリの群れのように次から次へと無限に湧いて出てくる。2024/04/23 13:10:42308.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしまいに力つき二人の剣豪は、アリの群れに埋もれて地中へと引きずり込まれていく。2024/04/23 13:11:10309.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「はぁ!」と目が覚めたアドバンにじいさんのあの声が聞こえてきた。2024/04/23 13:11:22310.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「刀を振り回せば、いつかは己が刀によって倒される 道を究めたいなら刀は抜くまでもないもの いかに刀を鞘から抜かずにおくか その為に我々は死に物狂いで剣を振る」2024/04/23 13:11:38311.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその夢の話を翌日、アフロに話して聞かせた。「不思議だな・・・俺も同じ夢を昨夜見た」アフロが見た夢では自分は柳生十兵衛だったと言う。2024/04/23 13:12:04312.法介◆T3azX0Hk1U48a8n曾我兄弟の仇討ちと赤穂浪士の討ち入りに並ぶ日本三大仇討ちの一つに、伊賀越の仇討ちというのがある。2024/04/23 13:12:16313.法介◆T3azX0Hk1U48a8n何それと思う方でも「荒木又右衛門」と言えばピンとくいるのではないでしょうか。2024/04/23 13:12:29314.法介◆T3azX0Hk1U48a8n小説や映画などでも描かれる又右衛門の「36人斬り」だが、これは誇張で実際に又右衛門が斬ったのは同じ大和郡山藩の上席剣術師範・河合甚左衛門(又五郎の叔父)と尼崎藩槍術師範・桜井半兵衛の2人である。2024/04/23 13:12:40315.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその荒木又右衛門が実践で振るった剣は柳生の剣であった。2024/04/23 13:12:54316.法介◆T3azX0Hk1U48a8n荒木又右衛門もまた、柳生新陰流の剣豪の一人。2024/04/23 13:13:05317.法介◆T3azX0Hk1U48a8n柳生の剣が実践で使われた史実は、但馬守(たじまのかみ)宗矩が46歳の時、大坂夏の陣で二代将軍秀忠の護衛に付いていた際、不意を突く形で襲って来た敵兵7人を瞬く間に斬り捨てた記録が残っている。2024/04/23 13:13:21318.法介◆T3azX0Hk1U48a8nが、しかし2024/04/23 13:13:38319.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれを遥かに上回る18人斬りを見せた柳生の剣豪がいる。宗矩の兄、柳生宗章である。2024/04/23 13:14:10320.法介◆T3azX0Hk1U48a8n弟、宗矩は、徳川家康に将軍家の兵法指南役として召し抱えられ、大和柳生藩初代藩主となり剣術の面では将軍家御流儀としての柳生新陰流(江戸柳生)の地位を確立した。2024/04/23 13:14:20321.法介◆T3azX0Hk1U48a8n兄、宗章は宗矩と共に徳川家康に召されたが宗章は仕官を断り武者修行の旅に出た。2024/04/23 13:14:31322.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその後、備前岡山の小早川秀秋に召抱えられ関ヶ原の戦いでは秀秋に近侍して警護の任についていた。2024/04/23 13:14:44323.法介◆T3azX0Hk1U48a8nやがて小早川家は改易され、宗章は伯耆国米子藩の中村一忠の執政家老・横田村詮に客将として迎えられる。村詮は、家老として優れた実力の持ち主だったが、彼を妬む同僚の策略で謀殺される。2024/04/23 13:14:56324.法介◆T3azX0Hk1U48a8nすると村詮の子、横田主馬助を総大将として横田家の遺臣二百余名が飯山城に立て籠もり、宗章も横田家への恩義に報いたいと横田方に加勢した。2024/04/23 13:15:11325.法介◆T3azX0Hk1U48a8n吹雪の中、数本の刀を差して無双乱舞を繰り出しまくった柳生宗章だったが、敵兵18名程を切り倒したところで用意した刀が全て折れ、最後は敵軍へと突撃して壮絶な戦死を遂げた。若干37歳だった。2024/04/23 13:15:23326.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗矩が剣術に仏教の教えを取り入れて剣禅一如の柳生の剣を完成させていった影には、そういった兄宗章への哀惜の念もあったであろう。2024/04/23 13:15:36327.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその話を巌空和尚から聞いたアドバンは、和尚との唱題行の時、宗章の事で頭が一杯になった。2024/04/23 13:15:49328.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章がどんな人物だったのか、どんな剣を繰り出したのか、どんな戦いだったのか、様々な宗章に関わる事が頭に浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返していた。2024/04/23 13:16:03329.法介◆T3azX0Hk1U48a8n座禅や瞑想では、頭の働きを止め「無」の境地を築く。しかし、日蓮法華道における勤行では、日頃の悩みや気になる事を考えながらお題目を唱えていく。2024/04/23 13:16:21330.法介◆T3azX0Hk1U48a8n唱えていくうちに「はっ!」と閃くことがある。それを「自体顕照」という。2024/04/23 13:16:53331.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「自らの体を照らし顕す」という意味で、御本尊という「境」に照らされて自らの体が智慧として顕われることを言う。日蓮はそのことを、「境の淵ほとりなく、深き時は智慧の水ながるる事つつがなし」と、御本尊の仏の十界という深い淵を、水がなぞる様に沿って流れていくように、凡夫の煩悩が仏の智慧を借りて悟りへと転じていく「煩悩即菩提」の姿であると言う。2024/04/23 13:17:11332.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンは唱題の中で「はっ!」と閃いた。2024/04/23 13:17:28333.法介◆T3azX0Hk1U48a8n柳生の里を始めて訪れたさい、真兵衛と交わした握手の場面が脳裏をよぎった。2024/04/23 13:17:44334.法介◆T3azX0Hk1U48a8nあの時の物凄い存在感。きっと柳生宗章という人物も真兵衛と同じような存在感を放つ人物なんだろうとアドバンは思った。2024/04/23 13:17:59335.法介◆T3azX0Hk1U48a8n気がつけばその夜、〝武蔵〟として、伯耆国米子藩にいた。2024/04/23 13:18:19336.法介◆T3azX0Hk1U48a8n伯耆国(ほうきのくに)は、現在の鳥取県の中・西部で、東を因幡、西を出雲、南は美作・備中・備後に接し、北は日本海に面している。2024/04/23 14:30:24337.法介◆T3azX0Hk1U48a8n標高90mの小高い湊山に約500年前に築かれた飯山城は、出雲の国境の重要な砦で戦国時代には、尼子氏と毛利氏が熾烈な奪い合いを繰り返した重要な拠点であった。2024/04/23 14:30:37338.法介◆T3azX0Hk1U48a8n山頂には本丸、その下に二の丸、三の丸が二段の石垣で築きあげられている。石垣の規模からしても、そこそこの規模のお城であったであろう本丸には、天守の礎石の跡が残っている。そこからは、米子の街を一望することが出来る。2024/04/23 14:30:57339.法介◆T3azX0Hk1U48a8n米子藩筆頭家老、横田村詮は柳生宗章よりも14程歳は上であったが宗章の古い弟子にあたる。村詮は主君中村忠一に宗章を推挙して召し抱えを願うつもりだった。2024/04/23 14:31:11340.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしかし、若干14歳の少年だった忠一は、歯に衣着せず意見をいう村詮を日頃から煙たがっていた。そこに一忠の側近である安井清一郎、天野宗杷らが村詮の優れた才覚を妬み、幼い藩主一忠を言いくるめ、慶事の際に村詮を亡き者にしようと陰謀を企て殺害した。村詮享年52歳であった。2024/04/23 14:31:29341.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれに激怒した村詮の子、横田主馬助と横田家に仕えていた家臣二百余名が主馬助を総大将として飯山城に立て籠もった。2024/04/23 14:31:47342.法介◆T3azX0Hk1U48a8n柳生宗章は従者の森地五郎八と共に村詮から客将として招かれていた。主馬助は宗章を客将であることを理由に飯山城から辞去するよう勧めた。2024/04/23 14:32:06343.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「宗章殿ほどの腕なら、どの城下町でも道場を開き、 柳生新陰流の看板を掲げることが出来きます こんなところで命を落とさせるようなことがあっては、 父上に申し訳が立ちません」2024/04/23 14:32:38344.法介◆T3azX0Hk1U48a8n主馬助は一族全滅を既に覚悟していた。それゆえに客将であり亡き父の剣術の師匠でもある宗章を巻き添えにはしたくなかった。2024/04/23 14:32:55345.法介◆T3azX0Hk1U48a8nが、しかし2024/04/23 14:33:11346.法介◆T3azX0Hk1U48a8n愛弟子の息子を見捨ててゆくことは宗章には出来なかった。2024/04/23 14:33:36347.法介◆T3azX0Hk1U48a8n慶長8年11月15日夜を徹して篝火が焚かれていた。2024/04/23 14:34:07348.法介◆T3azX0Hk1U48a8n既に早朝であるはずなのに、あたりはまだ薄暗かった。2024/04/23 14:34:29349.法介◆T3azX0Hk1U48a8n焚火のそばで暖を取りながら横になっていた宗章のほほに吹雪が当たる。2024/04/23 14:34:54350.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「そろそろのようです」従者の森地五郎八が焚火の灯りに照らされ、どこからともなく現れ宗章に呟いた。2024/04/23 14:35:19351.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「そうか」宗章は武者草鞋の紐を固く結び直し、天空を仰いだ。2024/04/23 14:35:42352.法介◆T3azX0Hk1U48a8n吹雪は一層激しく宗章のほほを打つ。2024/04/23 14:36:36353.法介◆T3azX0Hk1U48a8n横に置いてあった槍を手に取ると宗章は、勢いよく陣から飛び出し颯爽と駆け出した。2024/04/23 14:37:30354.法介◆T3azX0Hk1U48a8n主人の後を追って五郎八も駆ける。2024/04/23 14:38:25355.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章の背中は今まで五郎八が見たこともない程の熱気と闘争心で覆われ殺気がみなぎっていた。2024/04/23 14:38:47356.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「何人の死者がでるだろう・・・」五郎八は相手方の死者数が莫大なものに上がるであろうと思わず身震いした。2024/04/23 14:39:05357.法介◆T3azX0Hk1U48a8n米子藩の兵士達にとってそれは、かつて経験したことのない凄まじい戦いだった。十倍の数を誇る藩兵の方が、柳生宗章を先頭とするたかだか一握りの集団に翻弄され攪乱されていた。2024/04/23 14:39:57358.法介◆T3azX0Hk1U48a8n藩主中村方の将兵だけでは鎮圧ができず、出雲国の堀尾氏へ援軍を要請していた。2024/04/23 14:40:38359.法介◆T3azX0Hk1U48a8n堀尾氏の軍勢が到着すると正門、大手門玄関口から中村方が、搦手の裏門台所口からは堀尾方が挟み撃ちする形で攻防戦が繰り広げられた。2024/04/23 14:41:26360.法介◆T3azX0Hk1U48a8n中村方の先方武将、矢野助之進が率いる軍勢を宗章が大手門を背にして十文字槍を小脇に抱え迎え撃つ。2024/04/23 14:42:33361.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「いざ、参られれい!」2024/04/23 14:42:45362.法介◆T3azX0Hk1U48a8n槍術にも長けていた宗章の勇姿に、突撃してきた矢野の軍勢の足がピタリと止まった。2024/04/23 14:43:16363.法介◆T3azX0Hk1U48a8n剣豪宗章の腕前は敵見方関係なくその場に居合わせる者皆が知っている。2024/04/23 14:43:40364.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「先ずそれがしがお相手いていたそう!」2024/04/23 14:43:54365.法介◆T3azX0Hk1U48a8n武将、矢野助之進が兵を割って一番槍で宗章と一戦を交えた。二合、三合、激しく突き合ったかと見ると、矢野助之進は利き腕から血を流していた。2024/04/23 14:44:34366.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「矢野殿、その腕ではもう槍はふれまい、 せっしゃが宗章殿のお相手を致そう」2024/04/23 14:44:58367.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそう言って、遠山小兵衛が槍を合わせた。遠山も中村藩家臣の一人、それ相当の武芸の心得はある。2024/04/23 14:45:19368.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしかし、あっという間に股を突かれて引き下がる。2024/04/23 14:45:35369.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章は、負傷した武将達に決して留めの突きを入れることはしない。2024/04/23 14:45:49370.法介◆T3azX0Hk1U48a8n一対一ではかなわぬと小姓、今井次郎と渡川三九郎が二人がかりで一斉に宗章に斬り込んだ。2024/04/23 14:46:12371.法介◆T3azX0Hk1U48a8n槍術にもたけていた宗章は、余裕で瞬時に二人をけ散らした。2024/04/23 14:46:28372.法介◆T3azX0Hk1U48a8nするとそこに、「ごめん!」といって吉田左太夫が進み出た。2024/04/23 14:46:45373.法介◆T3azX0Hk1U48a8n中村家の家臣の中でも槍術では名の知れた勇士である。2024/04/23 14:47:06374.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの大手門での決闘を敵も味方もその場の緊張感に吸収され息をするのも忘れる程にただただ見入っていた。2024/04/23 14:47:48375.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「えぇーい!」という宗章の威勢のいい掛け声と共に吉田の槍が宙に舞った。2024/04/23 14:48:08376.法介◆T3azX0Hk1U48a8n焦った吉田はすかさず腰の太刀を抜いて宗章に斬りかかった。2024/04/23 14:48:28377.法介◆T3azX0Hk1U48a8nスルリとその太刀をかわしながら宗章が槍を下から救い上げると吉田は跪いて、見ると太股を鋭くえぐられていた。2024/04/23 14:48:52378.法介◆T3azX0Hk1U48a8n一対一ではどうにもかなわぬと覚ったその場に居合わせた中村方の兵士達は、一斉に大手門突破にでた。2024/04/23 14:49:13379.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章に群がり来る敵勢を見て、従者の森地五郎八が宗章を援護せんと飛び込んだ。2024/04/23 14:49:32380.法介◆T3azX0Hk1U48a8nと、その時2024/04/23 14:49:47381.法介◆T3azX0Hk1U48a8n騒然とする大手門に、「助太刀申す!」と威勢よく武蔵が飛び込んで来た!2024/04/23 14:50:03382.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「誰だ!お前!」とっさに五郎八が叫ぶ。2024/04/23 14:50:23383.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「宮本武蔵と申す! 宗章殿には 只ならぬお世話になっておる者だ!」2024/04/23 14:50:41384.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章から「お前なんぞ、知らんぞ!」と、言い返されようがお構いなしに、向かって来る敵をばったばったと斬り倒す武蔵。2024/04/23 14:51:03385.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「誰かは知らんがかたじけない! 一人でも加勢が増えれば助かる!」2024/04/23 14:52:11386.法介◆T3azX0Hk1U48a8n戦いの中で圧倒的な強さを発揮する武蔵。その勇姿に、宗章の剣豪としての血潮が湧いた。2024/04/23 14:52:30387.法介◆T3azX0Hk1U48a8n十文字槍を振り回し敵をけ散らす様になぎ倒していく。2024/04/23 14:52:44388.法介◆T3azX0Hk1U48a8n武蔵も宗章も二人の心は爽快に晴れ渡っていた。ただ無心で剣を振り、槍をついては体から熱気がほとばしり無双乱舞した。2024/04/23 14:53:00389.法介◆T3azX0Hk1U48a8n中村方の武将にも滝川三九郎という柳生新陰流の達人が居た。武蔵の暴れっぷりを見て、「お相手つかまつる!」と、太刀を抜きはらい武蔵の前に立ちふさがった。2024/04/23 14:53:26390.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(三九郎殿か・・・) 隣で応戦していた宗章が武蔵に言葉を投げかけた。「その男、気を付けなされい!」2024/04/23 14:53:54391.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章から言われるまでもなく、既に武蔵は感じていた。(こいつ只者ではない・・・)2024/04/23 14:54:20392.法介◆T3azX0Hk1U48a8n滝川三九郎は真田氏と旧知の中で、真田昌幸の娘を嫁に迎え、織田信長の弟、織田長益の推挙によって米子藩主・中村一忠に仕えていた。三九郎は、織田信長の重臣・滝川一益の孫にあたる。歌舞伎者で有名なあの前田慶次もこの滝川一族の出身である。2024/04/23 14:54:45393.法介◆T3azX0Hk1U48a8n武蔵と三九郎は互いに間合いをつめ合い、一間をへだててピタリと止まった。(一間=1.8メートル)2024/04/23 14:55:16394.法介◆T3azX0Hk1U48a8n相手の初動を利用して攻撃をしてくる柳生の剣を熟知していた武蔵は、安易に剣を打ち込まず、その瞬間をジッと計らっていた。2024/04/23 14:55:40395.法介◆T3azX0Hk1U48a8n業を煮やした三九郎が武蔵に上段から打ち込んだ。その剣を受けて止めた武蔵は思った。(剣を止めてしまえばこっちのもの)そう、柳生新陰は、流れる剣さばきの中で映える剣。三九郎の剣を力でねじ伏せた武蔵が次の瞬間、攻撃に転じた。2024/04/23 14:56:06396.法介◆T3azX0Hk1U48a8n武蔵がはなった一刀が三九郎の左の太股を鋭くえぐった。転倒する三九郎に武蔵は、留めの太刀を振るわなかった。(殺してしまうには惜しい・・・)2024/04/23 14:56:30397.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこれまでの武蔵はがむしゃらに対戦相手を叩きのめしてきた。三九郎といや、柳生新陰と真剣で太刀を交える中で武蔵の剣術に、変化が起きていた。2024/04/23 14:56:43398.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれは闘いにおける美学。男(武士)の美学であった。2024/04/23 14:57:01399.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「成長したな、武蔵」宗章の顔が真兵衛の顔とかぶって武蔵の眼には映った。2024/04/23 14:57:42400.法介◆T3azX0Hk1U48a8n今、武蔵に〝見えている〟のは宗章の姿だが、武蔵の心に〝観えている〟のは真兵衛の姿だった。2024/04/23 14:58:15401.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宗章は、用意した全ての刀の刃が毀れると従者の森池五郎八と敵中へ突っ込んでいった。既に満身創痍の身でありながらも最期は中村方の家臣、藤井助兵衛と戦い壮絶な最期を遂げた。2024/04/23 14:58:37402.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「宗章殿!」 力尽きて仰向けに倒れ、 天を仰ぐ宗章に、 武蔵が駆け寄る。2024/04/23 14:59:01403.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「真兵衛さん! 真兵衛さん!」 気がついたらアドバンは、 救急車の中で救命処置を受ける真兵衛の名を叫んでいた。2024/04/23 14:59:50404.法介◆T3azX0Hk1U48a8n道場で一人鍛錬に励んでいた真兵衛だったが、急に胸に激痛が走り、倒れ込んでいた。たまたま道場にやってきたアドバンがその場に駆け付け、救急車を手配した。心筋梗塞を起こして命の危機にあった真兵衛だったが緊急手術で一命を取り留めた。2024/04/23 15:00:13405.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「アドバン、お前のおかげでわしは命拾いした。ありがとう」柳生の里に来る以前の武蔵は、己の名を力を強さを存在をただ誇示したい、俺を見ろ、といわんばかりに剣を振り回していた。2024/04/23 15:01:01406.法介◆T3azX0Hk1U48a8n しかし、柳生の里で武蔵の心に話しかけてくるあのじいさんは、「そんなことのために剣はあるのかね? おぬしの剣は、そんな小さなものなのかね? 我を捨てよ 無心になれ」 と、武蔵を「空」の世界観へと導いた。2024/04/23 15:01:51407.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「空」とは仏の世界観である。2024/04/23 15:02:08408.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその中に菩薩という境地がある。「我」という自我意識を打ち消した先にある境地である。菩薩の境地では自我意識が無いので自他の分別が生じない。他者の苦しみを我が苦しみと感じ他者を救済していく「慈悲」の精神に満ち溢れた境地、それが「空」における菩薩という境涯である。2024/04/23 15:02:25409.法介◆T3azX0Hk1U48a8n <五輪の書>アドバンは、北九州に出向いた際、足がない不便さを感じた。そして自身の愛車「マイバッハ」を送るよう部隊に要請していた。2024/04/23 16:10:45410.法介◆T3azX0Hk1U48a8n普段はスピード・キングが運転を担当するのだが、私用の際はアドバン自ら運転もする。しかし、ここは不慣れな異国の地。届いた「マイバッハ」の運転をアフロに任せる事にした。戦闘機乗りであるアフロは、こういった部類の乗り物の運転には目がない。https://youtu.be/RA1LxoJnx682024/04/23 16:11:15411.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「キングがいつも運転しているマイバッハだな ついに俺様が運転する時が来たか 物足りなかっただろう、キングの運転じゃ」車に一人、話かけているアフロにアドバンがマイバッハのキーを投げ渡した。2024/04/23 16:11:44412.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそこに一台のランクルがやって来た。トヨタ・ランド・クルーザー・70。古い旧車デザインの四駆だ。2024/04/23 16:18:10413.法介◆T3azX0Hk1U48a8n四駆界の横綱と言うだけあってボディはかなりでかい。降りてきたのは、雄一郎。「よう、アフロ久ぶりだな、元気でやってるか?」「雄一郎さん、また老けたんじゃね?」「うるせい、色々と苦労が多いんだよ」2024/04/23 16:18:44414.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそんなたわいもない会話が弾む。今日はアドバンのマイバッハをアフロが運転し、雄一郎のランクルと二台で九州が誇る日本の名城、熊本城までドライブを組んでいた。2024/04/23 16:19:05415.法介◆T3azX0Hk1U48a8n雄一郎のランクルには、弟の陽次郎が乗り込む。「親父、危なかったんだってな」「バイパス手術したから、もう大丈夫 今は、病院で安静にしてるよ」「そうか、良かった」久しぶりの兄弟の再開に、こちらも色々と話が弾む。2024/04/23 16:19:28416.法介◆T3azX0Hk1U48a8n加藤清正が関ヶ原の戦いの行賞により、家康より肥後一国52万石を与えられ熊本藩主となり、1606年(慶長11年)日本の三大名城と言われる熊本城を築いた。2024/04/23 16:19:40417.法介◆T3azX0Hk1U48a8n日本の城を初めて訪れたアドバンは、感慨無量だった。2024/04/23 16:19:54418.法介◆T3azX0Hk1U48a8n初めて来た熊本城であったが、どこかしら懐かしさを感じる不思議な感覚。宮本武蔵は他界する最後の5年をここ熊本の地で過ごしている。2024/04/23 16:20:16419.法介◆T3azX0Hk1U48a8n加藤家は二代藩主の加藤忠広が改易させられ、小倉藩主だった細川忠利がその後を受け熊本藩主と成る。武蔵は57歳の時、その忠利に招聘され格別の待遇で熊本に迎えられた。2024/04/23 16:20:30420.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそして雲巌禅寺の裏山にある霊巌洞に1年余こもってあの有名な兵法書「五輪の書」を著した。2024/04/23 16:20:45421.法介◆T3azX0Hk1U48a8n薄暗く、冷たい空気が張り詰める霊巌洞に入ったアドバンの眼には、そこで禅を組み深い瞑想に入る年老いた宮本武蔵の姿が観えた。2024/04/23 16:21:02422.法介◆T3azX0Hk1U48a8n来日して真兵衛に薦められて和英版の「五輪の書」も読んでいた。地の巻、水の巻、火の巻、風の巻、空の巻と仏法で説く「地水火風空」の五智にちなんで書かれた武蔵直伝の兵法の奥義書である。2024/04/23 16:21:20423.法介◆T3azX0Hk1U48a8n読み終えて、巌空和尚に「地水火風空」について説法を願い出た。2024/04/23 16:21:37424.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「宮本武蔵の五輪の書の五輪は、 地水火風空じゃが、 これは仏法の中で説かれる 五つの智慧を意味しとってな」和尚はそういって、日蓮の『阿仏房御書』の一説を読んで聞かせた。2024/04/23 16:22:02425.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「末法に入つて法華経を持つ男女の姿より外には宝塔なきなり。若し然れば貴賤上下を選ばず南無妙法蓮華経と唱うるものは我が身宝塔にして我が身又多宝如来なり。妙法蓮華経より外に宝塔なきなり。法華経の題目、宝塔なり。宝塔又南無妙法蓮華経なり。今、阿仏上人の一身は地水火風空の五大なり。此の五大は題目の五字なり。然れば阿仏房さながら宝塔、宝塔さながら阿仏房」2024/04/23 16:22:25426.法介◆T3azX0Hk1U48a8nまた、『三世諸仏総勘文教相廃立』の一説も紹介した。「五行とは地水火風空なり五大種とも五薀とも五戒とも五常とも五方とも五智とも五時とも云う。只一物、経経の異説なり。内典、外典、名目の異名なり。今経に之を開して一切衆生の心中の五仏性・五智の如来の種子と説けり。是則ち妙法蓮華経の五字なり」2024/04/23 16:22:42427.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこれらの文の中で、「地水火風空」とは、「妙法蓮華経」の五字であり、その題目を唱える修行者の姿そのものであると日蓮は言っている。2024/04/23 16:23:02428.法介◆T3azX0Hk1U48a8n具体的には、「妙法蓮華経」の五字は、五仏・五智の如来の種子であると。2024/04/23 16:23:20429.法介◆T3azX0Hk1U48a8n五仏・五智は、インド仏教における唯識学で説かれる内容で、人間の認識作用を「九識論」として次のような内容で説いている。2024/04/23 16:23:51430.法介◆T3azX0Hk1U48a8n前五識(第一識~第五識)これは人間の五感である眼、耳、鼻、舌、身をそれぞれ眼識、耳識、鼻識、舌識、身識といった呼び名で、第一識から第五識とする感覚作用として働く認識器官のことで、これを成所作智(じょうそさち)と言う。成所作智は、認識器官を正しく統御し、それらによって得られる情報をもとに、現実生活を覚りに向かうべく成就させてゆく智慧である。2024/04/23 16:24:05431.法介◆T3azX0Hk1U48a8n第六識(意識)その認識器官に基づいて行動や判断をこなう意識で妙観察智(みょうかんざっち)と言う。妙観察智は、万物がもつ各々の個性、特徴を見極め、その個性を活かす智慧である。2024/04/23 16:24:18432.法介◆T3azX0Hk1U48a8n第七識(末那識)第六識の意識下にある無意識で、「自我意識」を形成する。我見、我愛、我慢、我痴、などの元になる自己中心的な差別の心。その我執(自我への執着)が除かれた聖位においては、自他の差別のない平等性智へと転じる。平等性智は、無我の境地に入って全てを平等に見る智慧である。2024/04/23 16:24:32433.法介◆T3azX0Hk1U48a8n第八識(阿羅耶識)全く意識されない潜在意識で、輪廻転生の因となる「業」が蓄えられていく場所。これを大円鏡智(だいえんきょうち)と言う。この阿羅耶識の業(宿業)が因となって前五識に果が生じる。その果が仏果に至ると阿羅耶識が転じて大円鏡智を得る。大きな鏡が万物を明らかに映し出すように、一切の存在の真実の姿を映し出して明察し、満徳円満にして欠けることがないので大円鏡智と言う。2024/04/23 16:24:44434.法介◆T3azX0Hk1U48a8n第九識(阿摩羅識)※密教において説かれる。更にその奧に本来的に清浄無垢な自性清浄心と呼ばれる第九識が潜み、これを法界体性智(ほうかいたいしょうち)と密教では説く。法界体性智は、永遠普遍、自性清浄なる大日法身の絶対智であり、他の四智を統合する智慧となる。2024/04/23 16:24:56435.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこれらの九識は、「金剛頂経」の説く瞑想法「五相成身観」によって各々五智に転じる(転識得智)ことが出来る。ここで示す五智が五仏の智慧として象徴されたのが密教の「金剛界曼荼羅」である。2024/04/23 16:25:07436.法介◆T3azX0Hk1U48a8n対象に適した変化を示す智慧教化の対象をよく知り的確な説法を行う智慧自他が根本的に区別のない同体の存在であることを知る智慧万物の真理の姿を示す智慧これら四智を統合する智慧「地水火風空」は、この五つの智慧を意味する。2024/04/23 16:25:25437.法介◆T3azX0Hk1U48a8n解りやすい言葉で説明するなら、人間が認識する世界は「大地」であり「河や海」、「炎」や「風」といった自然界の姿(色相)であり、それが全てかと言えばそうではない。2024/04/23 16:25:42438.法介◆T3azX0Hk1U48a8n人間の目に見えていない世界も同時に存在している。それが「空」という肉体から解脱した「仏の仮観・空観・中観」という仏の観かたである。人間が見る事で認識する「地水火風」と、仏の観かたである「空」とが一体となった「地水火風空」の姿こそが真実の姿であるという教えである。2024/04/23 16:25:56439.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宮本武蔵がどこまで仏法の極意を会得していたのかは別として、「五輪の書」の空の巻には、次のようなことを書き残している。2024/04/23 16:26:09440.法介◆T3azX0Hk1U48a8n『空の巻より抜粋』武士は兵法をしっかりと身につけ、その他の武芸もよく練習し、武士が進む道は少しも暗くなく、心が迷うこともなく、常に怠らず、心と意の二つを磨いて、「観」と「見」の二つの眼をとぎすまして、少しも曇りのない迷いの雲が晴れたところこそ、正しい空だと考えるべきです。正しいことを知らない間は、仏法に頼ることなく、世間一般に頼ることもなく、個人個人では正しい道と思って、よいことだと思っても、正しい道から世の中の大きな物差しに照らし合わせると、自身の気持ちのひいき、自身の目のひづみのために、正しい道にそむいているものです。この道理をわきまえてまっすぐな所を根本とし、正しい心を道として兵法を幅広く鍛錬し、正しく明らかで大きな所をつかんで、空を道とし、道を空とみます。2024/04/23 16:26:25441.法介◆T3azX0Hk1U48a8nその頃、アメリカでは、マリーを巻き込んだとんでもない計画が動き始めていた。そんな事を知る余地もないアドバンは、遠く離れた故郷を想いスマホでアメリカ第2の国歌ともいわれるポール・サイモンの名曲「アメリカの歌」を聞いていた。自由の女神に象徴されるこの曲の〝主語〟は アメリカだ。https://youtu.be/KT4Y4GsxdcU2024/04/23 16:26:58442.法介◆T3azX0Hk1U48a8n(この国は)たくさん過ちを犯したくさん迷いもした見捨てられ、小突きまわされていると感じることもよくあったそれでも、平気さ、平気なんだ疲れが骨まで沁みてもまばゆい結構な暮らしなんか期待はしない2024/04/23 16:27:52443.法介◆T3azX0Hk1U48a8n家から遠く離れたこの場所で家から遠く離れたこの場所で2024/04/23 16:28:05444.法介◆T3azX0Hk1U48a8n魂はいつも痛みつけられ信頼出来る友もいない夢はいつも打ち砕かれ国民は祈りにすがるしかないそれでも、平気なんだ、平気さそれなりに長くうまく生きてきたじゃないか2024/04/23 16:28:21445.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれでもこの旅路を思うとき僕たちは、どこでいったい間違えたんだろうつい考えてしまうどこでいったい間違えたんだろう2024/04/23 16:28:38446.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそして死ぬ夢を見た魂がとつぜん空へ舞い上がり自分を見下ろし微笑みかける平気だよと2024/04/23 16:28:51447.法介◆T3azX0Hk1U48a8n飛んでいる夢を見たその高い空からはっきり目に映る自由の女神が遠い海へと去っていく飛んでいる夢のなかで2024/04/23 16:29:06448.法介◆T3azX0Hk1U48a8nぼくらはメイフラワーという名の船にのってこの地にやってくる月に向かって漕ぎだした船で歴史のもっとも危うい季節にやってくるアメリカのうたを歌いながら2024/04/23 16:29:19449.法介◆T3azX0Hk1U48a8n平気なんだ、平気なんだ平気なんだ、平気なんだ2024/04/23 16:29:31450.法介◆T3azX0Hk1U48a8n永遠の祝福は受けられなくとも明日にはまたいつもの仕事があるだから今はすこしだけ休もうそう、すこしだけ休むんだ2024/04/23 16:29:46451.法介◆T3azX0Hk1U48a8n歌詞を読み、音楽を聴けばわかるとおり、この曲は過誤と諦観と平安、旅と故郷を主題にしている。その主人公は「アメリカ」という国家である。2024/04/23 16:30:06452.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの曲が収録されたアルバムが発表された1973年は、ベトナム戦争のさなかで、前年にはウォーターゲート事件が起こるというアメリカにとって多難な時代だった。そして2008年頃といえば、サブプライム・ローン問題を発端とする住宅バブル崩壊が始まり、選挙戦中にはリーマン・ショックが起きた。そんな混沌とした時代にあって大統領選に出馬したバラク・オバマは、そうした2つの時代のアメリカを、この曲に重ね合わせ、自陣のキャンペーン・ソングに用いた。2024/04/23 16:30:23453.法介◆T3azX0Hk1U48a8nそれがこの曲がアメリカの第二の国家と言われるようになった経緯だ。2024/04/23 16:30:38454.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこの曲が数多くの人々に記憶されているもうひとつの理由に、バッハの『マタイ受難曲』の有名なコラール旋律が転用されていることがあげられる。2024/04/23 16:30:54455.法介◆T3azX0Hk1U48a8n新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のキリストの受難を題材にした受難曲である。2024/04/23 16:31:11456.法介◆T3azX0Hk1U48a8n第一部29曲、第二部は39曲の全68曲からなる大曲の中でこのコラール旋律は、イエス・キリストがむち打たれ、いばらの冠を頭に載せられる場面を歌った第54曲「血潮したたる 主の御頭(みかしら)」をはじめ、歌詞を変えて繰り返し歌われる。このコラール旋律にサイモン自作の歌詞を乗せてつくられた曲なのだ。2024/04/23 16:31:28457.法介◆T3azX0Hk1U48a8n <アメリカの歌>日本の武士は、古くは鎌倉時代から歌を詠んできた。2024/04/23 16:32:27458.法介◆T3azX0Hk1U48a8n歌には、「もののあわれを知る」といった四季の情趣を楽しむ風情があ。2024/04/23 16:32:43459.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「もののあはれ」という言葉は、短歌や俳句好きな人なら知らない人はいないと思う。2024/04/23 16:33:00460.法介◆T3azX0Hk1U48a8n江戸時代の中・後期の国学者である本居宣長が「もののあはれ」の論を展開し、そのことが今日の教科書に載って、「もののあはれ」という言葉が現代語のなかに継承されている。2024/04/23 16:33:16461.法介◆T3azX0Hk1U48a8nしかし、宣長が本来論じている「もののあはれ」とは、そうした四季の情趣に留まらない、日常生活のやりくりにまで及ぶもので、「人の心の動くさま、感じるさま」を言う言葉であったものが、いつのまにかこれに「哀」の字を充てて特に悲哀の意に使われるようになったと彼は言う。2024/04/23 16:33:35462.法介◆T3azX0Hk1U48a8nさらに宣長は言う、2024/04/23 16:34:07463.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「うれしきこと、おもしろき事などには、 感ずること深からず、ただかなしき事、 うきこと、恋しきことなど、 すべて心に思ふにかなはぬすぢには、 感ずること、こよなく深きわざなるが故」2024/04/23 16:34:17464.法介◆T3azX0Hk1U48a8n心が行為のうちに解消し難い時、心は心を見るように促され、生活感情の流れに身をまかせ、ある時は浅く、ある時は深く、おのずから意識される。そういう生活感情の本性への見通しなのである。2024/04/23 16:34:37465.法介◆T3azX0Hk1U48a8nこういった彼の論述は、感情論よりむしろ認識論的な色合いを強く帯びており、彼の課題は、「物のあはれとは何か」ではなく、「物のあはれを知るとは何か」にある。2024/04/23 16:34:55466.法介◆T3azX0Hk1U48a8n宣長による源氏物語の注釈書である『紫文要領』には、次のような記述もある。2024/04/23 16:35:10467.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「目に見るにつけ、耳に聞くにつけ、 身にふるるにつけて、其よろづの事を、 心に味わいて、そのよろづの事の心を、 わが心にわきまへ知る、これ事の心をしる也、 物の心を知る也、物の哀をしる也、 その中にも、尚詳しくわけて言はば、 わきまへ知る所は、物の心、 事の心を知ると言うもの也、 わきまへ知しりて、其しなにしたがひて、 感ずる所が、物のあはれ也。」2024/04/23 16:35:27468.法介◆T3azX0Hk1U48a8nここで言う「事の心・物の心」とは事物のことで、物や現象を指しての言葉で、それらの「心」、即ち本質が、「物のあわれなる」事を知る事であると言っている。2024/04/23 16:35:43469.法介◆T3azX0Hk1U48a8n即ち、「知る」と「感ずる」とが同じであるという、禅的な直観的な認識を論じているのである。2024/04/23 16:36:04470.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「もののあはれを知る」の〝知る〟は、〝感じる〟ことであり〝知る〟ことで、〝知る〟をさらに言うなら、何かを見聞きしてそれと認める「認識作用」でもある。2024/04/23 16:36:29471.法介◆T3azX0Hk1U48a8nアドバンが今聞いている「アメリカの歌」の歌詞の中にもその「もののあはれ」を感じる。2024/04/23 16:36:54472.法介◆T3azX0Hk1U48a8nテロや、絶えず起こる他国との紛争、そういったアメリカの歪んだ歴史を振り返って、なにをどこで間違えてしまったのか、考えることの意義を静かに語りかけてくる。2024/04/23 16:37:19473.法介◆T3azX0Hk1U48a8n「どこで間違えてしまったのか・・・」「でも、心配ない大丈夫」2024/04/23 16:38:12474.法介◆T3azX0Hk1U48a8n僕たちは必ず正しい答えを導き出すんだという決意。それは、道を極めようとする者だからこそ言える言葉。2024/04/23 16:38:36475.法介◆T3azX0Hk1U48a8n真理はどこにあるのか。何が真理なのか。僕たちは必ず答えをだす。2024/04/23 16:38:57476.法介◆T3azX0Hk1U48a8n今一度もののあわれを観じ取りならが聞いてみてください。https://youtu.be/RKvMuvMgZas2024/04/23 16:40:17477.法介◆T3azX0Hk1U48a8n歌詞に込められた深い深い意味を観じた時、アドバンの眼からは一粒の涙がこころをつたって流れ出た。2024/04/23 16:41:06478.法介◆T3azX0Hk1U48a8nWild-Bison 第2部(前編) ~海を渡った武士道~ 完2024/04/23 16:41:34479.法介◆T3azX0Hk1U48a8nWild-Bison 第2部(後編) ~Gun spirit of America~へと続く2024/04/23 16:42:00480.ナナシズムoGXic0063 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/20(月) 21:28:44.11現代に法難があるなら、強制入院くらいは体験すべきだなID:AXfyYORh(7/2024/05/20 21:33:29481.ナナシズム0bIjO0064 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/26(日) 15:44:47.15>>62何もしてないのにな 近所には共産党の幹部の家もあるたぶんここらへんは 張り込むには公安には都合が良いんだろうなID:JG/AUJL6(22/292024/05/26 18:39:46482.ナナシズム0bIjO0039 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/26(日) 15:16:16.15>>38公安にマークされてることを話したら妄想だと判定された 事実なのにな 1ID:JG/AUJL6(6/292024/05/26 18:41:19483.ナナシズム0bIjO0352 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/26(日) 19:22:32.28パトカー何台きたと思う?警官何人来たと思う?少なくとも10人には取り囲まれたぞ…竜ノ口の法難さながら、だな 1ID:I9Gur5cH(3/202024/05/26 19:59:46484.ナナシズム0bIjO0366 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/26(日) 19:34:31.98その通りで、家の前で、その夜に木刀を三回くらい野球の真似で、素振りしただけで公安アパートから変な人が出てきて“おいおいおい!”“動画回せ動画!”“警察呼べ警察!”ってオオゴトになって、パトカー🚓が3台くらい来た…家に盾を持った機動隊が、突入してきたこんなことあるか?木刀を3〜4回、野球の素振りしただけ、だぞ?ID:I9Gur5cH(7/2024/05/26 20:00:31485.ナナシズム0bIjO0448 元コマンドー ◆KBl5hH0VXM 2024/05/26(日) 20:29:08.23>>444週一で主治医の回診があるでしょそんなこと話してる? 1ID:UYgMkYCM(24/26)0449 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/26(日) 20:29:54.11>>448いや、話しても無駄だと思ったからしてないな余計に入院が長引くだけID:I9Gur5cH(34/382024/05/26 20:53:28486.ナナシズムkYYeh蝗GUY2024/05/31 11:25:01487.ナナシズム7NPg6https://m.youtube.com/watch?v=xgr_f_R4j5Y&pp=ygUG6J2XR1VZ2024/05/31 19:14:27488.ナナシズムro9IQせいうんここじき様の姿蝗GUYhttps://m.youtube.com/watch?v=xgr_f_R4j5Y&pp=ygUG6J2XR1VZ2024/06/13 20:49:08
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Gunスピリット・オブ・Bison
~海を渡った武士道~
日本史において、およそ200年続いた戦国の世。
その乱世に終止符を打った天下人、徳川家康。
その家康が築いた徳川幕府は260年もの長きにわたって繁栄し、
さまざまな文化が開花した。
柳生但馬守宗矩
(やぎゅう たじまのかみ むねのり)
その人である。
「兵法は人をきるとばかりおもふは、
ひがごと(間違い)也。
人をきるにはあらず、悪をころす也」
「人に勝つ道は知らず、我に勝つ道を知りたり」
己の人間性を高める武士道であり、
その武士が向き合う刀は
「武士の魂」とまで言われるようになった。
<空観寺>
福岡の西の外れの山中奥深く入っていった所に、
日蓮法華道『空観寺』という寺がある。
日蓮法華道「空観寺」第75世住職、巌空(がんくう)。
その巌空のもとで今、一人のアメリカ人が修行を行っている。
彼の名をアドバン・J・ルークという。
そうあのDestiny(ディステニー)部隊の闘将「アドバン」である。
Bison氏が言った「武士の魂」の意味するところを知りたくてアドバンは、Bisonが紹介した柳生新陰流の「柳生の里」がある福岡にやって来た。
柳生新陰流第17代師範、
柳生真兵衛である。
兄貴から話は聞いている。
短い期間ではあるが剣術が何たるかを学んでいくがよい」
その真兵衛には二人の息子がいる。
「何だよアドバン」
ちゃんばらしながら受け応えするアフロ。
「俺にもその竹刀貸してくれ」
「おお! やってみますか隊長さん」
ってアドバンとアフロの関係ってどういう関係?
「誰か俺様のうわさ話でもしてやがるな・・・」
アフロを無理やりジャスティスに引き込んだのもこの男であった。
何しに行ってんだ?」
「えっ? そうなのか?」
気付かないどころか、教育者も一緒になってそのような部活を学校の知名度を上げる為の要因として外部から専門のコーチを招いたりして後押しさえしている。
そう言って真兵衛がアドバンに手渡しはのは、
「真剣! 武士の魂・・・」
「な、何なんだ・・・この美しさは・・・」
アドバンは、これまでに様々な武器を手にしてきた。だが、それら武器を手に取って「美しい」と感じた瞬間は無かった。
「こ、これが、武士の魂・・・」
その美が放つ神聖なる光彩には、その言葉を納得せしめるに十分過ぎる説得力を含んでいた。
「陽次郎、お前が手本を見せてやれ」
窪田正孝似の好青年、陽次郎がその真剣を手に取って試し斬りの藁材の前に立った。
右手で柄(つか)を左手で鞘を握ると
一瞬で剣を抜き取ったかと思えば、
目の前の藁の上半分が斜めに見事に切断されて、
ズズズとずれ落ちて床に転がった。
「アドバン、君も試してみろ。」
そういって真兵衛が鞘に納まった真剣をアドバンに手渡した。
目をつぶってイメージした。
一度鞘から刀を抜き、
確実な動作の中で上段から力を込めて打ち込み藁を斬る!
イメージ通り動作に転じた。
しかし、
アドバンが振り下ろした刀は藁に食い込んで止まった。
「そうじゃないんだなー アドバン」
アドバンに部隊の中で為口を叩ける人間はそうはいない。
「貸してみ」
今度はアフロが藁の前に立った。
松本純似のアフロが腰を落として構えに入った。
その刀を更に反転させ
真横に走らせ
一瞬の内に藁を三分割に斬り刻んだ。
「ほう、いつの間にそんな事が出来るようになった・・・」
しかし、アフロがやったのは、
下の部分をまず斬って、斬られた部分を更に斬り刻んだ三等切り。普通なら切られた部分は根に刺さっていないので、それを斬りつけても飛んでいくだけで斬り抜くことは用意ではない。
「ん? 何が?」
斬った本人はそんな事は何も考えていなかった・・・。
「真剣は力任せに叩き斬ろうとしても斬れないんだよ」
真兵衛がアドバンに説明した。
「なる程そういうことか・・・」
関心しながら、再び真剣を手にしたアドバン。
「それにしても美しい・・・」
ひしひしと真剣を眺め自分なりにそれを振ってみる。
一振りふた振り。
それをみた真兵衛は思った。
(こいつ、前世で剣術をやっていたな・・・
しかも、相当な腕前・・・)
「宮本武蔵!」
昨今、アメリカのシリコンバレーでは、ステーブ・ジョブズの影響で日本の「禅」がIT企業でもてはやされている。
インド仏教と中国仏教とでその意味するところが全く異なることは、
あまり知られてはいない」
「ヴィパッサナー瞑想」の
二種の瞑想がそれにあたります。
ここの住職の巌空和尚は、Bisonや真兵衛の兄にあたる。
巌空和尚:長男
Bison:次男(息子:アフロ)
真兵衛:三男(息子:長男 雄一郎、次男 陽次郎)
といった関係だ
「ここはどこだ?」
見た事も無い風景、緑の山々が連なり、広がる田園の先に、藁ぶき屋根の子民家が集落として立ち並び、写真で見たことのあるお百姓とおぼしべく人達が農作業にいそしんでいる。
そんなとこにすっ立ってるんじゃないよ。
早くこっちに来い!」
(あいつ誰だ? 誰に話かけてるんだ?)
後ろを振り返っても、周りを見渡しても自分以外に話しけかけてる人物は居ない。どうやらアドバンに向かって話しかけているようだ。
(俺がたけぞう?)
(たけぞうって誰だ?)
話かけてきた見知らぬ男が近寄ってきた。
「お前だれだ?」
「誰って、お前の幼馴染の又八に決まってんじゃないか!
何おかしな事いってんだ? たけぞう!」
「俺がたけぞう? 誰だよたけぞうって?」
「宮本村の宮本武蔵(たけぞう)だろ、お前自分の名前わすれちゃったのか?」
(宮本たけぞう?)
「さあ、たけぞう、あの先がおめーが臨む対戦相手、
柳生が居る柳生の里だ!
行くぞー!」
(俺が、柳生と勝負するのか?)
(しかも今から?)
「ちょっと待て!
俺は剣術の心得など無い!
どうしてそんな俺が柳生と勝負するんだ?」
ついこの間、あの吉岡清十郎を打ち破ったお前さんが何を言ってんだい?
ちょいと剣を抜いてみな」
又八が落ちていた木切れを
たけぞう目掛けて勢いよく投げつけた。
(解かる・・・刀の扱い方が、振り方が)
(俺が宮本武蔵?・・・)
又八と武蔵は柳生の里へ向かって歩みだした。
二人の行く先に一人の武芸者が立ちふさがる。
「柳生兵庫!」
事前に柳生の情報を下調べしていた又八が、
その風貌から柳生きっての剣豪、
柳生兵庫だと覚った。
「柳生に勝負を挑もうって勇ましい武芸者が居るって聞いたんだが、
お前さん達か?」
これっぽちも思っちゃいねーよ
ほ、ほんとだぜ・・
た、ただ、こっちにいる武蔵って奴がね、
どうしても勝負がしたいっていうもんだから、
案内しちゃったりしただけです」
「た、たけぞう、どうすんだ?」
アドバンは、闘将としての自身の血が騒ぐのを感じた。
「面白い、お相手願いますか?」
自分でも何を言ってるのか分からないが
勝手に口から言葉が出てくる。
「ならばお相手致そう」
そういうと兵庫は、
腰の刀に手を掛けて
抜刀の姿勢を取った。
たけぞうも刀を抜き構えに入った。
二人が向き合い、
その場の空気が一瞬にして張り詰めた空気に変わった。
その場にいた又八は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
静まり返った田舎の一本道。
風が吹き抜ける音だけが妙に大きく感じた。
(全くすきが無い・・・)
道場で目にした陽次郎やアフロの柳生の剣さばきの鋭さが脳裏に焼きついているアドバンだっただけに、兵庫のそれが動きに転じた時のイメージが鮮やかに脳裏に浮かぶ。
斬りつければ、間違いなくこっちが斬られる。
「やめた! やめた!
勝負なんて馬鹿ばかし。
やめだやめだ!
又八! 温泉にでもつかりにいこうぜ!」
そういって刀を鞘に納めて振り返ってその場を去ろうとした。
良い温泉場がある、ついて来い」
十兵衛は宗矩の息子で兵庫はその宗矩の兄の息子で二人は従兄弟の関係にあたる。
竹刀を交えてみろ」
「十兵衛はどこじゃ? 十兵衛を呼べい!」
と、退屈そうに窪田正孝似の将軍家光が、十兵衛を探し回っていた。十兵衛は家光の剣術相手として家光とは幼少の時から、兄弟のようにして育った。
お前また居眠りこいておるな!」
和尚は「法華経」で説かれる当体蓮華と比喩蓮華の説法をしたようだが、どうもアフロには難しい話だったようだ。
要するに因と果の関係だろ。
当体蓮華ってのは喩えではなく因と果が同時に
同体で存在するってことだろ」
時間の流れがそこには生じる。
因を元として果を得るってな」
同時に同体で存在するって訳だから、
そこには時間の流れが無いってことになるだろ」
アフロが首をかしげて返答した。
「俺には想像がつかん・・・」
一瞬の中に同時に存在するって
和尚が言ってただろ」
当体蓮華が無始無終の三身如来って奴だろ」
始成正覚っつうんだろ。
今世で仏に成ったお釈迦様のことを。
仏に成ったんだからそれで良くね?」
明日、もし大地震が起きるとして
誰がそれを予知しえる?」
ええー!
それってもの凄い事じゃん!
相手の攻撃を事前に予知できちゃう訳だろ?」
相手の剣の動きを予知出来る有利性。
それを幾度と無く経験してきたから、
俺にはこの当体蓮華の意味が良く解かる」
「こ、これは・・・」
部屋の中央に畳10畳程のジオラマが造られてNゲージの線路がジオラマ内を無数に走っていた。部屋の棚にはNゲージの列車が綺麗に並べられており、その数は数え切れない程の量だった。
こっちにはニューヨーク・セントラル鉄道の E7Aもある」
アドバンが尋ねた。
「いいんですか!」
そんなアドバンに和尚が言った。
時間を作って、お前さん見に行ってみるといい」
「良いんですか、是非行って見たいです」
「ゆ、雄一郎さん!」
ふたりの襲撃主が声をそろえて気まずそうに言った。
そして、そばにいたアドバンに、
「お前何者だ?
そのぶっそうな物をまずはしまおうや」
アドバンは答えた。
「俺は国際警察だ」
「国際警察?って、銭形警部かよ・・・
ここは日本なんだ。
日本には日本のやり方ってのがあるんだよまずは、
そいつをしまいな」
そしてアドバンがかばっていたおびえた男に向かって、雄一郎は言った。
「龍二。お前今度は何をしでかした?
鬼頭会さんが銃まで持ち出したんだ
ただ事ではすまねーぞ、お前」
「助けてやりたさ、俺だって
助けてやれるもんならな・・・
しかし、鬼頭会さん凄く怒ってるみたいだし、無理かもね・・・」
「健造! 太一! 取り合えずこいつは俺が預かる
こいつから詳しい事情を聞いとくから、
この一軒は俺に任せてくれないか?」
二人は銃をしまい、車に乗り込むとその場をそそくさと去っていった。
まぁ中でゆっくり話そうや」
「お前さんももしかしてこの店に?」
「あ、ああ」
「じゃあ、お前もついて来い」
三人はぞろぞろと店の中に入っていった。
https://youtu.be/1To_7__k6WU
「マスター、コーヒー二人分頼む!」
と雄一郎がこの店の常連客と分かる親しげな口調でマスターにオーダーを入れた。
詳しく話してみろ」
そんな二人には全く無関心に、ひたすらショウケースの中のNゲージをなめまわすような視線でその一つ一つを鑑賞しているアドバン。
「そりゃ、鬼頭会さんが怒るのも無理はないな」
そういって、龍二が反省に至るように、物事の道理を解かり易く諭すように語る雄一郎。
「雄一郎さんが一緒なら・・・」
「よし分かった、じゃあこれでこの件はお終いだ」
「おーい、そこの赤毛の兄ちゃん!」
商品を眺めていたアドバンが俺のことかと振り向いた。
「気に入ったゲージがあったら、持ってきてここで走らせて良いんだぞ!」
え、そういう事なんだと理解したアドバンは、自分のお気に入りのゲージを持ってジオラマコーナーにやってきた。
通だねー」
アドバンが持ってきたゲージは、アメリカのユニオン・パシフィック鉄道の FEF-3 蒸気機関車だった。それをジオラマにセットするとスイッチを入れて走らせた。
そういって、席に招かれたアドバンは言われるままに着席し、コーヒーを頼んだ。
「で、お前さん名前は何て言うんだ?」
アドバンが自分の名を告げると、
「何か聞いた名前だぞ・・・」
雄一朗は、アフロがアメリカの友人を連れて来日すると聞いていた。その時聞いた名前がそうだったことに気付いて、
「あー、もしかしてアフロのアメリカの友人の?」
アドバンがうなずいた。アドバンはアドバンで思っていた。
(この人物、どっかで出会った気がする・・・)
ああー!という顔で記憶が蘇った。
(昨日みた夢に出てきた兵庫さんだ・・・)
最初、雄一朗が刑事だと知って焦ったが、雄一朗は刑事ではなく一人の人間として龍二と向き合ってくれた。兄弟がいない龍二にとって雄一朗は兄のような暖かさを感じることが出来る心を許せる唯一の存在だった。
「あの部屋いいだろ。自由に使ってくれ」
そう言ってアドバンとは分かれて、龍二を連れて鬼頭会の事務所がある小倉南区に車を走らせた。
「健造と太一はいるか?」
事務所の中から、健造と太一が現れた。
「雄一朗さんこちらにどうぞ」
お前らが怒るのも無理は無い
俺からもこっぴどく言って聞かせた
本人も深く反省している
なぁ、龍二」
好きなだけこいつを殴り飛ばしな
ただな、心から反省してる奴を
殴り飛ばす意味ってあるのかなぁ? って俺は思うぜ」
「雄さんの言うとおりです
間違いに気付いて二度とこんななめた真似やらかしてくれなきゃ、それでいい」
「じゃ、そういう事で今回の件はこれでお終いってことでいいな」
そういって龍二を連れて事務所の客間を出でたところに鬼頭会の会長が幹部連中を引き連れて帰ってきた。
「いや、対した用事じゃない
会長さんの耳に挟む程の用事じゃない
なぁ、健造、太一」
「はい!」
そう言うと、
「せっかく来たのなら、茶でも飲んでいかんか?」
と会長が雄一朗と別れ惜しそうに誘ってくる。
「こいつを送り届けてやらないといけないから、今日はこれで失礼するよ」
そういって雄一朗と龍二の二人は、事務所を後にした。
しかし、雄一朗は違った。
「敵を敵として認識しない」という柳生新陰流の流儀から雄一朗は、彼らと敵対するのではなく、彼らの理解者となって親身に相談に乗ったり、やっかいなトラブル事の仲介に入ったりして彼らとの距離を縮めていった。
そんな雄一朗が口癖のように言う言葉がある。
彼が今回、北九州暴力団対策本部の本部長挨拶で言った言葉でもある。
大事なことは、理解しあう事である
彼らには彼らの生き様があるんだ
それは一般人とは、少し違った価値観だが、
なぜ世間様と違った価値観になってしまったかを
我々が理解することが大事なんだと私は思う
構成員一人一人の歩んできた人生を理解して始めて
ああ、だからこういった価値観の中で生きているんだなと理解に至る
この問題は彼らにあるんじゃ無い、我々の問題である
国民が安心して生活が出来る世の中を
我々警察官が如何にして築いていけるか、
我々の人間としての器が試されているんだと私は思う」
柳生の里と言っても兵庫のいる時代の柳生の里である。
「武蔵、また遊びに来たか」
兵庫は嬉しそうに武蔵と酒を交わした。
「武蔵、剣術は楽しいか?」
兵庫に聞かれて、武蔵はしばらく考え、これまでの自分を振り返った。
宮本村を出て、己の名を挙げる為に必死で戦ってきた。
何人斬り倒して来ただろう。
負ければ自分の命は無い。
手段も選ばなかった。
そして何よりもただ無心に竹刀を振ることで、時間がたつのも忘れた。
ただ無心に剣を振り回し気がつけば、へとへとでくたくたで道場の真ん中で大の字になって天井を眺めていた。
「我に生きるな 無心に生きろ」
武蔵はそれが今は亡き柳生石舟斎の声だと思っていつも聞いていた。
そして勝手に親しみを込めて「じいさん」と呼んでいた。
「じいさん、剣術って何だ?」
最初のうちは、その返事は返ってこなかった。
しかし、最近その答えが武蔵の頭に微かに聞こえてくる。
「武士の魂?」
はっ!と目が覚めた。
「また雄一朗さんに会いたいな、、、」
そう思いながら爽快に走るFEF-3 蒸気機関車を「無心」で楽しむアドバンだった。
宮本武蔵が二天一流の奥義を記した「五輪の書」が世に残っている。
最後の章とは「空之巻」である。
アドバンは最近その事を考えていた。
そんな時にある事件が起きた。
「男の名前は、山根龍二(27歳)で・・・」
(龍二?)
振り返ってTV画面を見ると、
あの龍二の顔が画面に映し出されていた。
「龍二! お前なにやってんだ!」
「雄さん! 俺・・・」
「こいつは俺が取り調べをする」
そういって取り調べを変わった雄一朗に龍二は全てを語りだした。
兄弟のいない龍二は、母一人、子一人の母子家庭で育った。
そんな母親から久しぶりに連絡があった。
「うん、100万くらいかかるのかな・・・」
「お金あんのか?」
「保険に入ってるから、大丈夫さ
お前が心配することじゃないよ」
「心配することは無いっていっただろ」
そういって夕食を用意してくれる母親の後ろ姿を眺めながら、
(母ちゃんまた年老いたなぁ・・・)
と、龍二は思いながら母親が作ってくれる懐かしい料理をしみじみと味わった。
「山根さん、癌だってね
保険にも入ってないっていうじゃない」
(母ちゃん、ごめん・・・)
母親に何もしてあげれない自分が情けなかった。気がついたら金目になりそうな店舗に押し入っていた。
「相談したかったよ
だけどついこの前、雄さんに迷惑かけて申し訳なくて・・・」
その善人・悪人の善悪の基準はおおむね世間の常識による所が大きい。
今回の事件で龍二は悪人として認識されている。しかし、母親思いの龍二もまた紛れもない龍二である。
母親を縁とすれば優しい龍樹が顕れる。どちらも龍二である。ただ「縁」によってその顕れ方が異なって顕れる。
雄一郎が龍二に一冊の本を差し出した。
「この本を佐賀のおふくろさんに送ってあげな」
龍二が手に取った本は、近藤誠著書の「もうがんでは死なない」とい本だった。
早期発見で癌は助かるといって、手術を進めてくる医者。しかし、癌は、本物の癌と放っておいても問題のない「癌もどき」とがあると近藤氏は言う。早期発見で助かったという患者さんは、本来切らなくてもすんだ癌だったから助かったのであって、本物の癌であれば、早期発見で切り取っても助からないので、手術をする意味は無いというのだ。では、医者は何で手術を奨めてくるのか。興味がある方は氏の書籍を読んでみると良いと思います。他にも「医者に殺されない47の心得」など、なるほどと納得させられる書籍を多数出版されています。
「龍二、賢くないと大事な人は守れないぞ」
https://www.nippon.com/ja/ncommon/contents/japan-data/387777/387777.png
強盗発生率(人口10万人当たり発生件数)
https://www.nippon.com/ja/ncommon/contents/japan-data/387778/387778.png
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00888/#:~:text=%E3%80%8C%E8%AB%B8%E5%A4%96%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E5%8B%95%E5%90%91,%E3%82%8F%E3%81%9A%E3%81%8B0.2%E4%BB%B6%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
その本堂でアドバンが和尚に問うた。
「縁起なるが故に空」
という言葉が浮かんだ。
いわゆる、声聞・縁覚・菩薩・仏の四聖である。
ここでの空は状態の「有る無し」を説きます。
物理や科学と全く同じ見識で対象を捉えます。
今日、アドバンは和尚から更に縁覚が覚るという「体空」の説明を聞いた。
坂道を上から見たら下り坂。下から見たら上り坂の「相依性縁起」である。
こちらは科学における物質の時間経緯で起こる状態の変化を捉えた縁起です。
阿含経典で説かれた「此れ有るが故に、彼有り」の此縁性縁起である。
相依性縁起で主観が起こる。
人の認識=主観と客観
それを察した和尚が「今日はこの辺にしておこう」といって今朝の和尚の説法は終わった。
航空自衛隊は、空からの侵略を警戒し防衛するという重要な役割を担っており、即応能力を常時維持しなければならない。
https://youtu.be/vOL8MnVVMmg
武蔵となった自分が十兵衛と
背中合わせで刀を構えて息を切らしている。
「武蔵・・・」
二人は意識の中で呼び合った
「いくぞっ!」
の掛け声と共に、二人は一斉に刀を振りかざし、
群がる剣客達を次から次へと斬り倒していく。
道を究めたいなら刀は抜くまでもないもの
いかに刀を鞘から抜かずにおくか
その為に我々は死に物狂いで剣を振る」
「不思議だな・・・俺も同じ夢を昨夜見た」
アフロが見た夢では自分は柳生十兵衛だったと言う。
が、しかし
宗矩の兄、柳生宗章である。
どんな剣を繰り出したのか、
どんな戦いだったのか、
様々な宗章に関わる事が頭に浮かんでは消え
浮かんでは消えを繰り返していた。
それを「自体顕照」という。
「境の淵ほとりなく、深き時は智慧の水ながるる事つつがなし」
と、御本尊の仏の十界という深い淵を、水がなぞる様に沿って流れていくように、凡夫の煩悩が仏の智慧を借りて悟りへと転じていく「煩悩即菩提」の姿であると言う。
アドバンは唱題の中で「はっ!」と閃いた。
きっと柳生宗章という人物も真兵衛と同じような存在感を放つ人物なんだろうとアドバンは思った。
気がつけばその夜、〝武蔵〟として、伯耆国米子藩にいた。
柳生宗章は従者の森地五郎八と共に村詮から客将として招かれていた。
主馬助は宗章を客将であることを理由に飯山城から辞去するよう勧めた。
柳生新陰流の看板を掲げることが出来きます
こんなところで命を落とさせるようなことがあっては、
父上に申し訳が立ちません」
が、しかし
愛弟子の息子を見捨ててゆくことは
宗章には出来なかった。
慶長8年11月15日
夜を徹して篝火が焚かれていた。
既に早朝であるはずなのに、あたりはまだ薄暗かった。
焚火のそばで暖を取りながら横になっていた宗章のほほに吹雪が当たる。
「そろそろのようです」
従者の森地五郎八が焚火の灯りに照らされ、どこからともなく現れ宗章に呟いた。
「そうか」
宗章は武者草鞋の紐を固く結び直し、
天空を仰いだ。
吹雪は一層激しく宗章のほほを打つ。
勢いよく陣から飛び出し
颯爽と駆け出した。
「何人の死者がでるだろう・・・」
五郎八は相手方の死者数が莫大なものに上がるであろうと思わず身震いした。
大手門玄関口から中村方が、
搦手の裏門台所口からは堀尾方が
挟み撃ちする形で攻防戦が繰り広げられた。
宗章が大手門を背にして十文字槍を小脇に抱え迎え撃つ。
「いざ、参られれい!」
槍術にも長けていた宗章の勇姿に、
突撃してきた矢野の軍勢の足がピタリと止まった。
「先ずそれがしがお相手いていたそう!」
二合、三合、激しく突き合ったかと見ると、
矢野助之進は利き腕から血を流していた。
「矢野殿、その腕ではもう槍はふれまい、
せっしゃが宗章殿のお相手を致そう」
遠山も中村藩家臣の一人、
それ相当の武芸の心得はある。
小姓、今井次郎と渡川三九郎が
二人がかりで一斉に宗章に斬り込んだ。
余裕で瞬時に二人をけ散らした。
「ごめん!」
といって吉田左太夫が進み出た。
中村家の家臣の中でも槍術では名の知れた勇士である。
敵も味方もその場の緊張感に吸収され
息をするのも忘れる程にただただ見入っていた。
「えぇーい!」という宗章の威勢のいい掛け声と共に吉田の槍が宙に舞った。
すかさず腰の太刀を抜いて
宗章に斬りかかった。
宗章が槍を下から救い上げると
吉田は跪いて、
見ると太股を鋭くえぐられていた。
従者の森地五郎八が
宗章を援護せんと飛び込んだ。
と、その時
「助太刀申す!」
と威勢よく武蔵が飛び込んで来た!
「誰だ!お前!」
とっさに五郎八が叫ぶ。
宗章殿には
只ならぬお世話になっておる者だ!」
「お前なんぞ、知らんぞ!」と、
言い返されようがお構いなしに、
向かって来る敵をばったばったと斬り倒す武蔵。
一人でも加勢が増えれば助かる!」
戦いの中で圧倒的な強さを発揮する武蔵。
その勇姿に、宗章の剣豪としての血潮が湧いた。
ただ無心で剣を振り、
槍をついては体から熱気がほとばしり無双乱舞した。
武蔵の暴れっぷりを見て、
「お相手つかまつる!」
と、太刀を抜きはらい武蔵の前に立ちふさがった。
(三九郎殿か・・・)
隣で応戦していた宗章が武蔵に言葉を投げかけた。
「その男、気を付けなされい!」
宗章から言われるまでもなく、
既に武蔵は感じていた。
(こいつ只者ではない・・・)
三九郎は、織田信長の重臣・滝川一益の孫にあたる。
歌舞伎者で有名なあの前田慶次もこの滝川一族の出身である。
一間をへだててピタリと止まった。(一間=1.8メートル)
相手の初動を利用して攻撃をしてくる柳生の剣を熟知していた武蔵は、
安易に剣を打ち込まず、その瞬間をジッと計らっていた。
その剣を受けて止めた武蔵は思った。
(剣を止めてしまえばこっちのもの)
そう、柳生新陰は、流れる剣さばきの中で映える剣。
三九郎の剣を力でねじ伏せた武蔵が次の瞬間、攻撃に転じた。
転倒する三九郎に武蔵は、留めの太刀を振るわなかった。
(殺してしまうには惜しい・・・)
それは闘いにおける美学。
男(武士)の美学であった。
「成長したな、武蔵」
宗章の顔が真兵衛の顔とかぶって武蔵の眼には映った。
今、武蔵に〝見えている〟のは宗章の姿だが、
武蔵の心に〝観えている〟のは真兵衛の姿だった。
「宗章殿!」
力尽きて仰向けに倒れ、
天を仰ぐ宗章に、
武蔵が駆け寄る。
「真兵衛さん! 真兵衛さん!」
気がついたらアドバンは、
救急車の中で救命処置を受ける真兵衛の名を叫んでいた。
「アドバン、お前のおかげでわしは命拾いした。ありがとう」
柳生の里に来る以前の武蔵は、
己の名を力を強さを存在をただ誇示したい、
俺を見ろ、といわんばかりに剣を振り回していた。
「そんなことのために剣はあるのかね?
おぬしの剣は、そんな小さなものなのかね?
我を捨てよ
無心になれ」
と、武蔵を「空」の世界観へと導いた。
「空」とは仏の世界観である。
アドバンは、北九州に出向いた際、足がない不便さを感じた。
そして自身の愛車「マイバッハ」を送るよう部隊に要請していた。
私用の際はアドバン自ら運転もする。
しかし、ここは不慣れな異国の地。
届いた「マイバッハ」の運転をアフロに任せる事にした。
戦闘機乗りであるアフロは、こういった部類の乗り物の運転には目がない。
https://youtu.be/RA1LxoJnx68
ついに俺様が運転する時が来たか
物足りなかっただろう、キングの運転じゃ」
車に一人、話かけているアフロにアドバンがマイバッハのキーを投げ渡した。
トヨタ・ランド・クルーザー・70。
古い旧車デザインの四駆だ。
降りてきたのは、雄一郎。
「よう、アフロ久ぶりだな、元気でやってるか?」
「雄一郎さん、また老けたんじゃね?」
「うるせい、色々と苦労が多いんだよ」
今日はアドバンのマイバッハをアフロが運転し、
雄一郎のランクルと二台で九州が誇る日本の名城、熊本城までドライブを組んでいた。
「親父、危なかったんだってな」
「バイパス手術したから、もう大丈夫
今は、病院で安静にしてるよ」
「そうか、良かった」
久しぶりの兄弟の再開に、こちらも色々と話が弾む。
日本の城を初めて訪れたアドバンは、感慨無量だった。
どこかしら懐かしさを感じる不思議な感覚。
宮本武蔵は他界する最後の5年をここ熊本の地で過ごしている。
薄暗く、冷たい空気が張り詰める霊巌洞に入ったアドバンの眼には、
そこで禅を組み深い瞑想に入る年老いた宮本武蔵の姿が観えた。
地の巻、水の巻、火の巻、風の巻、空の巻と
仏法で説く「地水火風空」の五智にちなんで書かれた
武蔵直伝の兵法の奥義書である。
「宮本武蔵の五輪の書の五輪は、
地水火風空じゃが、
これは仏法の中で説かれる
五つの智慧を意味しとってな」
和尚はそういって、日蓮の『阿仏房御書』の一説を読んで聞かせた。
また、『三世諸仏総勘文教相廃立』の一説も紹介した。
「五行とは地水火風空なり五大種とも五薀とも五戒とも五常とも五方とも五智とも五時とも云う。只一物、経経の異説なり。内典、外典、名目の異名なり。今経に之を開して一切衆生の心中の五仏性・五智の如来の種子と説けり。是則ち妙法蓮華経の五字なり」
「妙法蓮華経」の五字であり、
その題目を唱える修行者の姿そのものであると日蓮は言っている。
具体的には、「妙法蓮華経」の五字は、
五仏・五智の如来の種子であると。
インド仏教における唯識学で説かれる内容で、
人間の認識作用を「九識論」として次のような内容で説いている。
これは人間の五感である眼、耳、鼻、舌、身をそれぞれ眼識、耳識、鼻識、舌識、身識といった呼び名で、第一識から第五識とする感覚作用として働く認識器官のことで、これを成所作智(じょうそさち)と言う。
成所作智は、認識器官を正しく統御し、それらによって得られる情報をもとに、現実生活を覚りに向かうべく成就させてゆく智慧である。
その認識器官に基づいて行動や判断をこなう意識で妙観察智(みょうかんざっち)と言う。
妙観察智は、万物がもつ各々の個性、特徴を見極め、その個性を活かす智慧である。
第六識の意識下にある無意識で、「自我意識」を形成する。我見、我愛、我慢、我痴、などの元になる自己中心的な差別の心。その我執(自我への執着)が除かれた聖位においては、自他の差別のない平等性智へと転じる。
平等性智は、無我の境地に入って全てを平等に見る智慧である。
全く意識されない潜在意識で、輪廻転生の因となる「業」が蓄えられていく場所。これを大円鏡智(だいえんきょうち)と言う。
この阿羅耶識の業(宿業)が因となって前五識に果が生じる。その果が仏果に至ると阿羅耶識が転じて大円鏡智を得る。
大きな鏡が万物を明らかに映し出すように、一切の存在の真実の姿を映し出して明察し、満徳円満にして欠けることがないので大円鏡智と言う。
更にその奧に本来的に清浄無垢な自性清浄心と呼ばれる第九識が潜み、これを法界体性智(ほうかいたいしょうち)と密教では説く。
法界体性智は、永遠普遍、自性清浄なる大日法身の絶対智であり、他の四智を統合する智慧となる。
教化の対象をよく知り的確な説法を行う智慧
自他が根本的に区別のない同体の存在であることを知る智慧
万物の真理の姿を示す智慧
これら四智を統合する智慧
「地水火風空」は、この五つの智慧を意味する。
人間が認識する世界は「大地」であり「河や海」、
「炎」や「風」といった自然界の姿(色相)であり、
それが全てかと言えばそうではない。
武士は兵法をしっかりと身につけ、その他の武芸もよく練習し、武士が進む道は少しも暗くなく、心が迷うこともなく、常に怠らず、心と意の二つを磨いて、「観」と「見」の二つの眼をとぎすまして、少しも曇りのない迷いの雲が晴れたところこそ、正しい空だと考えるべきです。
正しいことを知らない間は、仏法に頼ることなく、世間一般に頼ることもなく、個人個人では正しい道と思って、よいことだと思っても、正しい道から世の中の大きな物差しに照らし合わせると、自身の気持ちのひいき、自身の目のひづみのために、正しい道にそむいているものです。
この道理をわきまえてまっすぐな所を根本とし、正しい心を道として兵法を幅広く鍛錬し、正しく明らかで大きな所をつかんで、空を道とし、道を空とみます。
そんな事を知る余地もないアドバンは、
遠く離れた故郷を想いスマホで
アメリカ第2の国歌ともいわれる
ポール・サイモンの名曲「アメリカの歌」を聞いていた。
自由の女神に象徴されるこの曲の〝主語〟は アメリカだ。
https://youtu.be/KT4Y4GsxdcU
たくさん迷いもした
見捨てられ、小突きまわされている
と感じることもよくあった
それでも、平気さ、平気なんだ
疲れが骨まで沁みても
まばゆい結構な暮らしなんか期待はしない
家から遠く離れたこの場所で
信頼出来る友もいない
夢はいつも打ち砕かれ
国民は祈りにすがるしかない
それでも、平気なんだ、平気さ
それなりに長くうまく生きてきたじゃないか
僕たちは、どこでいったい間違えたんだろう
つい考えてしまう
どこでいったい間違えたんだろう
魂がとつぜん空へ舞い上がり
自分を見下ろし微笑みかける
平気だよと
その高い空からはっきり目に映る
自由の女神が
遠い海へと去っていく
飛んでいる夢のなかで
この地にやってくる
月に向かって漕ぎだした船で
歴史のもっとも危うい季節にやってくる
アメリカのうたを歌いながら
平気なんだ、平気なんだ
明日にはまたいつもの仕事がある
だから今はすこしだけ休もう
そう、すこしだけ休むんだ
音楽を聴けばわかるとおり、
この曲は過誤と諦観と平安、旅と故郷を主題にしている。
その主人公は「アメリカ」という国家である。
バッハの『マタイ受難曲』の有名なコラール旋律が転用されていることがあげられる。
日本の武士は、古くは鎌倉時代から歌を詠んできた。
歌には、「もののあわれを知る」といった四季の情趣を楽しむ風情があ。
短歌や俳句好きな人なら知らない人はいないと思う。
「もののあはれ」の論を展開し、
そのことが今日の教科書に載って、
「もののあはれ」という言葉が現代語のなかに継承されている。
宣長が本来論じている「もののあはれ」とは、
そうした四季の情趣に留まらない、
日常生活のやりくりにまで及ぶもので、
「人の心の動くさま、感じるさま」を言う言葉であったものが、
いつのまにかこれに「哀」の字を充てて
特に悲哀の意に使われるようになったと彼は言う。
さらに宣長は言う、
感ずること深からず、ただかなしき事、
うきこと、恋しきことなど、
すべて心に思ふにかなはぬすぢには、
感ずること、こよなく深きわざなるが故」
心は心を見るように促され、
生活感情の流れに身をまかせ、
ある時は浅く、ある時は深く、
おのずから意識される。
そういう生活感情の本性への見通しなのである。
感情論よりむしろ認識論的な色合いを強く帯びており、
彼の課題は、「物のあはれとは何か」ではなく、
「物のあはれを知るとは何か」にある。
宣長による源氏物語の注釈書である『紫文要領』には、
次のような記述もある。
身にふるるにつけて、其よろづの事を、
心に味わいて、そのよろづの事の心を、
わが心にわきまへ知る、これ事の心をしる也、
物の心を知る也、物の哀をしる也、
その中にも、尚詳しくわけて言はば、
わきまへ知る所は、物の心、
事の心を知ると言うもの也、
わきまへ知しりて、其しなにしたがひて、
感ずる所が、物のあはれ也。」
物や現象を指しての言葉で、
それらの「心」、即ち本質が、
「物のあわれなる」事を知る事であると言っている。
即ち、
「知る」と「感ずる」とが同じであるという、
禅的な直観的な認識を論じているのである。
「もののあはれを知る」の〝知る〟は、
〝感じる〟ことであり〝知る〟ことで、
〝知る〟をさらに言うなら、
何かを見聞きしてそれと認める「認識作用」でもある。
アドバンが今聞いている「アメリカの歌」の歌詞の中にも
その「もののあはれ」を感じる。
テロや、絶えず起こる他国との紛争、
そういったアメリカの歪んだ歴史を振り返って、
なにをどこで間違えてしまったのか、
考えることの意義を静かに語りかけてくる。
「どこで間違えてしまったのか・・・」
「でも、心配ない大丈夫」
僕たちは必ず正しい答えを導き出すんだという決意。
それは、道を極めようとする者だからこそ言える言葉。
真理はどこにあるのか。
何が真理なのか。
僕たちは必ず答えをだす。
今一度
もののあわれを観じ取りならが
聞いてみてください。
https://youtu.be/RKvMuvMgZas
歌詞に込められた
深い深い意味を観じた時、
アドバンの眼からは
一粒の涙がこころをつたって流れ出た。
Wild-Bison 第2部(前編) ~海を渡った武士道~ 完
Wild-Bison 第2部(後編) ~Gun spirit of America~
へと続く
現代に法難があるなら、強制入院くらいは体験すべきだな
ID:AXfyYORh(7/
>>62
何もしてないのにな 近所には共産党の幹部の家もある
たぶんここらへんは 張り込むには公安には都合が良いんだろうな
ID:JG/AUJL6(22/29
>>38
公安にマークされてることを話したら
妄想だと判定された 事実なのにな
1
ID:JG/AUJL6(6/29
パトカー何台きたと思う?
警官何人来たと思う?少なくとも10人には取り囲まれたぞ…
竜ノ口の法難さながら、だな
1
ID:I9Gur5cH(3/20
その通りで、家の前で、その夜に木刀を三回くらい
野球の真似で、素振りしただけで
公安アパートから変な人が出てきて
“おいおいおい!”“動画回せ動画!”“警察呼べ警察!”って
オオゴトになって、パトカー🚓が3台くらい来た…
家に盾を持った機動隊が、突入してきた
こんなことあるか?
木刀を3〜4回、野球の素振りしただけ、だぞ?
ID:I9Gur5cH(7/
>>444
週一で主治医の回診があるでしょ
そんなこと話してる?
1
ID:UYgMkYCM(24/26)
0449 晃(あき) ◆HOKKEvxAGE 2024/05/26(日) 20:29:54.11
>>448
いや、話しても無駄だと思ったからしてないな
余計に入院が長引くだけ
ID:I9Gur5cH(34/38
蝗GUY
https://m.youtube.com/watch?v=xgr_f_R4j5Y&pp=ygUG6J2XR1VZ